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仮説検証のストーリーを設計すること

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仮説検証とは?

仮説検証とは「ある時点で最も正しいと思われる”仮”の結論」を、データを集めたりヒアリングしたりすることで「やはりこうだった」「実は違った」と事実確認するプロセスのことを指します。

新規事業開発は、仮説検証の繰り返しです。特に初期フェーズの「誰の、どの課題を、どのように解決するのか?」を具体的に定義していくプロセスにおいては、ほぼ仮説検証のみで埋め尽くされていると言っても過言ではありません。

例えば「男性には、ひげ剃りの手間/コストという課題があり、ひげ剃り/電気シェーバーといったソリューションがある。しかしそれらも解決できていない、自分でひげを剃るという手間/コストという課題を、寝ている間に自動的にひげ剃りをしてくれる装置があったら、大きな反響が得られるだろう」という仮説があった場合、どのように検証するべきでしょうか?

この記事はBatteryからの引用です。

ソリューションまで一足飛びに検証するリスク

まずは、ターゲットとする「候補顧客と課題」が本当に存在するのかを検証するべきです。例えば、そもそも男性がひげ剃りを面倒だと思っておらず、むしろ楽しんでいるのだとしたら、初期仮説は大きく外れていることになります。

または、そもそも男性のうち、ひげが生えている人が5%しかおらず、95%の男性は顔がつるつるだったら、たしかに5%の人には課題があるが、95%の人には課題がない=まったく困っていないという結果になってしまいます。ニッチな5%を捉えてソリューション提供していきたい、という新規事業であれば良いですが、おそらくそのようなケースは少ないでしょう。

もし「男性には、ひげ剃りの手間/コストという課題があり、ひげ剃り/電気シェーバーといったソリューションがある。しかしそれらも解決できていない、自分でひげを剃るという手間/コストという課題を、寝ている間に自動的にひげ剃りをしてくれる装置があったら、大きな反響が得られるだろう」という仮説を、課題だけではなく「ソリューションまで同時に検証」しようとすると、自動ひげ剃り装置のプロトタイプ開発や商品コンセプト動画作成が最初から必要になりますし、もし初期仮説が大きく外れていた場合に、無駄な時間と大きな費用をかけてしまうことになります。(男性はひげ剃りを楽しんでいるから手間だと思っていない等)

まずは「候補顧客XXXは課題YYYを抱えており、ひどく困っている/悩んでいるだろう」という仮説検証からスタートするべきです。

仮説検証の構造化、ストーリーの設計

仮説検証は、その準備から実行まで、大きなコスト(人的/経済的)が発生します。「まずはどの仮説から検証するのか」「検証1の結果が想定通りではなかった場合、検証2はどう進めるべきか?」「これらの複数の仮説検証を実行すると、結果的にどのような結論が得られる想定なのか?」といったストーリーの設計が、検証コスト最適化のために重要です。

仮説はあくまで仮説であり、想定通りの結果が出ることの方が稀です。ですが、当初に立てた初期仮説を信じ込むあまり、検証結果を冷静に評価できなくなってしまい、どうにか初期仮説に近づくように偏った解釈をしてみたり、軌道修正に心的ハードルを感じたりすることも少なくありません。

その繊細な考え方は、一発狙い撃ちの仮説しか持っていないことが原因であるケースが少なくありません。しかし、仮説は外れて当たり前だと思っておけば、もし外れたときでも、逆にどういったチャンスがありえるのか?もしほとんどの男性がひげ剃りを楽しんでいるなら、どういったビジネスが生まれるのか?という発想が可能になります。

例えば、先ほど挙げた仮説の場合、以下のように因数分解することができます。

  • 「成人男性は80%の比率で、毎日ひげ剃りをしているだろう」
  • 「ひげ剃りは苦痛であり、手間/コストをできるだけ減らしたいと思っているだろう」
  • 「T字のひげ剃りや電気シェーバーが既存ソリューションだが、ジェルやクリームを塗ることが面倒だと感じているだろう」
  • 「T字のひげ剃りや電気シェーバーが既存ソリューションだが、朝の忙しい時間に10分ほどかかっていることが面倒だと感じているだろう」
  • 「既存ソリューションのうち、時間がかかることが一番嫌なことだと感じているだろう」
  • 「寝ている間に(起きる直前で)自動的にひげ剃りをしてくれる装置があったら、2万円までの価格であれば買いたいと思ってくれるだろう」

自分たちが検証したい仮説をまずは因数分解し、構造化し、どの仮説に自信があるのか(根拠があるのか)、または確信が持てない仮説とその理由についてきちんと把握したうえで、その検証ストーリー(検証する順序や判定基準)を考えていきましょう。重要なのは「多くの仮説の前提条件になっている(樹形図の頭に近い位置にいる)、未検証の仮説から優先的に検証すること」だと考えています。

仮説検証に着手する前に考えておくべきこと

例えば「ひげ剃りの手間/コストはそこまで面倒だと思っておらず、実は剃り残しが起きたり、夕方には伸びてきてチクチクすることが最重要課題だと思っていて、これらの打ち手としては脱毛することが最も評価されている」という結論だったとしたら、当初考えていたソリューションでは男性のひげ剃り課題に対してフィットしていないということになってしまいます。

ではそのような結論が出た時に、この領域から撤退するべきなのでしょうか?それとも新たに発見された課題に対して、改めて自社の強みを重ねてソリューションを考え直すべきなのでしょうか?

全社戦略や会社のビジョンも踏まえて検討が必要な、すぐには答えが出ないこのようなケースこそ、仮説検証を実施する前からある程度の方針を議論しておくべきだと考えています。本新規事業開発の目的をどこに置くのか?というゴール定義にも立ち戻ることになります。「この初期仮説こそが本新規事業開発の最重点であるから、もし反証されてしまったら、撤退を決断しよう」という条件をステークホルダーと合意しておくことが重要だと考えています。

新規事業は考えすぎてアクションできないより、アクションしながら考えることが重要だと言われています。もちろん簡単なヒアリングやちょっとした調査など、小さなコストで実行できるものはアクションしてしまって問題ないですが、もし大きなコストがかかる仮説検証を思いつきでアクションに移してしまうのはあまりに非効率です。

仮説は外れて当然であり、検証と修正を繰り返すことで精度の高い仮説を見つけていく一連のプロセスこそが仮説検証です。そのプロセスを通して発生しうる想定結果と、それを受けて次に何を検証していくのか、複数の検証を通して結果的にどのような仮説を導き出せるのか、というストーリーを初期に設計しておくことで、プロジェクトの見通しを良くし、効率的に仮説を磨き上げていくことが可能になります。

仮説検証する前に、まずはストーリーを設計することが重要なのです。

Relicではこれまで、新規事業開発やイノベーション創出に関する領域に特化して、大企業〜中堅・中小企業やベンチャー/スタートアップ企業まで幅広く、300社以上のご支援をさせていただいてまいりました。

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