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アニメ制作現場の実情とクラウドファンディング活用のメリットとは

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近年、クラウドファンディングで資金を集めアニメを制作するプロジェクトが増えています。日本だけでなく海外でもその動きは見られ、もはやアニメ制作の手段にクラウドファンディングを用いる動きが一般化されてきているようです。では、そうした傾向が高くなっているのはなぜでしょうか。

今回はアニメ制作現場の実情と、クラウドファンディングを活用するそのメリットについて説明していきます。

この記事はBatteryからの引用です。

アニメ制作現場の実情

世界に誇れる日本文化のひとつであるアニメ。しかし、その裏でアニメーターという職業は、低賃金かつ長時間労働と言われていて、制作サイドが頭を抱える話はたびたび浮上しています。過去にNHKニュースでは、若手のアニメ制作者の平均年収は110万円余りと報じられ、現場によって離職率は9割になるところもあるようです。

その一方で、日本動画協会が発行する「アニメ産業レポート2015」によると、2014年のアニメ関連産業全体の市場規模は1兆6,297億円で、アニメ制作には巨額の資金が必要となっています。また、そのうち日本のアニメ業界市場は制作会社の総売上は1,847億円と約11%だそうです。

■キッズ向けTVアニメ(1億9,500万円)

制作費:1話 1,000万円×12話(1クール)=1億2,000万円
放送枠料:2,500万円×3ヶ月(1クール)=7,500万円
■深夜枠TVアニメ(2億3,400万円)

制作費:1話 2,000万円×12話(1クール)=2億2,400万円
放送費用+宣伝費など(1クール)=1,000万円
上記はキッズ向けTVアニメ、深夜枠TVアニメの平均制作費ですが、これとは別にキャラクターの商品化やグッズ化などの費用がかかり、数億円単位に資金が必要となってきます。また、CGを用いたSFアニメともなれば、別途の費用も当然かかり、1話の制作費は膨大になります。アニメの制作費が高額である反面、アニメーターに渡る給料というのは低額というのが現状だそうです。

アニメ×クラウドファンディング

前述の通り、アニメはたった1話でも1,000万円を超えるほど巨額な制作費がかけられています。制作途中で資金不足に陥ったり、放送後大赤字になったりと、制作費が上手く回らないことが多いようです。そうした状況を少しでも和らげるために、クラウドファンディングを活用して制作費に充てるという方針が浸透しています。

また、それ以外にもアニメ制作にクラウドファンディングを採用する理由はいくつかあり、たとえば、ゲームや漫画が原作のものであれば、既存のユーザー/読者たちがアニメ化を心から望んでいるのか確かめられます。本当にアニメ化を期待していれば、多額の資金調達に成功できますし、もし期待値がそれほど高くなければ、資金は集まりません。クリエイターとファンの足並みが揃った上で、気持ちよく制作に取り組めるのは、クラウドファンディングならでは成果と言えます。

さらに、よりクオリティの高い作品に仕上げ直したり、目標額を大きく上回れば続編や劇場版公開など、より壮大なものに変えていくことが可能です。クラウドファンディングを用いることで、企画の最終ゴールを自由に定めることができるため、制作サイドも比較的自由に作ることができます。

Dies iraeの成功

http://uneedzone.jp/info.php?type=items&id=I0000022

2015年にUNEEDZONE.jpにて実施されたアニメプロジェクト「Dies irae」では、目標額の321%に相当する9,656万円を集めることに成功し、当時のクラウドファンディングで最高額を調達しました。

本作は、ゲームブランド・lightが2007年に発売した「Dies irae -Also sprach Zarathustra-」がもとになっており、ユーザーから高い評価を受け、PSP移植版や外伝が作られ、ゲーム発売から8年が経過した2015年に、クラウドファンディングでアニメ化プロジェクトを始動しました。同アニメはパイロットフィルム版であり、目標額を3,000万円に設定したところ、アニメ化を望んでいた多くの支援者が協力し、最終的に5,188名のサポーターから9,656万円を集める結果となったのです。なお、Dies iraeは2017年10月6日より、TOKYO-MXなどで全17話が放送されました。

本プロジェクトが施行された2015年当時、クラウドファンディング業界ではアニメ専門プラットフォーム「Anipopo」を除き、まだそれほどアニメをテーマに扱ったプロジェクトが普及していませんでしたが、Dies iraeで1億円近くの支援金を集めたことから、アニメ×クラウドファンディングの成功を遂げ、以来クラウドファンディングを活用したアニメプロジェクトは多くなっています。

主なアニメプロジェクト

前述のDies iraeの成功をきに、2016年頃からアニメに特化したプロジェクトは特に注目を浴びるようになり、現在クラウドファンディングを活用してアニメを制作する動きが一般化されています。とりわけ、CAMPFIREやMakuake、Kickstarterといった国内外の大手クラウドファンディングでは、2,000万円以上の支援金を集める以下のような大型プロジェクトにまで発展しているようです。

山本寛オリジナル作品「薄暮」(21,036,500円)https://camp-fire.jp/projects/view/11715
「クドわふたー」劇場アニメ化(78,047,044円)https://camp-fire.jp/projects/view/36314
「少年ハリウッド」第26話を完全版(59,582,000円)https://www.makuake.com/project/
片渕須直監督による「この世界の片隅に」(39,121,920円)https://www.makuake.com/
Little Witch Academia 2($625,518)https://www.kickstarter.com/projects/1311401276/
上記5つのアニメはいずれもクラウドファンディングでプロジェクトが始められる前から、原作ファンやアニメ化に期待する声が多く、すでに注目を集めていた企画です。待望のアニメ化というだけあって、多くの支援者から多額の支援金を集めることに成功し、そのぶんクオリティも高い作品に仕上げられています。また、「薄暮」「クドわふたー」「この世界の片隅に」では、エンドロールにお名前クレジット掲載という、ファンにはたまらないリワードが用意されていました。

まとめ

さて、今回は「アニメ制作現場の実情とクラウドファンディング活用のメリットとは」をテーマに、最新の日本のアニメ事情、アニメとクラウドファンディングの相性、そして最近のアニメプロジェクト事例をいくつか紹介しました。劣悪な労働環境とうたわれている日本のアニメ業界ですが、近年クラウドファンディングを活用して巨額の資金を集め制作に挑んでいるプロジェクトも増えています。

今後クラウドファンディングという新たな調達方法をきっかけに、日本のアニメ産業を明るい業界へと変えていけるのではないでしょうか。