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ミドルダウン型の新規事業創出は難しい、という話

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ミドルダウン型の新規事業創出は難しい、という話

大企業の新規事業創出における役割パターン

創業して間もないスタートアップ企業であれば、ほとんどのケースにおいて創業者が旗振り役です。
では大企業においてはどうでしょうか?

経営層が発案・意思決定してトップダウンで音頭をとることもあれば、全社的に事業案を公募し、審査通過プランの旗振りを発案者である社員が担う完全ボトムアップのケースも多いです。

今回は、組織をトップ・ミドル・ボトムの3階層に、また新規事業創出における組織内での役割を「発案」「実行」「投資/継続判断」の3つに大分した上で、誰がどんな役割を果たせば新規事業創出がスムーズに推進される可能性が高いかを検討します。

この記事はBatteryからの引用です

パターン①:トップダウン型

トップが発案および事業化の意思決定をした事業案を、ミドル・ボトムが具現化するパターンです。
某アパレルメーカーや某通信キャリアなどが代表的な事例と言えるでしょう。
この場合、発案者であるトップが投資/継続判断を行えるため、新規事業に対する評価は発案時の目的に沿って行われる可能性が高いと考えられます。

ただし、気を付けなければいけないのは、客観的なチェック機能が果たされず、不適切な投資が継続してしまうリスクがあるということです。
これを防ぐためには、経営者層がチェック機能を果たす必要があります。

パターン②:ミドルダウン型

ミドルが自身のミッションや課題感から新規事業を発案し、それを部下であるミドルに具現化/実行させるパターンです。
一見すると、小さなユニット内でトップダウン型の新規事業創出を進めているように思えますが、前述のトップダウン型とは決定的な違いがあります。

それは、最終的な投資/継続判断の役割を果たすトップと、発案者であるミドルとの間で、方針/課題感の不一致が放置されやすいことにあります。
ミドルから号令がかかったボトムがどれだけ頑張っても、またミドルが描いた事業案がどれだけ世の中的に重要な課題に取り組もうとしていても、トップとの合意形成ができなければ大企業の中で取り組み続けることは難しくなります。

この問題を防ぐためには、(1)逐次トップとの合意形成を図る、(2)ミドルに強い権限を委譲する、の2つが考えられます。
しかし、(1)はコミュニケーションコスト増、(2)は権限委譲に値する人材の発掘や配置の難しさなど、実現のためのハードルは低いとは言えません。

パターン③:ボトムアップ型

ボトムが発案して形にしていく事業を、上層部であるトップ/ミドルが評価するパターンです。
アイデアの種を絶やさず、常にイノベーションに向けて動き続けるという観点においては、発案者の数が多いため有効な構造に思えます。

ただし、ここでの問題は、最終意思決定者であるトップと発案者であるボトムとの距離が遠いことにあります。
決裁を取るために稟議書を書いて1つ1つ判子をもらって…そんなことをしていては特にスピーディーな意思決定が求められる新規事業がうまくいくはずもありません。

つまり日本の「稟議」というシステムは、新規事業を推進する上では適していない、ということです。

この問題の解決策は、トップとボトムの間に、一定レベルの意思決定力をもつ組織を設けることです。
具体的には、新規事業創出プログラムの運営事務局のようなイメージです。

まずトップと運営事務局は、ミッションや目標、事業を客観的に評価する仕組み、またそれに伴って必要になる予算等についてすり合わせを行います。その後、運営事務局はトップと合意した要件の中でボトムの事業案を評価し、投資/継続判断を含む意思決定を行います。

ここで重要なのは、(1)客観的に評価する仕組みを持つことと、(2)運営事務局も事業に責任を負う、ということです。
(1)は、トップへの報告や説得をスムーズに進める上で必須です。ここが握れていないと、納得のいかない形で撤退を迫られるなど、イノベーションを生み出し続ける仕組みが機能しません。
(2)は、新規事業創出プログラムを1つの企業体だと考えればごく当たり前の考え方だと言えます。問題が起きたときに何も対応しない社長についていく社員はいないでしょう。組織を機能させるためには、運営側が組織全体について責任を持ち、課題解決に努めるべきです。

まとめ

俗人的な解決ではなく構造として新規事業創出を実現するためには、ボトムアップ型が適していると言えます。また、強烈なリーダーシップを持ち、イノベーションへの理解が深い経営者層がいる企業においては、トップダウン型で新規事業が生まれるケースが多いでしょう。
反対に、ミドルダウン型で成功に導くことができる企業は日本にはまだ多くないと考えます。

新規事業を生み出したいのにうまくいかないという企業の方々は、「自社の新規事業創出では誰がどんな役割を果たしているのか」を今一度整理し、構造的な解決を図ってみてはいかがでしょうか。