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バッカスの横顔

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「愛」に貫かれた社員第一主義 全社員の誕生日に社長が手書きの手紙 / バッカスの横顔 インタビュー後編

株式会社ジェイグループホールディングス 代表取締役社長 新田治郎

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外食業界で異例の正社員比率50%強
年間離職率は12%にとどまる

そして第三のポイントである社員の人心掌握こそ、もっとも大きな競争力の源泉かもしれない。新田氏は「何を第一主義に掲げるかといえば、当社は社員です。社員第一主義です。全社員でのハワイ旅行は、毎年欠かさず実施しています。店を閉めてでも実施する考えです。社員が腹を抱えて思いっきり楽しめる会社をつくってきました。IPOをめざすかどうかも幹部の多数決で決めました」と打ち明ける。人事の特徴に挙げられるのは正社員比率が高いことで、50%超に達する。

やや古いデータだが、厚生労働省が2012年に発表した「非正規雇用の現状」によると、飲食業・宿泊業の正社員比率は30・8%だった。同社の正社員比率は業界平均を約20%上回り、各店舗に正社員が平均4・5人配置されている。店舗の運営力が強化される一方で、FL比率を7%も跳ね上げているが、新田氏の経営観は懸念材料と見なしていない。

「FL比率、客単価、坪単価、出店数など単位で表示できる経営状態には、あまり関心がありません。効率だけを重視した常識的な業態・店舗開発をつづけていると、グループ全体が業界平均に近づいていくという危機感をもっています」。

さらに定着率にも着目したい。設立から5年間で正社員は1人も退職せず、現在でも正社員の年間離職率は、毎年12%にとどまっている。外食企業では異例である。社員第一主義が反映された数字だが、根底にあるのは「愛です」と新田氏は断言する。

きわめてストレートな表現だが、実践内容を聞くと、確かに「愛」を具現化している。たとえば新田氏は連結で600人を超える社員全員の誕生日に、手書きの手紙を送っている。面識のない社員については、上長に電話をかけ、当社員の過去1年の働きぶりなどをヒヤリングし、「こういう長所があるのだから、もっと伸ばしてほしい」「こういう点に期待している」などを書いているのだ。「社員数が増えたので手紙はほぼ毎日書いていますし、1日何通も書くこともあります」(新田氏)という。

独立支援も愛の実践だ。のれん分けやフランチャイズとは違い、同社が物件を用意し、そこで本人が考案した業態で開業させている。それも自社ビルを建てて入居してもらっている。すでに8棟を建て、10数人が独立した。独立支援の対象は原則として社歴10年以上の店長経験者。新田氏は「独立する社員は、会社にとっては手放したくない優秀な人材です。ただ、私の年齢(50歳)から見れば、社員の成長は子供の成長を見るようで嬉しいものです」と胸中を述べる。

会社経営の要諦は連帯感、達成感、公平感

社員への愛は、こんな願望にも通じているようだ。

「私は日本一の大将になることをめざしています。たとえば地方に出張して入った店で、経営者に『昔、ジェイグループに勤めていました』と声をかけられたら、嬉しいじゃないですか」

しかし愛を受け入れるには、社員にも相応に資質が求められるが、求めている資質はシンプルである。他人の成功や成長を、自分のこととして喜べる心をもっているかどうか。この一点を社員の絶対条件に求めている。嫉妬心がうごめくようなタイプは論外である。

新田氏によると、会社経営の要諦は「連帯感」「達成感」「公平感」の3つで、公平感は会社が用意するが、連帯感と達成感は社員が自主的に培うものだという。この見解を象徴するのが、飲食事業の運営会社ジェイプロジェクトの硬式野球部である。

「野球部のメンバーには、チームプレーを通して連帯感と達成感が身についています。少年野球から始めて中学を経て高校時代は甲子園をめざし、出場できなくても連帯感と達成感が身につく経験をして、その後、大学で日本一をめざす過程で、やはり同じ経験を重ねています」。

野球部メンバーは約30名。全員が新卒入社で、昼に練習をして、夜は居酒屋で業務に就いている。新田氏は「トヨタ自動車やJR東海などに勝ちたい」と熱意を注ぎ、2016年12月に、監督に元オリックス監督の大石大二郎氏が就任した。野球部が好成績を積んでブランディングされれば、同社の経営にも大いに寄与するだろう。

インタビュアー:経済ジャーナリスト 小野 貴史, KSG ヴァイスプレジデント 中塚 進悟

ライター:小野 貴史

前編はこちら >> 業態の幅と深さが業界平均を常に上回る既存店売上高を支える

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