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存在意義「企業再生」最前線
Strategic View~成功の秘訣に迫る~Vol.7

株式会社KSG(旧社名:株式会社経営戦略合同事務所)代表取締役社長 眞藤 健一

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ミドルサイズの企業再生で圧倒的な実績を誇る

「経営者の意思決定をサポート」をモットーに、企業の再生支援やM&Aアドバイザリーなどの戦略コンサルティング事業を展開するKSG。企業再生の分野で多数の実績を誇っており、近年では介護事業のロケアホーム、生活雑貨小売り及びFC運営のシステムジュウヨン、カジュアルウェア小売のジーンズショップオサダなどの案件を手掛けている。

KSGの企業再生には、どんな特色があるのか。眞藤健一社長は次のように語る。
「原則KSGグループの自己資金をもとに、年商20億~60億規模のミドルサイズ・マーケットをターゲットにしていることです。このゾーンには、再生のプレイヤーが非常に少なく競合はほとんどいません。また、経営陣や各セクションのプロフェッショナルをチーム体制で送り込んで、しっかりとハンズオンで取り組んでいる点もKSGの特色です。KSG主導ではなく、もともといらした経営幹部と社員さんを中核に据えKSGが脇を固める、足りないところを補う。そんな格好です。基本的には、従来の体制・方針を変えないという姿勢を貫いています」

なぜ、変えないのか。疑問が浮かぶ。
「『答えは現場にある』と考えているからです。企業再生にあたって、我々がまず最初に行うのは、『何故倒産したのか』を全社員で共有すること。その答えを知っているのは、経営幹部や社員の皆さんです。彼ら、彼女らが言っていることが正しいと思っています」

企業再生案件を獲得するには、当然ながら他社にはないストロングポイントが求められる。KSGでは何を強みとしているのであろうか。
「不動産事業における豊富な実績です。創業以来、不動産事業を行ってきているので店舗の出退店にかかるノウハウ、保有不動産の有効活用に長けています。そのため、現在は介護施設、また小売りなどの店舗系が主体となっています。また、上場企業のOBなどを含め600名の顧問団を構築しており、各分野のプロフェッショナルを召集できる体制にあります。さらには、M&Aアドバイザリー業務を通じて再生先をM&Aによってロールアップできる点もKSGならではの強みといえるでしょう」

 

「敢えて変えない」というスタンスで企業再生に臨む

こうした特色・強みが、それぞれの案件でどう活かされているのか。今回は、システムジュウヨンの再生事例を題材に取り上げ、具体的に考察してみたい。

システムジュウヨンは、1984年より生活雑貨店「ママイクコ」ブランドを展開。オリジナリティに富む商品は、主婦層を中心に女性の人気を集め、一時は年間売上高が75億円を超え、全国に160もの店舗を構えるほどの勢いであった。だが、新規事業として着手した飲食業と高級家具販売事業の失敗もあって、業績は急激に悪化。2016年8月期決算では、約1億2,200万円もの経常赤字を計上した。そればかりか、同年10月には8億円以上もの債務超過が露呈し、結果的に大阪地方裁判所に民事再生手続きを申請するに至ってしまった。そのシステムジュウヨンの事業存続に向けて、スポンサーとして名乗り出たのがKSGであった。

「今回は入札を経てスポンサーに選んでいただきました。着目した一番のポイントは、小売業界が厳しいなかでも、唯一ECと戦える業態だと考えたからです。例えば、100円均一店は配送コストを考えると店舗であるからこそ価値があります。そういう意味では雑貨も同様です。ECには作れない価値が作れます。もちろん、リスクがあるのは覚悟していました。ただ、それ以上に伸び幅・伸び代があると判断しました」

当然ながら、入札に参加するにあたってはリスク分析はしたであろうが、懸念される材料はなかったのであろうか。
「一番のハードルは、FCのオーナーさんに引き続き事業を継続していただけるかでした。ママイクコにはFCが49店舗あります。それらのオーナーさんのところに挨拶に回り、可能性を確認しました。皆さん、何らかの不満はあるものの『今後も協力していただける』ということでしたので、我々もスポンサーとして参画することを決断したのです」

