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通販の台頭で物流は世界の成長産業になる
Strategic View~成功の秘訣に迫る~ Vol.2

SBSホールディング株式会社 代表取締役社長 鎌田 正彦

株式会社経営戦略合同事務所 代表取締役社長 眞藤 健一

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M&Aアドバイザリー事業などを展開する、経営戦略合同事務所の眞藤健一社長が先進的な優良企業トップを訪ね、成長の秘訣に迫る。第2回は、ジャスダック上場を機に積極的なM&Aで急成長し、25周年となる2012年12月に東証2部上場を果たした総合物流グループ、SBSホールディングスの鎌田正彦社長です。

眞藤 2004年5月、御社による雪印乳業物流子会社・雪印物流の買収は、売上高が約2倍の会社を傘下に収めるM&A劇として業界を驚愕させました。これを皮切りに、次々と大企業の物流子会社を買収して規模を拡大し、競争力をつけていきましたが、これまでのM&Aの案件数はどれくらいになりますか。

鎌田氏(以下敬称略) 大型案件でいうと、雪印物流のほか、東急グループの物流子会社・東急ロジスティック、日本貨物急送、ティーエルトランスポート、食品物流の全通、日本ビクターの物流子会社・ビクターロジスティクスと日本レコードセンターなど、10社くらいです。

眞藤 M&Aで急成長した背景には、鎌田社長の「社員を大切にする」という信条があると聞いています。

鎌田 成功させるには、M&Aをされて不安感を抱えている人たちに、社員としての意識や誇りをもってもらい、心を1つにすることが大切です。それにはリストラをしないのはもちろん、これまで以上の昇給も必要です。また、会社が成長する姿を見せて初めて『これまでよりも、SBSのほうがよかった』と、みんなが思うようになります。そうなるには時間がかかりますから、2年から5年くらいのスパンで考えています。

眞藤 GEにはM&Aに際して100日をめどに組織統合を完了する「100日プラン」と呼ばれるプログラムがありますが、日本ではどうなのでしょう。

鎌田 一気に融合させるのは難しいでしょうね。「買収したから、今日から言うことを聞け」と言っても通用しない。人間は心の生き物ですから、腹の底から納得しないと動きません。外資系企業のように「従わないならクビ」という理論では、優秀な人材ほど辞めていくでしょう。

眞藤 13年6月にSBSグループのブランドを統一し、新ロゴマークとスローガンを導入したのも、社員の心を1つにするのが目的ですか。

鎌田 まさにそのとおりです。M&Aを積極的に行なってきたので、1社ごとに歴史や文化が異なります。ですから、新スローガン「For Your Dreams」のもと、全グループ社員が同じ夢や目標に向かって挑戦する体制を整えました。

眞藤 5年のスパンで考えるとなると、M&Aを検討するときの数字を見るポイントが通常とは異なるのでは。

鎌田 物流子会社の買収では、基本的にのれん代は払っていません。なぜのれん代ナシで買えたのかというと、社員を大切にすることを買収先が高く評価してくれたからです。大企業というのは社員の行く末をきちんと考えているもの。もしM&A後すぐにリストラを行なっていたら、次のM&Aはなかったでしょう。

眞藤 そうは言っても、リストラを一切せずに採算が取れるものでしょうか。

鎌田 まず、M&Aした物流会社のコストを削減し、料金が以前の5%オフでも利益が十分出るようにします。それによって、もともと請け負っていた旧グループの仕事をそのまま引き継ぐことができるようになります。と同時に、営業を強化して新規顧客を開拓していくのです。

眞藤 5%オフがのれん代の代わりになっているのかもしれませんね。どのようにしてコストを削減するんですか。

鎌田 仮に社員40人、パート60人の物流現場があったとすると、当社では社員10人、パート90人で動かす体制を構築します。ポイントはパートの活用です。フルタイムで働ける人、1日4~5時間、午前中だけ、週2~3回働ける人など、その日の仕事量に合わせてパートを組み合わせていく。これだけでもM&A前に比べて3割くらいのコストダウンになります。大企業の物流子会社は“親方日の丸”的な仕事をしてきたので、自分たちで改革して利益を出すという発想がなかったんですね。だから、大企業の物流は高コストになっているのです。

眞藤 パートにウエイトを置けば、社員に余剰人員が出ますが、その人たちの行き場は?

鎌田 新規開拓に成功すると、その顧客の倉庫を稼働させることになります。仮に100人の現場とすると、10人くらいが社員になりますから、そこに移ってもらうんです。ですから、時間がかかるんですね。

眞藤 新規開拓の営業体制はゼロから作り上げたそうですね。

鎌田 はい。たとえば、東急電鉄の物流子会社だった東急ロジスティック(現SBSロジコム)では、新規営業と呼べる社員はほとんどいない状態でした。そこで人材を集め、営業のイロハから提案書の作り方まで教育しました。さらに、インターネットやコールセンター、ダイレクトメールなどさまざまな営業チャネルを設けて営業体制を充実させてきました。最近ようやく、コンペで大手競合相手から大型商談を勝ち取るなど営業力がついてきたところです。

眞藤 具体的な成果を1つ教えてください。

鎌田 日本ビクターの物流子会社・ビクターロジスティックスという会社の買収時は利益がゼロでしたが、先ほどお話したようなコスト改革や新規開拓によっておよそ2億円の利益が出せる会社になっています。

眞藤 鎌田社長のM&A戦略は非常にわかりやすくて、なるほどと納得できるんですが、かといって誰でも同じ戦略で成功できるわけではありません。成功した一番の要因は何ですか。

