マーケティング1.0〜4.0の違いまず、マーケティング1.0〜4.0のそれぞれの特徴について言及したいと思います。マーケティング1.0マーケティング1.0とは、一般的に言う「コストを抑えて製品を作り、宣伝する」販売方法を指します。1950年代から1970年代にかけてアメリカで生まれた”製品中心”のマーケティング手法であり、当時重要視されていた「良いものを作り売る」といった考え方に基づいています。かねてからマーケティングの目的は、製品を販売することに限られていました。大量生産および消費に目を向け、とにかくたくさんのモノを作り、大勢の人に製品の魅力を伝えることに重きを置かれていました。当時はモノの種類もさほどなく、商品選択肢が少なかったために、”伝えれば売れる”という理論が成立していたのです。こうしたコストパフォーマンスを誇った製品中心のマーケティング1.0において、成功した事例として知られているのが、アメリカのフォード・モーター社です。当時発売されたフォード・モデルTは、高い完成度に加えて製品を単一車種に絞って発売することにより、費用対効果を実現しました。People can have the Model T in any color – so long as it’s black.人々は好きな色の車を手にできる。それが黒であれば。上記はフォード社の創業者であるヘンリー・フォード氏が残した言葉であり、いかに消費者に対して企業が優位的な状況にあったかが伺えます。マーケティング2.0先の1.0時代とは打って変わって、マーケティング2.0は「消費者志向のマーケティング時代」と言われており、顧客参加型の商品開発や販売をしていくという手法です。1990年代頃から始まったマーケティング2.0は、いかに消費者を満足させ、彼らをヘビーユーザーとしてつなぎとめることができるかにフォーカスを当てられていました。経済の発展や産業の安定に伴い、商品のコモディティ化が起こると、どこの企業においてもほとんど同じような機能や性能を採用するようになり、消費者一人一人が求めるニーズを満たす必要性が高まるようになりました。そのため、各企業が製品やサービスのPR、体験イベントによるファン化の促進などを図るようになり、市場や顧客ターゲットを絞った上で製品やサービスが生み出されるようになったのも、この2.0時代の特徴と言えます。マーケティング3.02.0時代に続き、1990年代から2000年代のマーケティング3.0時代では、「どういう社会を作っていくか」「どのように世界をより良い環境にするか」などをコンセプトに、「価値主導のマーケティング」が誕生しました。インターネットが普及しデジタルに包まれた平成時代において、消費者は自由に情報を扱えるようになり、自身に役立つ”価値”を選べるようになりました。各企業はCSR(corporate social responsibility: 企業の社会的責任)活動に取り組み始め、社会および環境問題の解決と企業活動を結びつけるようになり、その体勢を消費者自らが評価するようになっています。低価格で高品質な製品であったとしても、過酷な労働環境や低賃金下で作られたモノであれば、消費者からの評価は一気に下がり売り上げ低下にもつながります。社会的にも価値の高い企業であることが求められるようになったため、「利益」(Profit)、「人的サービスの質」(People)、そして「地球」(Planet)の3つのPにいかに貢献しているかが重要となってきました。また、ソーシャルメディアが生まれた2000年代以降は、SNSを介して企業と消費者のコミュニケーションも着目されるようになり、消費者の感情的な満足だけではなく、精神的な満足をも目指すことが必要な時代になったともいわれています。マーケティング4.0さて、本記事のテーマにもなっているマーケティング4.0についていよいよ触れていきます。マーケティング4.0で目的としていること。それは端的に言うと「自己実現を目指す」ことです。顧客の自己実現欲に訴えかけるだけでなく、社員一人一人が何をしたいか考え、会社全体で作りたいと思える製品を開発させることを目指しています。心理学者のアブラハム・マズローがかつて唱えた「自己実現理論」の最上位にあたる「自己実現の欲求」を満たすサービスが必要になりました。4.0時代において、宣伝を通じて商品やサービスを購入してくれた消費者の数を測るだけでなく、ブランドのファンになって推奨者となってくれた人の数も測るべきであると言われています。宣伝活動を行うだけでなく、接客やインターネットでの情報発信など、あらゆる消費者接点を見直すべきだと考えられています。ただ宣伝するのではなく、最終的には自ら商品を紹介してくれるユーザーをいかに増やせるかがカギとなり、そこの部分を詰めていくことが重要な時代になっているのです。5Aのフレームワークコトラーは、マーケティング4.0の時代の顧客購買プロセス、いわゆる「カスタマージャーニー」のフレームワークを生み出していました。インターネットの普及から顧客の購買プロセスに見えるフレームワークには、「AIDMA」(Attention, Interest, Desire, Memory, Action)と「AISAS」(Attention, Interest, Search, Action, Share)が活用されています。コトラーが提唱する新しいカスタマージャーニー「5A」のフレームワークは以下の通りです。 AWARE(認識) APPEAL(印象) ASK(調査) ACT(購買) ADVOCATE(推奨)商品やサービスそのものを知ってから、インターネット上の口コミや評判を閲覧してから購入やサービス活用を決めることが増えていますが、現代マーケティングにおいてそこを重要視しなければなりません。商品やサービスを認識する手段や経路、また購入方法も急ピッチで多様化しており、デジタル上での「ADVOCATE」(推奨)が、他のユーザーに結びつく影響を存分に発揮しているのが、現代の特徴となっています。マーケティング4.0の事例についてでは、マーケティング4.0の事例にはどのようなものがあるのでしょうか。レッドブルレッドブルは、FacebookやTwitter、Google+、Instagram、YouTube、Pinterestなど、あらゆるソーシャルメディアを使いながらも、レッドブルという商品の宣伝をあまり積極的に行っていません。アスリートや芸能人を使ったおしゃれな動画制作や、ゲーム・音楽といったイベントのサポートを務め、商品となるレッドブルはそれぞれのコンテンツのオマケにしか使いません。商品そのものはほとんど登場していない一方、「レッドブル、翼をさずける」のキャッチコピーは強く印象に残っています。優れたテクニックやパフォーマンスを魅せるアーティストやアスリートをサポートすることで、そのイメージとレッドブルが関連し、レッドブルを飲むことが自身のあるべき姿になっていくというイメージを与えています。AppleAppleは、国民があっと驚くような革新的な技術を活かした製品をこれまでに多く発表。徹底的に余分な機能を削ぎ落とし、システムやフォルムは顧客の心を反映させ、他社とは一線を画すAppleブランドを確立。このことから、Apple製品を持つことはひとつのステータスともなって、Windowsとあらゆる点で急成長した部分があります。ナイキ世界的に人気のスポーツ製品メーカーであるナイキは、世界のあらゆるトップアスリートたちに製品を試用してもらい、顧客に「カッコいい」「このアスリートが愛用しているなら間違いない」「私も身につけてみたい」という価値観を持たせることに成功しています。同じナイキ製品を使うことで、「あのアスリートに近づける」という自己実現欲を満たすまでになっており、ナイキのブランディングとともに、ユーザーの価値を上げることができました。まとめ-自社に最適なマーケティング戦略を-確かに時代はマーケティング4.0へとシフトしていますが、商品によって最適なマーケティング戦略は変わってきます。今回の記事をきっかけに、自社に最適なマーケティング手法を探してみてはいかがでしょうか?