ブエノスアイレス市によると、住民の16.2%が生活に必要な物資を購入できる最低限の収入を示す貧困線(poverty line)以下の生活をしており、こうした経済的脆弱性は、一定レベルの製品やサービスを享受するために相対的に高い対価が必要となる「poverty penalty(貧困ペナルティ)」と関連している。この貧困ペナルティにはいくつかの要因はあるものの、主要な要因の一つは不完全な情報にある。情報の欠如がこうした人々の市場への参加を妨げたり、経済的に平均的な階層の人々よりも高い対価を求められ、不利益を被ることにつながっていると言う。こうした課題に対処するため、今回のプロジェクトではブエノスアイレス市の全ての住民に対してブロックチェーン技術を活用したデジタルIDを提供することを目指す。ブロックチェーン技術により、個人の取引履歴を高い安全性と信頼性を担保しながら記録し、かつプライバシーを守り、データを自己管理できるようになる。例えば、銀行口座を持っていない人であっても、デジタルウォレットを利用することにより支払いや送金などの金融サービスを受けることが可能になるとともに、それらの取引履歴を記録することが出来るようになる。4年間に渡るこのプロジェクトは、初めに貧困街として知られるビジャ31地区へ導入し、その後ブエノスアイレスの他の2つの貧困地区に拡大される予定。本プロジェクトの実行責任を担うNGO Bitcoin ArgentinaはIDB LabとAccenture 、IOV Labs の支援を受けている。本覚書への署名により、NECアルゼンチンはメインテクノロジーパートナーとしてデジタルIDソリューションの開発に直接貢献するとともに、公的機関と民間が関わるプロジェクトの統合にも貢献し、地域への提供価値を最大化すると言う。