鎌田 長年経験し、“絶対に負けない”という自信のある分野でなければ、M&Aは成功しません。じつは、私もこれまで1度だけ失敗したことがあるんです。05年に買収した株式会社ダックのケースです。最後はアート引越センターのアートコーポレーションに売却し、10億円の損失を出しました。物流と同じ運送業なら再建できると思ったんですが、私が長年培ってきた物流のノウハウはBtoB、個人向け引っ越しサービスのダックはBtoC。企業相手なら飛び込み訪問で仕事を取ることもできますが、個人相手となるといろいろなPRのしくみが必要です。ネットの宣伝に力を入れても価格競争に巻き込まれて、なかなか黒字にならない。つまり、失敗の原因は私のノウハウの範疇外だったということです。

眞藤 失敗から大きな学びを得たというわけですね。鎌田社長はM&Aのデューデリジェンスの際、バランスシート上の資産をどうやって入れ替えるか、損益計算上の外注費や家賃、人件費など高い支出をどうやったら抑えることができるかを常に考えていると聞きました。それは物流に通じているからこそできることなのでしょうね。

鎌田 以前のケースで、あるM&A候補企業のバランスシートを見たら、倉庫代が10億円と書いてありました。これだ!と思って倉庫を見に行くと、3ヵ所で2万坪借りていて、その家賃が10億円でした。そこで、M&Aの結論を出した日に土地を手当てし、1年後には1万5000坪の倉庫を建て、移転集約を実行しました。1ヵ所に集めれば、事務所やトイレ、休憩室などさまざまなスペースが節約できて、2万坪が1万5000坪で足りるわけです。こういう計算と決断が素早くできるのは、物流を熟知しているおかげです。

当社では倉庫業にも進出し、この約8年間で10万坪の物流施設を開発しました。物流と不動産事業を融合しているのが他社にはない強みと自負しています。

眞藤 話は変わりますが、海外進出の第一弾となったのが、11年10月にM&Aしたインドの国際物流会社でした。海外展開ではどんな狙いがありますか。

鎌田 人口減少によって将来の日本市場は縮小が予想されますから、国内市場だけで成長を続けるのは確実に難しくなります。ですから20年先を見据え、今から世界で戦える準備として海外営業を強化しています。

眞藤 インドでのM&Aは世界一難しいといわれていますが、いかがですか。

鎌田 おっしゃるとおり、世界一難しい国だということを痛感しました(笑)。何が難しいかというと、日本人と同じマネジメントでは通用しないこと。頭の回転が桁違いに早くて議論し始めると止まらない、自分の非を認めたがらないんですね。買収時は赤字でしたが、それでもこの2年間でようやく黒字になってきました。20年後には国際的にも巨大市場になっているはずですから、成功すれば、努力のかいがあります。

眞藤 その後、12年5月にはアジア地域統括会社をシンガポールに設立。その下に香港、タイ、ベトナム、マレーシアに拠点を置く体制を早々と構築しています。将来的には国内・海外の売上比率はどの程度を見込んでいますか。

鎌田 国内6割、海外4割でしょうか。今後は積極的に日系企業の需要を獲得し、アジアでの営業強化を図っていきたいと思います。海外の売上比率が4割程度になったときにはシンガポールに本社を置き、アジアの会社に積極的にM&Aを仕掛けていくという戦略も考えられるでしょう。

眞藤 先ほど国内市場は縮小傾向というお話でしたが、最近のO2O(オンライン・トゥ・オフラン)の購買行動やマーケティング戦略の台頭を見ると、国内でも海外でも物流のビジネスチャンスはまだまだあるのではないですか。

鎌田 たしかに、アマゾンに代表されるように通販業界は著しく伸びていて、倉庫が足りない状況です。というのも、日本の倉庫はまだ40%以上が旧耐震基準の時代に建てられているため、いい倉庫は絶対的に不足しているのです。加えて、効率化の追求によってフロア面積の広い大型倉庫の需要が高まっています。実際、日本で今何が起きているかというと、倉庫の建設ラッシュです。

眞藤 家電量販店では、店頭で商品を選び、通販で購入する消費者が増えているため、多くの会社が売上げが10%以上落ちたといわれています。アマゾンは米国で生鮮食料品の通販を始めましたが、いずれ日本市場にも参入してくるでしょうね。

鎌田 日本の小売業者にとって、アマゾンは脅威ですね。日本の小売業のトップに立つ日もそう遠くないでしょう。いずれにせよ、通販が伸びてきたときに一番重要なのはロジスティックス。ですから、物流は世界の成長産業なのです。

眞藤 SBSグループの日本レコードセンター(NRC)は、ラサール不動産投資顧問が運用するファンドがNRCの専用施設として開発した「厚木物流センター」を今年5月から長期で借りているとか。これは新しいパターンですね。

鎌田 自社で倉庫を持つと、少なくとも数十億円の投資額になります。しかし、上場企業なので、借入金をどんどん増やすわけにはいかない。このファンドのしくみを活用すれば、借入金の負担はありません。そもそも当社の目的は倉庫を保有することではなく、お客様のニーズに応える倉庫を提供し、オペレーションを担うことなのです。

眞藤 まさに金融とロジスティックスのハイブリッド、新しいビジネスの形ですね。現在、御社は売上高が1500億円に迫るグループに成長していますが、最後に今後の数値目標を教えてください。

鎌田 売上高3000億円、営業利益率5%の利益が出る会社が当面の目標です。

眞藤 そうなると、いよいよ業界トップ10入りですね。本日は、M&A成功の秘訣や唯一の失敗例、金融と物流の融合など、数多くの貴重なお話をお伺いすることができました。ありがとうございました。

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