2 マインド・シェア(顧客の精神的作用とその戦略)
この1~2の内容の情報収集、分析、評価し、市場での自社のポジション決定します。
まず、マーケット・シェアについてですが、著名な経営学者であるマイケル・E・ポーターが、 企業のポジションを3つのタイプに分け、それぞれの戦略理論を確立しました。
マーケット・リーダーの企業がとるべき戦略は、コスト・リーダーシップ戦略です。コスト・リーダーシップ戦略は、競合と価格競争をしても黒字経営を維持できるようにする事を指します。コスト・リーダーシップ戦略をとる際のポイントは、「大規模な投資よりも大量生産体制を敷くこと」、「ペネトレーション・プライシングで規模の経済を働かせること」、この2点が重要になるといいます。
マーケット・チャレンジャーの企業がとるべき戦略は、差別化戦略です。差別化戦略は、業界の中で独自性のある価値や、競合他社よりも高い付加価値を提供することで、差別化をする戦略のことを指します。主な内容としては、「ブランドイメージの差別化」、「製品の技術・品質・デザインの差別化」、「サービスの差別化」などが挙げられます。
マーケット・ニッチャーの企業がとるべき戦略は、集中型戦略です。集中型戦略は、特定の顧客層、商品、地域などの限定されたセグメントに、経営資源を集中する戦略を指します。
マインド・シェアとは、特定のブランドないし企業が、消費者の心の中でどの程度好ましい地位を得ているかを表したものです。知名度シェア、イメージ得点シェアなどが用いられます。
たとえば、「車のメーカーといえば?」という質問に対し、最初に浮かび上がるブランド名が第一起想といいその消費者にとってのマインドシェアNo.1となります。答えに出てくるメーカーや車種以外は、その市場では勝つことができないということです。
ポジショニング戦略は、競合他社との”差別化”を図ることだと考えられています。たしかにそれも正しいことなのですが、正確には差別化ではなく、”独自化”を意識することが重要です。
また、強いポジショニングを創るためには、「細分化された市場でNo.1になりえるものはなにか」を検討することも必要となります。
たとえば、「日本で1番高い山は?」という質問に対し、日本人であればほとんどの人が「富士山」と回答できるでしょう。しかし、日本で2番目に高い山は何かと問われれば、よほどの登山好きかクイズマニアでない限り、答えられる人は少ないでしょう。同様に「初代M-1チャンピオンは?」との質問に、「中川家」と答えられる人はいても、その時の2位は誰かと聞かれると、なかなか答えられない人もいるのではないでしょうか。
人はどの分野においても「No.1」のことに魅力を感じ、2位以下のことはほとんど興味を示さず、あまり記憶に残っていないのが現実です。つまり、顧客に対しても常にNo.1の魅力を感じさせることで、競合他社よりも優位性を保つことが、ビジネスの世界で勝つためには重要なポイントとなってきます。
では、そんなポジショニング戦略について、代表的な3つの成功事例を見てみましょう。
長年、牛丼チェーン業界では、吉野家がトップと言われてきましたが、ポジショニング戦略により、ここ数年の間、すき家が首位をキープしています。その背景とは一体何なのでしょうか。
吉野家のターゲットは、”働く男性”であり、「早く・安く・お腹いっぱい」という価値を提供することで人気を博しました。その一方、すき家は、戦略的に想定したターゲットを、女性層・ファミリー層に設け、トップである吉野家と対等に戦うのではなく、外食市場という大きな枠で捉え、その中で牛丼というポジションをとったのです。
バリエーション豊富な牛丼メニューやテレビCMなどもその戦略の一環となり、ファミレスやファストフードに並ぶ選択肢として、すき家をイメージさせることに成功しました。幅広い顧客層から支持されたことにより、2008年9月、すき家は全国店舗数において吉野家を上回り、牛丼業界のトップに躍り出ることとなりました。
誰もが一度は飲んだことのあるポカリスエット。ポカリスエットのライバルといえば、間違いなくアクエリアスです。販売当初、ポカリスエットは”スポーツ飲料”としてポジションを確立していましたが、「オリンピック公式スポーツ飲料」をうたうアクエリアスには敵いませんでした。
そこで、ポカリスエットはスポーツ飲料から一転し、”健康に良い清涼飲料水”へとリポジショニングしたのです。その結果、健康に良い清涼飲料水というポジショニングを確立し、他の清涼飲料水との差別化を図ることに成功しました。スポーツをしている人はもちろん、健康志向の高い人からの支持も得ることができ、さまざまな視点からニーズを獲得することができたのです。
資生堂が展開しているシーブリーズ。今やボディケア製品の代表格とも言われるほどですが、かつては”20代〜30代の海に行っている男性”をメインターゲットとしていました。しかし、海に行く人口が減少したことから、売上は徐々に低迷することに。
そこで資生堂は、ターゲットを”街中にいる10代の女子高生”に変更し、彼女たちが日常的に使うことのできる製品というポジショニングに変えました。シーブリーズのニーズとターゲットをしっかりと把握し、ポジショニングを築き上げた結果、売上は以前の8倍となったそうです。
今回は「ポジショニング戦略」について解説しました。ポジショニング戦略を行うためには、
これら3点が重要となります。企業やメーカーによって扱う製品やカテゴリなどは全く異なるものであり、一概にひとつの法則で解決するというわけではありません。しかし、すき家やポカリスエット、シーブリーズのように、実際に成功した事例もあり、そこから学べることも多いです。