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富士フイルム再生医療ベンチャーのレグセル社へ出資再生医療製品の開発支援を行う業務提携契約も締結

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富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・COO:助野 健児)は、免疫細胞を活用した新たな医療技術の実用化を目指す再生医療ベンチャーのレグセル株式会社(所在地:京都市上京区、CTO:坂口志文)の第三者割当増資を引き受け、同社に170百万円を出資した事を発表した。また、今回の出資にあたり、4月28日にレグセル社と再生医療製品の開発支援を行う業務提携契約を締結している。
◆詳細はこちら
http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_1189.html?link=atp

今回の資本・業務提携を通じて、免疫細胞治療の最先端技術へのアクセス、さらにはその応用展開を図り、自社再生医療製品の研究開発を加速させていく。さらに、今後、グループ会社の株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングを通じて、レグセル社より細胞培養プロセスの開発や薬事コンサルティングなどを受託する。

レグセル社は、自家制御性T細胞(*1)および他家iPS細胞(*2)由来キラーT細胞(*3)を用いた免疫細胞治療の画期的な技術を開発し実用化することを目指す再生医療ベンチャーとなる。世界的に著名な免疫学研究者である、坂口志文教授(大阪大学名誉教授 兼 京都大学名誉教授)および河本宏教授(京都大学 ウイルス・再生医科学研究所教授)から、高品質なT細胞を増殖・作製する技術を導入している。今後、本技術を活用して、数年内に免疫細胞を用いた再生医療製品の臨床開発を実施予定となる。
現在、T細胞を用いた免疫細胞治療は、副作用が少なく高い効果が期待できることから、研究開発が活発化している。なかでも、制御性T細胞を用いた治療は、リウマチなどの自己免疫疾患や生体移植時の免疫拒絶に対する新たな解決策となり得ると考えられている。また、キラーT細胞を用いた治療は、がんへの高い治療効果が見込まれており、他家iPS細胞を用いることにより優れた利便性が期待されている。そのため、これらの治療に対する研究開発に注目が集まっている。

富士フイルムは、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米国子会社Cellular Dynamics International, Inc.(セルラー・ダイナミクス・インターナショナル)を通じて、加齢黄斑変性、網膜色素変性、パーキンソン病、心疾患、がんの領域で、iPS細胞を用いた細胞治療の研究開発を推進している。
また本年1月には、再生医療製品の研究開発を加速するため、オーストラリアの再生医療ベンチャーCynata Therapeutics Limited (サイナータ・セラピューティクス)へ出資している。Cynata社は、GvHD(*4)の患者を対象に、他家iPS細胞を用いた再生医療製品の臨床試験の開始を予定しているなど、世界最先端の取り組みを進めている。なお、本臨床試験では、CDI社が提供したiPS細胞が使用される。

富士フイルムは、長年の写真フィルムの研究で培ってきた高機能素材技術やエンジニアリング技術と、グループ会社のJ-TECの治療用細胞の生産技術、CDI社の世界トップのiPS細胞関連技術・ノウハウを融合し、再生医療分野の研究開発をさらに推進していくことで、再生医療の産業化に貢献していく。

*1 患者本人由来の制御性T細胞。制御性T細胞とは、免疫応答を制御し抑制する能力を持つT細胞の一種で、過剰な免疫応答を抑えるためのブレーキ機能を果たす。
*2 患者本人以外の健常人の細胞から作製したiPS細胞。事前に細胞を作製しておくことができるため、治療に用いる際に高い利便性がある。
*3 細胞傷害性T細胞と呼ばれるT細胞の一種。体内のウイルスやがん細胞などの異物を攻撃する。
*4 移植片対宿主病。移植片にとって、レシピエント(臓器受給者)の体は異物と認識される。ドナー(臓器提供者)の臓器が、免疫応答によってレシピエントの臓器を攻撃することによって起こす症状の総称。