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ライフスタイルビジネスで文化を共有 止まらないで“尖がった店”を作っていく | バッカスの横顔 インタビュー前編

際コーポレーション

代表取締役社長 中島武

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  • 2017年1月12日

5軒のホテル・旅館をオーベルジュスタイルで経営

外食企業のなかで際コーポレーションほど革新を連続させ、しばらく間を置くと、進化の現況が分らなくなる例はないだろう。一服感のないダイナミックな企業である。約1年半前に社長の中島武氏を取材したとき、外食ビジネスからライフスタイルビジネスへ転換する方針を説明された。すでに飲食店に加え家具・雑貨・衣料品の物販、ホテル・旅館経営など約360店舗を経営し、ウェディングのプロデュースも手がけていたが、とくにホテル・旅館経営は、インパクトをもって推進されている。

ミシュランガイド京都版に5年連続で掲載された「柚子屋旅館」(京都市)、全国初の公設民営型リゾートホテル「マルゲリータ」(長崎県南松浦郡)、金沢の市街地を一望する「緑草音」(金沢市)につづいて、リノベーションによる経営が2軒進んでいる。魯山人ゆかりの料亭旅館で知られる1890年創業の「山乃尾」(金沢市)、築180年の伝説の古民家を移築した「行人舎」(岐阜県高山市)である。

どれもが、レストランの併設など食にウエイトを置くオーベルジュスタイルで、それぞれ歴史や地域を投影させ、その施設が存立する意味を明確にしている。かつて中島氏は「全国どこでも旅館のリノベーションでは、京都風の雅を取り入れる風潮があるが、たとえば北海道の旅館に旅行客は雅を求めるだろうか?」と問いかけていたが、その風潮へのひとつの解答かもしれない。

しかし、宿泊業を手がける真意は別にある。背景となったのは外食市場の変質で、チェーン店と低価格業態がいよいよ行き詰まりつつあり、何かしら際立つ要素がないと顧客を誘引できなくなった。中島氏はこう打ち明ける。

「旅館ビジネスは決して費用対効果が高くはないが、それぞれの旅館が築いた文化を私たちが共有し、アッパーな飲食店を作っていかないと厳しくなる。付加価値のある店を作らなければならないと思いながら取り組んでいる。これまで普通にチェーンストアのようになろうかな、そのほうが大人のビジネスなのかな、と思った時代もあった。しかし、考えてみれば非上場のオーナー企業の良さは、尖がった仕事が平気でできること。私自身はもう丸くなっているが(笑)、もう一度、尖がらなければならないのかなという気持ちだ」。

重点課題は食材の強化。豚と牛の仕入ルートを確立

ライフスタイルビジネスへの転換でグループ年間売上高は300億円を超えたが、転換の真意は事業の拡大よりも、むしろ深化に見て取れる。本業の外食ビジネスで重点的に深化させるのは食材である。

外食ビジネスの構成要素は、食材、不動産、金融、企画、店舗デザイン、調理、サービス、CRMなどで、同社は企画と調理に注力してきたが、バランスを取るために食材に重点を置いていく方針だ。「これまでは企画から食材を考えたが、これからは食材から企画を立てる」(中島氏)という。

たとえば、茨城県産のブランド豚「瑞穂のいも豚」を屠場で買い付け始めた。輸入牛の買い付けでは大手の購買力に対抗できなくとも、屠場では入札なので同じ土俵で対抗できる。現在の買い付け数は月約30頭。同社の場合、とんかつ店で使用しない部位でも中華料理店で使用できる利点があるため、買い付け数をさらに増やし、とんかつ店を展開する計画だ。

牛肉では、すでに京都と芝浦の屠場で松阪牛、宮崎牛、京都肉を買い付けているが、新たなルートも開拓した。有機畜産の第一人者で知られる本田廣一氏が運営する興農ファーム(北海道標津郡)と提携し、アンガス牛の一頭買いを始める。豚肉と同様に多業態の利点を活かして、臓物ならビストロのメニューに煮込み料理を加えて訴求力を高めるというように、企画に結びつけている。

インタビュアー:経済ジャーナリスト 小野 貴史, KSG ヴァイスプレジデント 中塚 進悟

ライター:小野 貴史

引用元:飲食店経営者のためのニュースサイト『FoodTimes』 経営者インタビュー から引用