たとえば芋蔵には焼酎セラーを設置して300種類以上の焼酎を揃えているが、この仕入力を真似することは至難である。他社が類似業態を開発したものの、これだけの種類の仕入れを継続できず、撤退を余儀なくされた事例があるという。
2013年に東京・日本橋の日本橋川沿いにオープンさせた和食料理店「豊年萬福」も、オンリーワン業態だ。この店は日本橋地区の再開発プロジェクトに参加させてもらう形で、好立地に店舗を構えることになった。川沿いにテラス席を設け、さらに日本橋の老舗企業と協業し、にんべん(鰹節)、山本海苔店(海苔)、日本橋鮒佐(佃煮)、日本橋神茂(はんぺん・かまぼこ)などから食材を仕入れ、メニューには「にんべんさん」「日本橋鮒佐さん」などと協業先の社名が記入されている。ここまで極めたら、真似のされようがない。
競争力を支える第二のポイントである多業態展開の背景は、単一業態の多店舗展開は業態の短命化によって持続的な成長が難しいと考えたことにある。現在の業態・店舗数は70業態・143店舗。直近では2016年11月に名古屋駅近くにスペインバルとフードコートの複合店舗「La Boca Centro」をオープンした。約400坪の大箱で、開業資金は4億円。新田氏が旅行したバルセロナで体感した「人、食事、文化の自由な発想」を名古屋から発信しようという意図でオープンさせた。
経済ジャーナリスト
小野 貴史