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熱中の肖像

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経営理念を言語化することの大切さ ー初志貫徹で走り続ける経営者 / 熱中の肖像 インタビュー後編

株式会社リブセンス 代表取締役社長 村上 太一

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後輩起業家の育成にも心血を注ぐ

実は、採用時課金のシステムへ移行する過程での苦しかった時期 に、村上社長は心労から白髪になり、一時は事業の売却すら頭のなかをよぎったことがあるそうだ。しかし、そこで思いとどまれたのは、なぜ自分が会社を興したのか自問自答するなかで、経営者として一皮むけることができたからなのだという。

「世の中に大きなインパクト、よりよい影響を与えていきたいと考えて自分は起業した。ここで諦めたとしても、違う形でまた起業を選択するだろう。だったら、もう少し踏ん張るべきだと決意しました。さらに、リブセンスの存在意義を考え続けるなかで、多くの人を幸せにすることで自分たちが感じる幸せを最大化する、『幸せから生まれる幸せ』という経営理念を初めて言語化できました。それからというもの、経営者である私にブレが生じることは一切なくなったのです」

起業というと目先のビジネスモデルの開発ばかりに目が向いてしまいがちだが、この村上社長の話はそれ以上に大切なものがあることを教えてくれる。そして、そうした村上社長の思いは、「あたりまえを、発明しよう」というコーポレートビジョンや、一風変わったロゴづくりにも波及していったそうだ。

かつてアルバイトを探す際には、有料の求人誌を購入するのがあたりまえだったが、やがてフリーの求人誌があたりまえの時代へ移行した。それがいまではジョブセンスによって、お祝い金をもらえるのがあたりまえの時代になりつつある。それというのも、既存の求人システムに疑問の目を向けて、お祝い金という新しいモデルを発明できたからなのだ。

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「ロゴには『はてな』と『しずく』が隠されています。『はてな』はあたりまえと思われていることを疑う視点が大切であることを示し、『しずく』はそうやって考 えたことを、故事成句の『雨垂れ、石を穿つ』のように、毎日小さな努力を積み重ねていくことで突き詰めていく姿勢を表しています。また、ロゴの上下のしずくを合わせて逆さにすると『?』マークになり、いつも常識に疑問を持とうということを示しているわけです」

リブセンスでは、新たな事業が次々と生まれている。08年には正社員転職サイト「ジョブセンスリンク」、10年には不動産賃貸サイト「door賃貸」や転職クチコミサイト「転職会議」。さらに、今年8月には医療情報サイト「治療ノート(β版)」をスタートさせ、これまで未整理で玉石混交だったネット上の医療情報を、医師のチェックを受けながら病気ごとにまとめ直し、適切な治療方法が選択できるようにサポートしている。また、中古不動産売買サービス「IESHIL(イエシル)(β 版)」や新卒就活サポートサイト「就活会議(β版)」も立ち上がっている。

そして、社員の「あたりまえを、発明しよう」とする基礎力を高める場として取り組んでいるのが「村上塾」だ。社内公募で選抜した12人の社員に、「評価額1億㌦以上の『ユニコーン企業』が150社ほどあるが、近年どのような会社が増えていて、その背景にあるトレンドとは何かを答えよ」といった宿題を課し、各自の発表内容について村上社長と塾生全員でディスカッションしていく。1カ月に1回、19時からエンドレスで行われる。それを6回続けていくなかで、物事を見る目を鍛え、新しい発明へと導いていく道筋も体得してもらうのだという。

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村上社長の人材育成は社内だけにとどまらない。13年4月から早大OBの若手起業家と一緒に寄付した「起業家養成講座」 がスタート。村上社長が自ら起業体験談を講演することもあり、毎年200名近い受講生が集まる。週末など事業の合間をぬって、起業を志す大学生や高校生向けにも講演している。また、同年12月にはスタートアップして間もない起業家の応援プログラム「STARTUP50」を、クックパッドの穐田誉輝社長らと立ち上げた。「私自身が、起業当時に穐田社長から50分のアドバイスをいただき、すごく影響を受けました。プログラムでは、選抜された起業家の方々に各々50分、彼らの悩み事への助言をしたり、事業の将来性についてディスカッションしたりしています」と村上社長は楽しそうに話す。

目下のリブセンスの業績を見ると、かなり厳しい局面にさしかかっていることがわかる。人手不足で、企業がお金をかけてでもアルバイトを採用したい時代に、採用時課金のシステムはマッチしていないのではないかという見方もある。しかし、村上社長は「モデル自体は陳腐化しておらず、むしろ進化させる好機だと考えています」という。実際に、新しいオプション開発に取り組み、徐々に成果が出始めている。また、今年3月には、初のM&Aとして海外ファッションECサイトを手掛ける株式会社wajaをグループ化。連結業績に寄与し始めている。

これからも既存、新規分野における「あたりまえを、発明しよう」に取り組むことで、「幸せから生まれる幸せ」を最大化させながら、リブセンスは社会的な存在価値をさらに高めていくことだろう。

前編はこちら >> 「幸せから生まれる幸せ」── 苦しみのなかから生まれた理念の大切さ

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