一足先の未来を知る!「BlockChainJam2018」レポート

「BlockChainJam 2018」のサブタイトルは「一足先の未来を知る1日」である。ブロックチェーンという言葉自体は世間一般にも認知されるようになってきた中、言葉は知っているけれど実際にどのようなものか?どう実用されているのか?などがわからない人が多いのも現状である。そこで仮想通貨・ブロックチェーンの基本、それがビジネスとどのように関わっているのか。各企業がどのように活用しているのかを実感するイベントであり、まさに「一足先に未来を知る1日」となった。今回は記者が注目した二企業について取り上げる。
NEMの応用例(ちけっとピアツーピア等)について:木村 優氏、加門 昭平氏
NEMからは2名が登壇し、NEMの基本的な性質と、NEMブロックチェーンを利用した転売防止チケットシステム「ちけっとピアツーピア」の説明があった。特に注目すべきはブロックチェーンを利用したチケットの転売防止システムだろう。実は今回のBlockChainJam 2018のチケット販売のために開発、考案されたのがこの技術だ。
他の事例としても、ライブの際にチケットを購入したことがある人は多いはずだ。大人気なアーティストほど、そのチケットの転売が問題になっている。その問題を解決しようという今回のシステムについて説明がなされた。

今までのチケット販売システムと比較して革新的なのは
⒈「アドレス」をチケットとする革新的発想
⒉ブロックチェーンと経済学的インセンティブを利用
⒊サイト移動なしで購入可能
の3点である。以下、それぞれの特徴を見てみよう。
⒈「アドレス」をチケットとする革新的発想
いままでのチケット販売は非常に非効率であり、転売が横行していた。そこで書き換え不可能なブロックチェーンをチケット管理に使うことを提案した。「アドレス」と呼ばれるランダムな数字が口座番号の役割を果たす。このアドレスをチケットとみなし、チケットとなるアドレスに取引履歴がなけれは無効なチケットとする。実際には「アドレス」をQRコード化して、イベント参加者に送付し、ブロックチェーン上で取引を行う。誰もがQRコードを閲覧可能なため、誰がいつチケットアドレスを無効化したかがわかる。これにより転売が難しくなる。
⒉ブロックチェーンと経済学的インセンティブ(報酬)を利用
転売通報可能な報酬システムを開発。通報すると報酬をもらえるため、転売が行われにくくなる。
⒊サイト移動なしで購入可能
上記のシステムは、チケットとなるQRコードを発行するAPIを提供する。これを利用して、各サイトは自社サイト内に購入機能を埋め込むことができる。
Enigmaの概要とシークレットコントラクトの実演:うどん氏、カナゴールド氏
Enigmaの理念はブロックチェーンに足りない秘匿性を補い、自分のプライバシーを自分で管理する世界を目指している。

近年Facebook、Uberは個人情報流出が大きな問題となった。これらの問題は一箇所にデータまとめるから起こったものである。そこでenigmaは1つの企業に全てのデータをまとめないようにし、スマートコントラクト自体を秘匿する。データを保護したままコントラクトできる「シークレットコントラクト」というシステムを開発。既存のブロックチェーンのセカンドレイヤーとして活躍し、コントラクトの処理を専門に行うことを目指している。

例えば、医療データを扱うとき、個人がどのような病気を今まで経験していて、どのような薬を処方されたか、どこの医師に診察してもらったか。そのような情報が医療関係者内でシェアされれば、医者はより正確な診断を下すことができる。
しかし、個人の医療データというものは非常に大切で、プライバシーが守れなければならない。データの違法な販売を防ぐことが必要である。そこでEnigmaは、ある程度の演算のみを可能にすることで流出の可能性を防ぐ。つまり、生のデータが全て公開されているから転売が起きてしまっているのであるから、一定の演算をしないとデータが見れないように秘匿してしまうのだ。
そうすることで、安全に医療データが医師間でシェアされれば、より的確な診断が可能となり、患者さんにとってもメリットがあるだろう。Enigmaは現在医療だけでなく、様々なプロジェクトと提携して開発を進めている。
まとめ
イベントの最後には登壇者数名によるパネルディスカッションが行われた。ビジネス面でのブロックチェーンの活用や、法規制の各国の現状、そして展望などブロックチェーンが今後どのように社会に適応されているかが語られた。
本記事では主に2社の取り組みについて紹介したが、他にも10社以上のブロックチェーンを活用した企業が登壇していた。どの企業も他分野における課題を解決するために、ブロックチェーンを利用していた。より良い社会を作っていくためにブロックチェーンがどのように活用されていくのか。今後の動向を見守りたい。
インタビュー・執筆
塚田愼一
