熱中の肖像

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組織をプロジェクト型に編成 上司・部下の関係がなく全社員が同格 / 熱中の肖像 インタビュー後編

株式会社アトラエ 代表取締役社長 新居佳英

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試合毎にキャプテンが変更するサッカーチームの運営を参考

新居氏は1998年に上智大学理工学部を卒業して、成長期にあったインテリジェンスに入社した。説明会に登壇した入社2年目の東工大卒の社員が、まるで社長のように自社を語る光景に、起業家志向の新居氏は惹かれたのだ。だが、社員150人のベンチャー企業への就職に「教授、就職課、友達の皆に反対され、親からは『人生でただひとつのお願いをする。インテリジェンスにだけは入らないでほしい』と言われました(笑)」。

入社後はすぐに頭角を現し、3年目にみずから設立した子会社の社長に就任し、その3年後には本社の取締役に就任する気運にもなったが、理想の組織づくりをめざして独立した。「全社員がワクワク生き生きとしたチームをビジネスという世界でつくりたい」と企図したのである。新居氏が組織像として描くのはサッカーチームだ。

「サッカー日本代表チームではキャプテンマークを付ける選手が試合ごとに変わり、キャプテンがすべてを仕切るかといえば必ずしもそうではなく、ディフェンスを仕切るのは長友選手だったりします。また、仕切る役割ではないけれど一番高い報酬を得ているのが本田選手で、キャプテンマークを付けた選手を含めて全員を取りまとめるのが長谷部選手というように、選手間に上下関係がありません。私はそういう組織をめざしたのです」

アトラエには取締役に新居氏を含む3人が就任している以外は、全社員35人の間に上司・部下の関係が存在しない。組織は経営管理業務も含めプロジェクトチーム制で運営され、チームリーダーは業務によって入れ替わる。ヒエラルキーがないため、出世という概念もなく、フラットを極めている。では、人事評価はどう実施しているのか。

皆経営者主義組織の具現化策として全員に特定譲渡制限付株式を付与

毎年の評価時に、全社員が業務で自分に関係の深かった6人を選定し、6人から評価してもらうのだ。しかも6人の選定が自分の親しい社員などに偏らないように、取締役が選定の妥当性をチェックしている。新居氏は「他人の顔色をうかがうという行動が発生する余地をなくしました。たとえば私に社員を評価する権限はないので、私と仲良くなろうとしても意味がありません」と打ち明ける。

さらに2016年11月、「皆経営者主義組織」の具現化策として、新株発行によって全社員35人に対して特定譲渡制限付株式を付与した。3年の譲渡制限期間を設定して発行したのは普通株式3500株。発行総額は3300万円。全社員を対象にした付与は「国内ではじめての取り組みです」(新居氏)という。

「特定譲渡制限付株式は取締役を対象にした仕組みですが、当社の社員に経営者目線をもってもらうために全社員に付与しました。手続きを依頼した弁護士事務所からは『前例がない』といわれましたが、私は『前例がないからこそやるんだ!』と(笑)」

創意を尽くした組織運営が奏功して、社員の離職率は数年来ゼロに近い。転職支援を業とするアトラエから転職者が発生しないのは矛盾した現象にも見えるが、新居氏は「知識産業ではノウハウは組織でなく人の中にストックされるため、社員の退職はノウハウの流出につながります」と考え、定着を重視している。

当面、まだ伸び代の大きいGreenを主力事業に据えるが、新規事業として組織改善プラットフォーム「wevox」を事業化する。Greenの利用企業から「社員が定着しない状態で新規採用するのは、穴の開いたバケツに水を入れるようなもの」と悩みを聞かされたことが、開発の動機となった。職務や人間関係、承認・関心など9つの指標によって、部署、年代、職位など属性ごとにエンゲージメントを可視化し、3カ月単位でサーベイを実施して対策を打てるように運用する。

wevoxは、いわばエンゲージメント向上のPDCAツールである。Greenが人材紹介市場にテクノロジーを導入したように、組織改善に可視化とPDCAを導入して、アトラエはHRビジネスの属人性を科学に切り替えようとしている。

インタビュアー:経済ジャーナリスト 小野 貴史

ライター:小野 貴史

前編はこちら >> 書類選考通過率が28%に到達 求人・求職マッチングを科学する

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