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ビジネスにも通じる!結果を出し続ける「脱・体育会系組織」とは?

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全国大学ラグビーフットボール選手権大会で、9連覇(2009年度<第46回大会>~2017年度<第54回大>)という燦然と輝く大記録を打ち出したチームがある。それは、帝京大学ラグビー部だ。帝京大学ラグビー部は、抜本的な組織改革を行い、「脱・体育会系の組織」を実現したことで、プレイヤーの力を引き出すことに成功した。2015年ラグビーW杯で日本代表が南アフリカ代表に歴史的勝利をした際、日本代表の組織論が、ビジネス界に広く受け入れられた。

このようにスポーツにおける組織論がビジネスに転用される例が多々見られる。今回は、会社の将来を担う部下に力を発揮してもらうにはどのような組織を作っていけばよいか?と常日頃と考えているマネージャーの方々に、そのヒントを帝京大学ラグビー部の「脱・体育会系組織」の事例を通じ紹介していく。

「生活面」

上級生が新入部員をサポートする文化

日本では通常、学校の部活動など多くの組織で、雑務は新人が行う文化が、定着している。それは、主力の上級生が練習に集中するため・雑務を通じて仕事のやり方を覚えるためなど、理由はさまざまだ。一方、帝京大学ラグビー部では、それとは真逆の方法を採用しており、道具の片付け、掃除、食事当番などの雑務は上級生である3-4年生が行う。これは、上下関係が厳しい体育会系組織では見られない光景だった。

体育会系組織では、練習や雑務で新入部員に難題を課し、それに耐え抜いた者だけが、一人前と見なされてきた。厳しい環境で生き延びたものだけがチャンスを獲得でき、それ以外の者は脱落していく、言わば弱肉強食の考え方と言える。

では、なぜ帝京大学ラグビー部は従来のやり方と異なる方法を採るのだろうか。それは、「いち早く新入部員をサポートする体制を整え、力を発揮してもらうことで、チーム全体の底上げ」を狙っているからだ。

効果

上級生が新入部員をサポートすると、新入部員は練習や身体のアフターケアに集中することができるようになる。また、時間割の組み方など勉学面においても、上級生が積極的に相談相手になることで、よりラグビーに集中できる環境を整えているのだ。特に地方から入部してきた新入部員にとっては、すぐに生活面が安定しないため、大きなメリットになっている。このように、新入部員が適応しやすい環境を上級生で作り上げることで、チームを牽引する即戦力を、より多くそして早く育てることに繋げている。

一方、上級生が雑務を行うことで、上級生の負担が増えてしまうと思う方もいるのではないのだろうか。確かに、雑務を行うことで負荷が高まるのは事実ですが、実は、それ以上にプラスの作用を生んでいる。新入部員をサポートすることで、自分自身の視点だけでなく、入部したての新入部員という、もう1つの視点で物事を捉える習慣がつき、様々なことに気づく力が養われるのだ。これにより、仲間の視点・相手の視点で物事を俯瞰的に見ることができるようになり、試合中に的確な判断ができるようになる。

以上のように、上級生が新入部員をサポートすることで、お互いWin-Winの好循環が生まれる。その結果、個人能力が向上し試合のパフォーマンス向上に繋がっていく。

ビジネスへの応用

昨今、雇用の流動性が高まっており、人の出入りが多くなっている。そのため、「転職者がいかに早く馴染じめる組織であるか」は避けられない命題になっている。通常、転職者は即戦力で採用することが多く、教えなくても成果を出せて当たり前、と考えられている側面が大きい。

しかし、実際は新しい環境に飛び込む際の不安は、誰にでもあり、その不安が一因で、本来の力が発揮できないことも少なからず起こりえるだろう。周囲のフォローがあれば不安を解消できるにも関わらず、フォローが行われないことで実力を発揮できていないとしたら、組織にとって大きな損失だ。このように本末転倒な事態にならないよう、先輩が転職者をサポートする文化をつくり、仕事に集中しやすい環境を整えることが、ますます重要になるだろう。

「プレー面」

プレイヤー15人全員がリーダー

帝京大学ラグビー部では、上級生自らが、新入部員向けの研修を行う。チームスローガン、テーマ、目標、練習の反省などを、新入部員全員が再認識することも目的の1つだが、真の狙いは、上級生が指導することを通じ、リーダーシップを発揮するための動機付けを与えることにある。

効果

ラグビーは、試合中監督の指示を仰くことができないため、15人全員がリーダーとなり、その状況に応じてプレイヤー自身が適切な状況判断を行わなければならない。もしチームが、上意下達のヒエラルキー型組織であれば、上からの情報を待つ間に、状況が変わり、対応が後手に回ってしまう。野球のように攻守交替時に、監督が作戦を共有する時間が確保されておらず、ラグビーでは、そのルールの性質上、プレー中の瞬時の状況判断・発信・チームを動かすリーダーシップが求められているのだ。

前述の新入部員研修では、プレー中にリーダーシップを発揮すべきシーンを疑似体験ができる場となっており、講師役の上級生は、「主張」と、相手を納得させる「根拠」が求められる。これは試合での「状況判断(=主張)」と「状況判断の理由(根拠)」に相当し、研修で新入部員を納得させられなければ、試合で的確な状況判断ができなかった(リーダーシップが発揮できなかった)ことを意味する。これを踏まえ、選手は原因を考え、改善に努めるのだ。

また、研修だけでなく、練習においてもリーダーシップを鍛える訓練をしている。練習中、気になることがあった瞬間にプレーを中断し、それぞれの「主張」と「根拠」を学年関係なくぶつけ合い、お互い納得できるまで議論しているのだ。常日頃から、選手が主体的に状況判断する訓練を徹底的に繰り返すことで、試合中フィールドに監督がいなくても選手たち自身の判断で、試合を進めていくことができるようになっていく。

ビジネスへの応用

現代はインターネットの誕生により、ビジネスのスピードは格段に速まった。その結果、議論の前提自体が物凄いスピードで変わり得るため、意思決定者達の会議を経てから出された結論は、すでに陳腐化している恐れがある。だからこそ、権限移譲を行い現場で判断する重要性が高まっている。

ゆえに「その状況で瞬時に現場にいる個人が最善の判断を行い、周りを巻き込みながら実行するリーダーシップを有する人材」が求められているのではないだろうか。その点、帝京大学ラグビー部は従来の常識を覆す斬新な方法で、人材育成に成功している稀有な組織だ。この変化が激しい時代に生き残るための組織作りに悩んでいる方は、是非帝京大学ラグビー部の組織改革を参考にしていただければ幸いである。

参考文献