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愚痴は禁止、社員に求める質問責任フレームワークで考える研修を実施 / 熱中の肖像インタビュー後編サイボウズ株式会社
代表取締役社長 青野慶久

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外出中の効率向上へ
コーヒー代を補助

外出時のコーヒー代補助も社員からの要望で制度化された。外出中にコーヒーショップに入って仕事をした場合、コーヒー代を経費として認めてほしいという要望が上がったのだ。外出時にコーヒーショップで仕事をすることで生産性が上がるかどうか。この基準から、青野氏は「絶対に通らない」と思っていたが、認可された。ときには勇み足もあるようで、「最近コーヒーショップに入った社員がパン代まで請求してきて『何だ、これは!?』と問題になった」と青野氏は笑い飛ばす。

人事制度を検討する会議には全社員が参加でき、本社以外の社員はTV会議で参加している。この会議には「質問責任」というルールが設けられ、「問題があると思ったら会議で提起せよ。あとで愚痴をこぼすことはダメ」(青野氏)。議論の議事録は全社員に公開し、却下した提案は理由も明らかにされる。社員に質問責任を求める会社側は、説明責任を果たしているのだ。

こうして公明正大に徹しているのだが、それだけでは会社側の想定から超える多様な意見が出るとは限らない。一般に目的が示されないと思考は触発されないものだが、同社が設定している目的はグループウェア市場で世界トップになること。この目的に合致するかどうかで人事制度を設計している。

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経営者の役割は社員を引っ張ることより意見を引き出しコーディネートすること

社員も目的を念頭に置くからこそ、奔放にも思える意見が浮かび、会議で口にできるのだろう。青野氏は「目的に沿って制度を運用するので悪用されにくい。外出時のコーヒー代補助も休憩目的で使用する社員がいたら即刻廃止すると宣言している」と付け加える。

人事制度が趣旨通りに運用されるかどうか、その如何は企業文化次第だが、同社の文化は「自立と議論」と表現されている。要は主張して、説得するということで、この方法を新入社員から研修で習得させている。あるテーマについて理想と現実、事実と解釈に分解し、さらに原因と課題を設定して、フレームワークで主張できるように教え込んでいるのだ。「コンサルタントを育成しているようなものだ」と青野氏は語るが、同社を“考える組織”へと進化させているのではないか。

この方法は青野氏の時代認識もベースになっているようだ。

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「社会が複雑化しているので、ひとりの経営者がすべてを把握して、正しい判断を下すことが難しくなっている。これからの時代は、経営者の役割は社員を引っ張ることよりも、社員の意見を引き出してコーディネートすることだと思う」。

それだけに鮮明に旗を掲げることが、ますます経営者には求められてくる。その役割を青野氏は示唆している。

インタビュアー

株式会社KSG
眞藤 健一

経済ジャーナリスト
小野 貴史