企業再生に向けたテーマは、特に設けなかったという。強いていえば、『敢えて変えない』ことであったと眞藤社長は指摘する。

「これは、KSGの一貫したスタンスでもあります。我々は組織が持つ保有能力に対して、発揮能力がどれだけ出ているかが大切だと考えています。これだけの店舗数を持っている時点で、ママイクコには保有能力はあるといえますが、残念ながら十分に発揮されてはいません。そこのパーセンテージを高めることがKSGの最初のステップとなってきます」

KSGが打ち出したシステムジュウヨンの企業再生戦略は、KSGの多様なネットワークを活用し営業・販売力の強化を図るとともに、マーケティングを徹底し商品開発力・商品調達力を強化すること。その結果として、「ママイクコ」ブランドの再建を果たすストーリーであった。雇用の維持も提示している。

スポンサー契約を締結した後、眞藤社長は財務面の見直し、営業面でのテストなど矢継ぎ早に施策を打ち出していった。
「財務には専門部隊を送り込み、コストやキャッシュフローなど各種改善に入っていきました。次に、直営店でマーケティングや店舗管理、新ブランド商品に絡む色々なテストを繰り返しました。教育においても、専門のコンサルタントを入れて店長の指導を行いました。今取り掛かっているのは、物流改善です。これは恐らく利益ベースで億単位のパフォーマンスが出ると思います。具体的には、担当役員が物流の流れやオペレーション、在庫管理の仕方を見直しています」

並行して眞藤社長は、店舗にも自ら足を運び、店長や従業員と直接話をすることを心がけているという。
「すべては現場ありきだからです。我々の想いを理解してもらいたかったという理由もあります」

店舗を回ったことによって、新たな気付きもあったのではないだろうか。
「従業員さんの仕事の進め方がバラバラでしたね。オペレーションがいびつになっていました。どうしても、破たんしていく会社は第一優先項目がキャッシュフローになりがちです。売上や利益を上げるとか、お客様に喜んでもらうよりも、キャッシュフローに貢献することを優先せざるを得ないので、自ずとそれに利する仕事、サービスになっていきます。ただ、それではどうしても本来目指していた方向性とは違ってしまいます。我々が入ることで、まずそこの交通整理や骨格の見直しをしようと思います。言い換えれば、優先順位を変えたわけです。これによって、本来の仕事の進め方に戻ることができるようになりました。ただ、戻ったからといって、すぐに利益が出るという甘い話ではありません」

こうした再生努力を通じてシステムジュウヨンにどんな変化が生じてきているのであろうか。特に、現場を担う従業員の意識が気になる。
「それぞれが自分たちの役割・責任・権限を明確に感じてもらえていると思います。我々が着手し始めた頃と比べると明らかに違います。意識はかなり高まってきています。本当にありがたいことです」

その効果は業績にも現れてきているようだ。直営店のなかには、売上が昨年対比で150%伸びた店舗もあるとのこと。

今後の取り組みとして、眞藤社長は何を考えているのであろうか。次なる展開を聞いた。
「今年4月には、127番目の店舗として福岡・西鉄大橋店をオープンさせます。できれば、1年間で5~10店舗を増やしたいと思っています。店舗数だけでなく、利益も創出していかなければならないので、直営店でテストを重ねてきたことを、FC店舗にどれだけつなげていけるか、FCオーナーさんの業績アップに本部としてどれだけ貢献していけるかも試されます。オーナーさんには、本当に支えてもらっていますから、期待に応えていかなければなりません。さらには、雑貨店という業態上、女性の従業員さんが多く働いているので女性ならではの施策にも取り組んでいきたいですね。彼女らが生き生きと働ける職場環境を作り上げていきたいと思います」

「ママイクコ」ブランドの再生には、FCオーナーと従業員、そして取引先の方々とのパートナーシップが不可欠と捉える眞藤社長。その挑戦に今後も注目していきたい。

 

インタビュアー

ライター

袖山 俊夫