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ビッグデータ時代にこそ極めるべき仮説思考とは

  • feedy

ビジネスにおいて人間が習得すべき思考プロセスとは

ビッグデータやAIなど、ビジネスにおけるIT活用は日々進んでいます。

それに伴い、

「世の中の仕事のxx%がAIに奪われる」

「正解の定義が曖昧な分野ではまだまだ人間に優位性がある」

など、ITの有意義な活用方法について様々な研究・議論がなされています。

そもそも、ITと人間では得意領域が全く異なっており、それぞれの能力を最大限発揮するためには、得意領域を活かすプロセスを採用する必要があります。

ITの得意領域は、ビッグデータ活用に代表されるように、膨大なデータを取得し、高速に処理し、パターンを見つけ、示唆を出す、などです。近年のホットトピックであることもあり、多くの方が同様の認識を持たれているかと思います。

では反対に人間の得意領域はというと、言語化して認識できている人は、以外と少ないのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、「思考プロセス」に着目して、人間が発揮すべき価値や、その価値を生むために必要なポイントを整理したいと思います。

分析思考と仮説思考

まず、ある“問題”に対して正しい結論にたどり着くまでの思考プロセスである「分析思考」と「仮説思考」についてご説明します。

これらは思考プロセスとして対になる概念ですが、それぞれ以下のような特徴があります。

分析思考 - 関連するファクトを集めて分析することで結論を導く –

「分析思考」とは、“問題”に関連するファクト(仮説や類推を含まない、定量的/定性的な情報)を集め、それを集計/分析することで気付きを得て、“問題“に対する結論づけを試みるアプローチです。

特に定量的なデータを用いた場合に強く言えることですが、統計学的な観点で“正しさ”を定義するため、人による解釈のズレが発生しづらく、うまくいけば強い論拠を持った結論が導き出せます。

ただし、注意しなければいけないのは「リソース」「スピード」の2点です。

どこに気付きの種が隠れているか分からない状態で総当たり的にデータを見ようとすると、膨大な手間と時間が必要となります。

また更なるバッドケースは、そもそも集めるべきデータが集められておらず、総当たり的にデータを見ても何も発見がないようなケースです。

つまり、膨大な手間と時間がかかるにも関わらず、よい結論づけができるかどうかが最後まで分からないという、非効率なアプローチになってしまうリスクがあります。

人間が行う仕事においては、有限なリソースの中でできる限り早く結論にたどり着くことがとても重要ですが、分析思考のみではそれが達成できないことは明らかです。

仮説思考 - その時点で最も正しいと思われる仮の結論を立ててその正しさを検証する –

一方の「仮説思考」とは、“問題”に対して最初に仮説(その時点で最も正しいと思われる仮の結論)を立てます。そしてその正しさを検証するためのアクションを実行し、結果をもって仮説の立証or棄却を判断します。それを繰り返すことで仮説を精緻化し、求められる精度をそなえた結論づけを試みるアプローチです。

検証するためのアクションとして、分析思考のときと同様にデータ収集などが発生する可能性がありますが、分析思考と決定的に違うのは「この仮説を検証するために、このデータを集める」という明確な意図がある点です。

それにより、不要な手間を避けることができ、リソース削減とスピード向上を図ることができます。

つまり、「人間が有限なリソースの中でできる限り早く結論にたどり着く」という目的においては、分析思考よりも仮説思考の方が適していることになります。

ただし注意点としては、初期仮説の精度が低いと仮説が棄却される回数が増え、仮説思考のメリットが十分に発揮できないことです。

またそれを避けるために、初期仮説を立てる段階で長時間に渡って思考したり、様々な情報を時間をかけて調べたりすること、これらもまた本末転倒です。

それではどのようにすれば仮説思考をうまく取り入れられるのか、最低限抑えておきたい勘所を見ていきましょう。

仮説思考における初期仮説の精度を高める方法

情報を幅広く集める前に、限られた情報から仮説を立てることが仮説思考の肝であることはご理解頂けたかと思います。ただあまりにも情報が不足していると、仮説とは言えない想像しかできない可能性があります。

それを避けるために初期に把握すべき情報として、以下が重要だと考えています。

  1. その“問題”に関わるステークホルダーの把握
  2. ステークホルダーがどのような力学で動いているかの理解

仮に、解くべき“問題”が「自社BtoBビジネスにおいて最も訴求すべき価値の明確化」であれば、ターゲット候補業界の業界構造やビジネスモデルは把握しておくべきです。

力学を理解した上でステークホルダーの立場に立って考えると、自社BtoBビジネスが解決する課題の重要度はどの程度か、自社のどこに魅力を感じるか、競合として思い浮かぶのはどんなサービスか、導入障壁になりえる内部要因/外部要因は何か、などの仮説を立てることができます。

この勘所を理解し、高いレベルで仮説思考的プロセスを実行できれば、ビジネス上のほとんど問題解決において大きな価値を発揮します。

ITを有効活用するためにも、人間は仮説思考を極めるべき

ここまで、仮説思考を活用いただくために有用性や注意点を見てきましたが、分析思考そのものを否定しているわけではありません。むしろ、時間もリソースも無限にある状況であれば、分析思考のメリットを最大限に活用することも可能だと考えます。

本記事冒頭の文脈に立ち返って考えると、分析思考的プロセスは、人間よりもITが得意とします。

まさにこの領域こそ、人間を遥かに凌ぐ処理能力を持ち、膨大なデータから「特徴」や「パターン」などの示唆を出すことを得意とするITを活用すべきだと考えます。

ただ、分析思考的プロセスを設計するのは、あくまで人間です。

その人間は、仮説思考を最大限活用し、検証すべき仮説の精度を高め、最適な分析思考的プロセスの設計を行うべきです。

加えて、一見関係ないと思えるような過去の経験から得られた知見も総動員しながら精度の高い仮説を立てるという、人間にしか発揮できない価値を発揮できるようになっていくべきではないでしょうか。

無意識下では、人間は分析思考に陥りがちです。

この記事が、分析思考だけで問題解決を進めようとしてしまっていないかを改めて振り返り、今この瞬間から仮説思考を取り入れてみる1つのきっかけになれば幸いです。

Battery(バッテリー)ビッグデータ時代にこそ極めるべき仮説思考とは」より転載