環境や健康への対応を強化していたイオングループに早速、勧誘され、初出店の翌年には「イオン津田沼店(千葉県)」に第2号店(現在は閉店)をオープンできた。現在は渋谷ヒカリエで、フラッグシップショップとしてアサイーボウルなどを提供するアサイーカフェを運営している。さらに、アサイーの供給量を増やすため、業務用卸事業も手がけることにした。手始めに「タリーズコーヒー」の全店(当時約300店舗)に納入。「フルッタフルッタとのダブルチョップにしてもらえたので、それをきっかけに当社の事業は大きく飛躍できました。ブランド名が一挙に全国に広がり、そのほかの大手外食店チェーンとの取引も急増したのです」と、長澤社長は明かす。その後、小売向け自社製品販売とメーカーへの原料販売を開始。現在それらの売上は、業績向上に大きく貢献している。
一方、アサイーのPRも順調に進んだ。第1号店オープンの際、地元紙の神戸新聞が1面で大々的に報道したのだ。それが呼び水となり、アサイーの物珍しさも功を奏して、全国紙やテレビ局からの取材が相次いだ。さらに、「ベストアサイーニスト授賞式」というメディア向けの独自のイベントも仕掛けた。これは、アサイーを愛用している有名人を年度ごとに表彰しようという企画。在日ブラジル大使館にサポートしてもらったところ、ブラジルゆかりのJリーガーも積極的に協力してくれたため、多くのスポーツ関係者や芸能人が受賞してくれた。
各方面での販売展開とメディアでのPRという両輪がうまく回った結果、フルッタフルッタの業績は右肩上がりで伸び、2014年12月には東証マザーズへの上場も果たした。IPOの理由について、「ベンチャーキャピタルなど出資者の期待に応えるため、ビジネスパートナーの信用を得るためもありましたが、事業をもっと大きくしてアグロフォレストリーも発展させたいという思いが強かったですね」と、長澤社長は心境を吐露する。
国語辞典に「アサイー」が新語として掲載されるなど、アサイーの市場浸透という第一のミッションが達成できた今、「アサイーを青汁のように日常の食品として定着させること」(長澤社長)が第二のミッションだ。その戦略の柱と位置づけているのが、アサイーの親和性を生かした一般食品とのコラボレーション。具体的には、アサイー入りのアイスクリーム、ヨーグルトといった商品を市場で増やしていくことで、アサイーの供給量を底上げする考えだ。
並行して、“第二のアサイー”となるアマゾン産果実の普及も図る。アグロフォレストリーのさらなる発展につながるからだ。同社はアセロラ、クプアスといったさまざまな果実を取扱っているが、中でも力を入れているのが、アグロフォレストリーの基幹作物となる「アマゾンカカオ」(カカオの原産地であるアマゾンで栽培されるものを総称してこう呼ぶ)。「チョコレート市場は巨大で、原材料にこだわり、差別化するのが最近のチョコレートのトレンド」だからだ。すでに、大手菓子メーカーにチョコレート原料としてアマゾンカカオを供給している。
長澤社長は、ベンチャーの成功条件として、「夢中で打ち込める仕事を見つけること」とともに、「社会に貢献する仕事をすること」を挙げる。「目先の利益を追い求めるだけでは、一時はよくても長続きしません」という。フルッタフルッタにとっては、「アグロフォレストリーの発展」が事業の原動力となっている。「アグロフォレストリーは、破壊されたアマゾンの森林を再生し、地球環境を守るための重要な事業です。その事業に当社が少しでも役立てるなら、こんなに嬉しいことはありません」と、長澤社長は力強く語った。