1. 背景・経緯人口5,337万人(*1)、タイの西側に位置するミャンマー連邦共和国では、系統を通して送配電を行える地域は都市部に限られ、国全体の電化率はおおよそ42%(*2)である。農村部に暮らすおおよそ63%(*3)の国民は、今後10年以上系統電力網が届く見込みがない「無電化地域」で暮らしている。政府は2030年までにすべての国民が電気にアクセスできる環境を整えると発表しており、具体策として、村落単位で独立型ミニグリッドを敷設する計画を推進中である。この方針の下、世界銀行等の融資を活用して国内外の民間企業がミニグリッド事業に参画し始めた。従来のディーゼルやロウソクによる灯と比べ、太陽光を主電源とするミニグリッドは環境や健康への負荷が少なく済み、また電化により村で小規模事業が生まれる等のメリットがもたらされる。一方で、系統電力と比べ高額な電気料金や、ミニグリッド運営者のオペレーションコストの高さなどの課題も生じている状況だ。そこで本プロジェクトは、独立型ミニグリッドをより効率的かつ経済的に運用するためのプラットフォームを構築し、農村部におけるミニグリッド電源、ひいては再生可能エネルギーが継続的に活用されることを目指している。2. 今回の実証実験の内容ブロックチェーン開発企業Chaintopeが開発を主導するプラットフォームは、今後ミニグリッド運営者向けに展開を予定しており、そのパイロットフェーズとして、電気利用者がミニグリッド運営事務所に現金を払いに来る慣習のキャッシュレス化の実証を行う。国営通信会社Myanma Posts and Telecommunicationsの子会社MPT Moneyがモバイルマネーパートナーとして参画し、人々が最寄りのMPT Moneyエージェントの店頭で現金をチャージし、モバイルアプリから電気代を支払う環境の構築に協力。また実証パートナーとして、2019年5月よりバゴ州の600世帯規模の村でミニグリッド運営を行う京セラグループ子会社KCKMとPropel Networkが参画した。ブロックチェーン技術を活用した本プラットフォームは、世帯にひもづくモバイルマネーアカウントの電気料金支払履歴、スマートメータから取得する電力消費量、ミニグリッド施設のパワーコンディショナから取得する発電量の3つを記録する。本実証実験では支払金額と消費量を可視化ならびに相殺を行うことで、盗電や人的ミスの回避を目指す。また、パイロットフェーズ以降は、現在手動で行っている需要と供給の調整作業の簡便化や、環境価値の可視化といった機能拡張に取り組む予定。3. 今後の予定本実証実験は2019年秋に始動予定です。その後展開地域を広げながら次のフェーズに向けた具体的な協議を行なっていくと言う。