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インセプションデッキで新規事業のアイデアを磨き込む

  • feedy

誰の、どの課題を、どのように解決するのか?

以前、「マーケットインか?プロダクトアウトか?」というタイトルで、新規事業開発におけるテーマ検討のポイントを紹介させていただきました。その記事の結びとして、以下の考え方をご紹介しています。

マーケットイン/プロダクトアウトは、どちらを起点に歩み始めるかという順序でしかなく、二者択一でも、ましてや優劣をつけるようなものでもありません。

重要なのは「誰の、どの課題を、どのように解決するのか?」です。

「誰の、どの課題を」はマーケット(=ユーザー)を見極めることで決定し、「どのように解決するのか?」はプロダクト(=ソリューション)を考え抜くことで決定します。

今回、「誰の、どの課題を、どのように解決するのか?」について、さらに深掘りをしてみましょう。

この記事はBatteryからの引用です。

インセプションデッキとは?

新規事業のテーマやアイデアを検討し始めた段階では、先述の「誰の、どの課題を、どのように解決するのか?」というフレームワークで十分かもしれません。しかし、新規事業開発のプロセスが進み、社内外の関係者が増える段階においては、より深く製品/サービスの内容を整理し、明文化しておきたいところです。新規事業において「明文化」することは非常に重要です。新規事業は不確実性が高く、当初想定したように進まないことが往々にしてあります。そのとき、どの点がどのように想定と違っていたか明確に把握し、適宜軌道修正していく必要があります。

その明文化のためのフレームワークが、今回ご紹介する「インセプションデッキ」です。製品/サービスの特徴を以下の文章形式でまとめたものです。

インセプションデッキの枠組み

  1. [ターゲットユーザー] は、この製品/サービスで [何かしらのアクション] をすることにより、
  2. [潜在課題/顕在課題] を解決できるようになります。
  3. 今までこの問題が解決ができなかった理由は [他製品/サービスが問題解決できていない仮説] と考えられます。
  4. [本プロダクト名] は [代替手段の最右翼] とは違って、
  5. [差別化の決定的な特徴] が備わっているため、
  6. [マーケティングチャネル] を基軸として、製品/サービスが認知/拡大していきます。

これは、ThoughtWorks社のRobin Gibson氏によって考案されたフレームワークで、氏のブログで紹介されています。(https://agilewarrior.wordpress.com/2010/11/06/the-agile-inception-deck/https://agilewarrior.wordpress.com/2010/11/06/the-agile-inception-deck/

マーケティングの名著『キャズム』の中で紹介されている「ポジションステートメント」にマーケティングチャネルの観点を追加して、さらに拡大させたものと考えられ、このフレームワークを活用して製品/サービスを見つめることで、アイデアの磨き込みをすることができます。

インセプションデッキの活用例

インセプションデッキの使い方/効果を理解していただくために、すでに市場に流通している製品/サービスを整理してみましょう。

※以下の例は筆者がインセプションデッキを紹介するために作成したもので、下記例に記載しきれていない点や、企業側の意図と異なる点がある可能性もあります。ご了承ください。

TikTokのインセプションデッキ

1日平均起動回数が43回(*)を超える、10代を中心に人気のアプリ TikTokは以下のようなインセプションデッキとなりそうです(*アプリ分析メディア・App Ape Lab調査)。

  1. [中学生/高校生] は、この製品/サービスで [動画の投稿/閲覧] をすることにより、
  2. [移動時間や休憩時間の暇] を解決できるようになります。
  3. 今までこの問題が解決ができなかった理由は [他のサービスに高度な自動加工機能が不足していたため、また、(Youtubeなど)一般的に長い時間の動画が求められていたため] と考えられます。
  4. [TikTok] は [YouTube] とは違って、
  5. [①投稿者にとっては高度な自動加工機能がついていて、編集テクニックがなくても良質な動画を撮影することができる、②閲覧者にとっては動画時間が短く、無名ユーザーの投稿も含めて様々なコンテンツを次々に消化しやすい仕組み] が備わっているため、
  6. [インフルエンサーによって投稿されたコンテンツ] を基軸として、製品/サービスが認知/拡大していきます。

このように、インセプションデッキの1・2・5を通じて自社製品/サービスと顧客についての理解を深めるきっかけになり、3・4では競合他社の製品/サービスを調べるきっかけにもなります。

また、このインセプションデッキは新規事業開発のプロセスを通じて磨き上げていくものですが、特に新規事業のテーマやアイデアを「誰の、どの課題を、どのように解決するのか?」というフレームワークで整理した後、事業化に向けて動きを具体化/加速していく際に効果を発揮します。

「新規事業を作りたい。新たな収益の柱を生み出したい。」

そのような思いを持つ方に「誰の、どの課題を、どのように解決するのか?」と併せて使っていただきたいフレームワークです。