地方証券取引所のIPOを巡る動きが活発化しています。各地の新興企業向け市場では、名古屋証券取引所セントレックス市場13社(累計36社)、福岡証券取引所Q-Board市場11社(累計14社)、札幌証券取引所アンビシャス市場5社(累計14社)が上場しています。名証セントレックス市場では昨年11月に日本PCサービスが、実に6年ぶりにIPOしました。また累計11社が市場変更(うち東証一部5社)しており、IPO後も順調に成長する企業も増えています。現在、東海地区はもちろん、北陸地区での企業開拓にも力を入れており、この地域からのIPO企業は確実に増える見通しです。福証Q-Boardでは、2012年にはモバイルクリエイト(東証マザーズ同時上場)、グランディーズ、2013年は東武住販が上場しています。今年3月にIPOしたプラッツ(東証マザーズ同時上場)の株価も堅調に推移しています。2009年から始まった九州IPO挑戦隊は毎年入会企業を募集して累計36社になっています。セカンダリー市場でも、日創プロニティが20億円近くの資金調達を行っています。札証アンビシャスでは今年6月24日にエコノスがIPO予定です。2012年にIPOした北の達人コーポレーションは、1年後に札証本則、2014年には東証二部へステップアップ上場しました。昨年にイーカム・トゥルー(本社札幌市)の東京プロ市場上場が刺激となって道内企業の株式上場に対する関心が高まっています。札証運営のアンビシャスクラブでは毎月セミナー開催を行う事で地元企業のIPOを推進しています。IPO市場では、東証マザーズ上場会社数213社と、東京一極集中が加速しています。東京では積極的な投資活動を行うベンチャーキャピタル(VC)など多くのIPOサポーターがいます。しかし地方の企業と東京のVCでは投資スタンスや資本政策に対する考え方が異なる面があります。山形県鶴岡市から上場したヒューマン・メタボローム・テクノロジーズの菅野社長は、「県や市からの資金援助は重みが違う」と、地元の強くて温かい支援に感謝していました。先日の福山市立大学でのセミナーにおいては、地元上場企業の経営者が設立した「びんごIPO倶楽部」のベンチャー企業へ出資支援活動が紹介され、参加した学生は高い関心を寄せていました。地方企業のIPOにとって、地方証券取引所と地域IPOコミュニティの役割がますます重要になっていくと改めて実感しました。