先達の羅針盤

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事業停止命令からの復活 そして第2第3のビジネス展開へ / 先達の羅針盤 インタビュー後編

株式会社フルキャストホールディングス 取締役会長 平野 岳史

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本物の事業家とは、新たに大きな事業を2つ3つは作れるもの

2007年8月に事業停止命令を受けた際、フルキャストホールディングスの創業者で代表取締役会長を勤めていた平野岳史氏に対する世間の風当たりが一気に強くなった。なかには「たまたま短期派遣の人材サービスを手掛けて成功したのに過ぎないのだろう」といった批判もあったそうだ。しかし、平野氏はそれらを冷静に受け止め、声を荒げて反論するようなことはなかった。ただし、その一方では心のなかで、事業家として新たな闘志を燃えたぎらせていたのだという。

「偶然によってフルキャストホールディングスという1000億円企業が生まれたと見られたとしたら、私にとってとても不本意なことです。本物の事業家はどんな分野の事業であっても、決められたルールに則って、新たに大きな事業を2つ3つは作れるものだと常々考えてきました。そこで、私はそのことを自らの手で証明しようと決意しました」

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そして、平野氏が力を入れ始めたのが、「株式会社ヘルスケア アンド ビューティパートナー(H&BP)」が関連会社に有する遺伝子検査会社「ゲノフ」による新しい健康サービス事業だった。

遺伝子検査というと特殊なものに思われがちだが、ゲノフの遺伝子検査の1つである肥満遺伝子検査はとても簡単で、頬の内側を専用の綿棒でこすって宅配便で送るだけ。また、専用サイトにアップされたカウンセリングシートに回答し、3日間の食事の内容と一緒に送信すると、「脂燃焼不足」「糖燃焼不足」「筋肉不足」など、どんな遺伝子の要因で太りやすい体質なのかを教えてくれる。

「私は体重が気になり、好きなラーメンを食べるときはチャーシューメンではなく、野菜が多目のものにしていました。しかし、この検査を受けると私の場合は糖燃焼不足で、むしろ豚肉に含まれるビタミンB1の栄養素を摂ることで、体内の糖質の燃焼が活発になることが分かりました。健康に悩む方が大勢いらっしゃいますが、このような原因と対策が分かる遺伝子検査を手軽に受けることができるのです」

平野氏の体重は、いまでは10㎏も減り、リバウンドもないそうだ。それというのも、遺伝子検査のほかに管理栄養士による食事のアドバイスを受けられるサービスも並行して利用しているから。たとえば、朝と昼に摂った食事の内容と一緒に、夜にどこのレストランで会食があるといったことをメールで送ると、管理栄養士がそのレストランのメニューを調べて、どの料理をどんな順番で食べるのがベストなのかを5分以内に教えてくれる。

「また、異常を起こした遺伝子の量を調べることによって、がんが発生するリスクを知ることのできる『RNA検査』も行なっていて、私の知人は3年以内に膵臓がんが発生する可能性が高いことが分かりました。しかし、まだ前がん状態の段階なら、食生活の改善でリスクを減らせます。その友人も管理栄養士の指導を受けることで、健康な状態を取り戻すことができました」

事業運営の陣頭指揮をとり、詳細にサービスについて説明する平野氏の姿は、東証1部企業のオーナーではなく、いち起業家に戻っているようだ。また、経営者にとって万全の体調で仕事に向き合えることは、成功の大前提であり、後輩経営者たちへのメッセージにも受け取れる。

管理栄養士のアドバイスを受ける会員の数はすでに4500人を超えており、平野氏は遺伝子ビジネスの将来性にやりがいと確かな手ごたえを感じている。

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「遺伝子検査の結果、「β3AR型:あざらしタイプ」(糖質で太りやすい)との結果がでた平野氏の 取材当日の昼食について説明。糖質を制限するためのお弁当として、雑穀米にこんにゃく米と LGC米(低糖質米)を配合し、オリジナル独自製法米が売りのダイエット弁当となっている。」

さらに、H&BPで力を入れているのが中古携帯電話の買い取り・販売事業である「ECOMO事業」なのだと平野氏はいう。

「品質が一定し、壊れにくいスマートフォンが普及したことで、中古の携帯電話マーケットが一気に立ち上がりました。ある市場調査では、2013年末に179万台だった市場規模は2018年には326万台になると予想されています。ウェブを通した売買が中心で、市場シェアは15%前後を握っています。大手企業がこぞって参入し始めていて、シェア争い自体は厳しくなっているものの、全体のパイが急速に膨らんでいることから前年200%の伸びを見せています」

単に中古携帯電話の売買だけに目を付けたのであれば、並み居る経営者と変わらない。平野氏の凄いところは、売り買いする人にとって一番気になる中古携帯のデータ消去や、携帯がきちんと作動するかどうかを確認するシステムを構築し、自社だけでなく他社にも提供していることだ。中古携帯の売買に必要不可欠な〝インフラ・システム〟としてスタンダード化していけば、この中古携帯電話の流通業界をリードしていくことができる。

確かに平野氏は「本物の事業家はどんな分野の事業であっても、決められたルールに則って、新たに大きな事業を2つ3つは作れる」ことを証明しつつあるようだ。近い将来、この遺伝子ビジネスとECOMO事業は、短期人材サービスに加えて、平野氏を語る上で外せない代表的なビジネスになっていくことだろう。

 

インタビュアー:KSG ヴァイスプレジデント 細川 和人

前編はこちら >> 「どうしたら働きたい学生にお仕事を提供できるのか」からスタート 売上1000億企業へ

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