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マイナンバー制に備えて(後編)・・・フルキャストHD坂巻社長に聞く

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フルキャストホールディングスの歴史を振り返ったときに避けて通れないのが、2007年8月の厚生労働省による事業停止命令であろう。禁止業務に派遣をした、というものであり、同社は事業停止を真摯に受け止めて事業再生に取り組んできた。

07年9月期から3期連続で当期純利益が赤字に転落という茨の道も経験したが、事業基盤の徹底的な強化と12年10月の労働者派遣法の改正にともなう事業の抜本的な見直しによって、いま不死鳥のごとく蘇えろうとしている。

法改正は事業転換のチャンス!

「法改正によって主力の日雇い派遣が原則禁止になりました。学生だったり、世帯収入が500万円以上だったりすると例外的に認められるのですが、その時点で当社に登録していたスタッフで要件に該当する人は全体の5割くらいしかいませんでした。クライアントから日雇い派遣のオーダーを頂戴しても、一つひとつ応えていくことは難しい状況だったのです。

そこで日雇い派遣から完全撤退して、31日以上の雇用契約を締結できる場合に限り派遣で対応し、短期ニーズはお客さまにアルバイトとして直接雇用していただく短期人材紹介にシフトし、さらにそのアルバイトの給与計算などの雇用管理代行で、事業の2本柱を組むことを決断しました」DSC_0755

1995年に当時まだ従業員が50名ほどしかいなかった同社に入社し、創業者の平野岳史氏から直接薫陶を受けながら営業の第一線に立ち、14年1月に社長に就任した坂巻一樹氏が語る。

自分たちの手で一時は4000人超の会社に育ててきたという自負があるからなのだろう、会社に対する愛情が人一倍深く、事業停止後は率先してコンプライアンス(法令遵守)の徹底に努めながら、事業再生の一翼を担ってきた。

コンプライアンスの点からみても、日雇い派遣原則禁止へのシフトは自然な流れであり、むしろ事業転換を英断するチャンスと捉えていたようだ。そして、その成果が徐々に現れるようになっている。

「正直にいって切り替えから1年半は、クライアントの理解がなかなか進まずに苦戦しました。13年12月期の当期純利益はかろうじて黒字をキープできるような状態でした。しかし、その13年の年末以降から人手不足感が高まり、短期人材紹介と給与計算代行に対する引き合いが増え始めたのです。いまでは、物流、製造、運輸関係を中心に、1カ月当たり2000社~3000社のクライアントからオーダーをいただき、そのうち4割のクライアントで雇用管理代行のサービスも併せてご利用いただくようになっています」

新規登録 前年比30%以上の伸び

星の数だけある人材サービス会社のなかでも、短期のアルバイト紹介を専業としているのはフルキャストHDだけ。いまでは火急の人繰りでの頼れる存在としての認知度が増し、クライアントのリピート率も60%近くまで高まっている。実はそうしたことができるのも、たとえ「明日、1日だけ」というオーダーであっても、柔軟に対応できる人材を豊富に抱えているからなのだ。

労働生産人口が減少する時代に入り、どの企業も人材の確保で苦しんでいる。しかし、坂巻社長は「昨年だけで17万人の新規登録がありました。今年に入ってからも前年比30%増のペースで伸びていて、20万人の大台の突破は秒読み段階です」という。そして、その人材確保で威力を発揮しているのが、今年3月から試験的に開始している「WEB説明会」だ。スマートフォンで求人検索やWEB登録を30分~60分で済ませ、早ければ翌日には就業できるシステムであり、若い世代の間でアルバイト探しのツールとして注目を集めている。

「もちろん、来店して直接話を聞いたうえで応募したいという人も少なくありません。そこで昨年7月に8年ぶりの新規出店を行って以降、東名阪のエリアを中心に27の新しい拠点を設けてきました。そこでの新規のクライアントから『短期のアルバイトに対応できる人材サービス会社が少なくなってきていたので助かる』といった声もいただき、ニーズの掘り起こしにも手ごたえを感じています。今後も年間5~10店前後の新規出店を進めていく計画です」DSC_0791

そう語る坂巻社長の目は新しい成長市場をしっかり捉えており、その1つが前回紹介したマイナンバー対応の新サービスなのだ。

さらに、今年4月に既存7業種に加えて「惣菜製造」も解禁された外国人技能実習生のサービス提供も検討している。「オートメーション化が進むことも考えられますが、どんな仕事でも人の手を必要とすることがゼロになることはあり得ないでしょう。

短期ニーズのある会社と希望する人のマッチングを促進しながら、さらなる成長のステップを歩んでいきたいと考えています」と坂巻社長は力強く語る。

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