もうひとつ、新たに拡大する業務にファンドを活用した“二段階エグジット”がある。株式上場をめざす企業の創業者など既存株主が、ファンドが設立する特別目的会社(SPC)に株式を譲渡し、譲渡対価の一部をSPCに再出資する。これが第一段階のエグジットだ。その後、経営陣(創業者は退くことも可能)は従来通りに経営を継続しながら、ファンドの支援で人材強化やリスクマネーの供給、経営管理体制の強化を実施して、業績を向上させたうえで早期に上場を実現させる。そうすることで、再出資した分の株がIPO時またはIPO後に何倍もの価値で売却できる。二段階でエグジットすることで創業者利益の極大化をはかれるのだ。
同社が売り手のアドバイザーを務めた企業にベイカレント・コンサルティング(東京都港区)がある。経営戦略からITまで総合的にコンサルティングを展開するベイカレント社の創業者は、14年6月にファンドのCLSAキャピタルパートナーズが設立したSPCに株式を譲渡すると同時に再出資し、経営から退いた。
ベイカレント社は、ファンドの支援も受けて企業価値を上げ、わずか2年3ヶ月後の16年9月に東証マザーズに上場し、創業者は二段階エグジットを果たすことができた。「どのような相手先に譲渡するかは経営者様の考え方しだいですが、創業者利益を重視するなら、ファンドへの譲渡を選択肢の一つに入れてもよいのでは」と藤井氏はいう。
藤井氏は著書『中小企業M&A 34の真実』(東洋経済新報社)でM&A仲介・アドバイザリー会社の“不都合な真実”を明らかにし、自社のホームページにも仲介・アドバイザリー会社の選び方の盲点をリアルに書いている。虚々実々の金融業界に対して、あくまで公明正大なビジネスを志向する経営姿勢の表明とも受け取れる。
インテグループのインテはインテグリティ(高潔、誠実)の略である。藤井氏は「お客様に対して裏表がなく、言行を一致させ、誠実に向き合う経営に徹しています。強引に成約をめざすようなことはしません」と力を込めた。
経済ジャーナリスト
小野 貴史