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パートナー企業を本気にさせる「勝てるストーリー」の設計

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パートナー企業を本気にさせる「勝てるストーリー」の設計

Relicの社員は、これまでのキャリアの中で新規事業開発の責任者(または主担当)を務めた経験が豊富です。それら実際の現場で行われた新規事業開発プロセスを題材として、新規事業を成功させるために必要なエッセンスをご紹介させていただきます。

本記事では、EC市場における新規事業開発の成功事例を題材に、パートナーアライアンスを進めるうえで大切なことをご紹介します。

この記事はBatteryからの引用です。

どのような状況で新規事業開発を行ったのか?

EC市場は、成長産業として毎年市場規模を伸ばしています。ただし、ショッピングモールやカテゴリー特化ショップを含め、勝者は出揃っている状態でもあります。ここで言う勝者とは、例えば本を買うなら◯◯、洋服を買うなら〇〇というように、一般消費者がECサイトを思い浮かべるときに純粋想起されるようなサービスになっていること、という定義です。そのような状況において、自社(この事例では大手IT企業)が持っている強み「事業企画力、技術力、EC運営経験」を活かして、新規ECサイトを立ち上げ、特定カテゴリーにおける「勝者」になることをゴールに本プロジェクトは開始しました。

勝負するカテゴリーをどう決めたか?

まず、どのカテゴリーで戦うのかを決める必要があります。ファッション、家電、日用品、食品等、どこで戦うかは重要です。たくさんの競合サービスがひしめき合うEC市場で、後発サイトとして新規参入するにあたり「勝てる可能性のあるカテゴリー」の条件を以下の通り定めました。

  1. そのカテゴリーに対する一般消費者のニーズが大きく、成長が見込めること (リアルの流通金額/市場規模が大きいが、EC化率が低い)
  2. そのカテゴリーにおいて圧倒的なNo.1が存在しないこと (既に存在する競合サイトも含めて明確な勝者が存在しない)
  3. 勝者になったとき、会社として意味のある売上規模が狙えること (勝者になれてもニッチなカテゴリーでは意味がない)

上記3つの観点で市場調査/候補幅出し/絞り込みを行った結果「ベビー用品」カテゴリーの新規ECサイト立ち上げを検討することに決定しました。

どのようにパートナー企業を選んだのか?

ベビー用品市場で戦うと決めた後は、自社のみで戦うのか、外部企業とパートナーアライアンスを組んで共創するのかを決めなければいけません。まず自社の持つ強みは「事業企画力、技術力、EC運営経験」です。そのリストには、ECサイトを成功させる主要因である「売れる商品を企画し、製造販売する力」は含まれていません。そのため、そこに明確な強みを持つパートナー企業の存在は必須です。パートナー企業選定は以下の考え方で検討しました。

  1. ベビー用品の企画力/製造力が強みであること (リアルの売上が既に大きい)
  2. そこでしか買えない商品を販売していること (PB商品が充実している、かつ売れている)
  3. どこでも買える商品だが、どこよりも安く販売できること (NB商品の価格が安い、メーカーや卸売に強い交渉力を持つ)

パートナー企業を本気にさせる「勝てるストーリー」の設計

さっそく選定した候補企業Aにアプローチを試みます。まずは自社内で既にコネクションがないかを調べますが、取引も商談も未実施であることが判明しました。次に知人/友人を経由したアプローチも検討しますが誰もコネクションを持っていないことが判明します。完全に新規でのドアオープンが必須になりました。

まずは候補企業Aの担当者と直接会って対話することが第一歩です。Webサイトから問い合わせ先を見つけ、電話をかけます。応対していただいた問い合わせ担当者に、自分は誰で、何を提案させていただきたいのか、どのような立場の方に繋いでいただきたいのかをご説明し、アポイントを頂戴します。まったくコネクションがない中でも、こちらの熱意と目的、そして何より先方視点から見たときの提携メリットをわかりやすくご説明できれば、ドアオープンすることが可能です。

もちろん紆余曲折はありましたが、商談/交渉を粘り強く重ねた結果、ついにパートナーアライアンス契約締結という形で実を結びました。パートナーアライアンス交渉における重要なポイントは、事業を成功させるためにマストである要件/ファンクションの洗い出し、および両社アセットを組み合わせることでそれらの構成要素を相互補完的に満たせるというストーリーです。これが描けなければ、どれだけ提携したいと思っていても話は進みませんし、もし進んだとしても事業は成功しないでしょう。あくまで提携は手段であり、目的ではありません。

「自分たちは◯◯の領域でこのような戦いを挑みたいと思っている。勝つためには◯◯という要件を満たしたサービス作りが必須である。自分たちは◯◯に強みを持っているが、◯◯は持っておらず、◯◯の観点で貴社とパートナーとして共同事業を立ち上げるのがベストだと考えている。是非ご一緒していただけないか?」という明確な「勝てるストーリー」が必要です。

ここでの納得感こそが、パートナー企業を本気にさせるキーファクターだと考えています。

立ち上げた新規ECサイトはどうなったか?

数ヶ月間のサービス構築期間を経て、ついに新規ECサイトがオープンしました。提携先の企業Aの持つアセットのうち、全国展開している実店舗は非常に強力な集客チャネルです。それら実店舗を活用した施策の合意を早々に取り付け、全国に配布するチラシやポスター、店員の顧客対応マニュアル等、必要な資材を入念に準備してオープンを迎えました。結果、初月から目標売上を突破し、右肩上がりでのサービス成長を実現することができました。また、実店舗からの集客効率も非常に高く、自社ECサイトを単独で立ち上げるときのCPA(顧客獲得単価)を大きく下回る数値を叩き出しました。集客効率が高いことから、新規顧客獲得よりも、既存顧客の満足度向上にコストを投下することが可能となり、堅実に事業を成長させる理想的なモデルに着地しました。

まとめ

新規事業開発 × パートナーアライアンス の成功要因はいくつかありますが、特に重要な3つのポイントをまとめます。

  1. パートナー候補企業の視点に立ち「提携する具体的なメリット」を提示すること
  2. 事業成功のマスト要件/ファンクションの洗い出しおよび「勝てるストーリー」を設計すること
  3. 両社の強み/弱みを定義し、それらを相互補完的に組み合わせることがベストだと合意すること (しつこいくらい何度も共有する)

新規事業開発 × パートナーアライアンス を企画/検討される際には、上記3つのポイントに留意していただくことをおすすめします。