成功事例まず、テストマーケティングの成功事例について紹介します。ヘルシア緑茶高濃度茶カテキンを豊富に含んだ「ヘルシア緑茶」を生み出した花王は、もともと関東・甲信越地方のコンビニのみで販売を行っていました。ヘルシア緑茶はメタボに悩む中高年ビジネスマンをがターゲット層でしたが、彼らがコンビニを頻繁に利用するというデータがあったのがきっかけです。1年半ほどのテスト期間を設けた結果、コンビニでの売れ行きはとても好調で、花王はその後ヘルシア緑茶を全国的に展開し始めました。トクホのお茶のパイオニアとして、健康志向の中高年を中心に大ヒット。日用雑貨を主力展開する花王ですが、現在でも商品のターゲットに適したテストマーケティングを通じてさまざまなヒット商品を生み出しており、ホームユーステストなどをしばしば行っています。メガマック・クォーターパウンダー日本マクドナルドの前会長である原田泳幸氏は、自身の著書の中で「リサーチで企画するな」と主張しており、マクドナルドで大ヒット商品となった「メガマック」や「クォーターパウンダー」もリサーチではなく、顧客の期待にどう応えていくかという視点によって生まれた商品であると語っています。「どんな商品が欲しいですか?」とアンケートを行うと、若い女性を中心に「低カロリー」「ヘルシー」「オーガニック」といった健康志向の高い回答が挙げられます。しかし、実際にはメガマックやクォーターパウンダーなどを注文するお客さんが多く、ヘルシー重視のハンバーガーを注文する人はあまりいません。すなわち、顧客のニーズ=大ヒット商品という法則は必ずしも通ずるものではなく、お客様の期待にどのような対応をしていくかが、ヒット商品においては重要なようです。セブンゴールドコンビニ業界の王者であるセブンイレブンは、通常よりも高い価格で食パンの「セブンゴールド」ブランドを発売し、見事大ヒットを遂げました。セブンゴールドはアンケート調査などの手法ではなく、顧客の可視化されていないニーズを考慮した上で開発された商品です。セブンゴールドでは顧客の視点に立ちながらも、”顧客の意見”をそのまま聞くということではありません。「コンビニで高級食パンを買いますか?」とアンケートを取ったところで、イエスと答える人はほとんどいないでしょう。「食パンの概念を変えた」と言われるほどの商品となったセブンゴールドは、顧客の意見ではなく、顧客視点から生まれた商品として知られています。失敗事例一方、テストマーケティングの失敗事例にはどのようなものがあるのでしょうか。保湿クリーム国内の某化粧品会社は、「40代女性」に「肌の調子を良くする」という価値を提供しようと試みました。40代女性の肌に合うように保湿成分をたっぷり配合し、高級感あふれるパッケージで30グラム5,000円での販売。アラフォー女性がよく利用するデパートの化粧品売り場で販売を実施し、大ヒット間違いなしの期待が寄せられていました。しかしこの商品、実際にはアットコスメでの評価は低く、リピーターも全く獲得できなかったため、テスト期間をもって発売中止となってしまいました。というのも、実はテレビCMで宣伝を行った際、起用したのはなんと”20代”の人気女優だったのです。CMの宣伝効果により20代女性には一時的に売れたものの、40代用に作られたクリームは20代には濃厚すぎて、「べたつく」「肌に合わない」などの評価を受けました。結果として、20代女性にも40代女性にも人気は出ず、お蔵入りとなる始末に。もしも40代の人気女優をCMに起用していたら、ロングセラー商品となっていたかもしれません。ちょい生先に紹介したセブンゴールドで成功を掴んだセブンイレブンですが、今年の7月に100円で生ビールが飲める「ちょい生」という新たな戦略も起こしています。今や各コンビニにおいて低価格でコーヒーが飲めるように、ワンコインで手軽に生ビールを楽しんでもらおうという新機軸の販売手法を実践。ところが、試験販売を行う前から想像をはるかに上回る反響があり、需要が大きく高まった際の販売体制や品質保持が難しくなる可能性があるという理由から、セブンイレブン本部が販売中止を決定。今後は延期ではなく中止を貫く予定であると表明しました。ほかにも、「飲酒運転を助長する」「店の前に酔っ払いが増える」といった否定的な意見がいくつか挙がり、コンビニとしてのイメージ悪化を避けるためにも、販売を中止したそうです。ちょい生を楽しみにしていた方々からは反感や嘆きの声も寄せられ、期待値が上がった分、中止になってからしばらくはショックを感じる人も多くいました。やり方・方法広告におけるテストマーケティングのやり方は「クリエイティブテスト」「媒体テスト」の2つです。クリエイティブテストクリエイティブテストは、製作物に対しどのような表現で訴求するのが最も魅力的であるか、顧客から高い反応を得ることが出来るかを追求するためのテストです。広告を数種類作成し、メッセージの印象によって、顧客がその商品を受け入れるかどうかを調べるための、顧客との接触条件のテストが、クリエイティブテストとなっています。媒体テスト媒体テストは、媒体への広告出稿量を増やすかどうかを検討するためのテストです。最小実施部数をどこにおくかが重要であり、新聞の折り込みやフリーペーパー、商品梱包などのチラシ広告を使った媒体テストであれば5万部で実施。そこから結果が出れば徐々に部数を拡大していき、10万部、20万部、30万部と伸ばしていきます。一方、新聞、フリーペーパーへの広告の場合、部数を拡大することはできないため、あらかじめ複数の類似媒体を一媒体群として捉え、その中から5〜10万部の媒体を選んで実施します。まとめテストマーケティングは、新事業を軌道に乗せるための”成功への第一歩”と考えている人が多いかと思われます。しかし、そもそもテストマーケティングは成功のためのものではなく、むしろ”失敗のため”に行うテストです。新たなアイデアを創出し、それを形にするために実践する手法であるため、失敗してこそ意味があるという考え方も一理あります。これから新事業を立ち上げる方は、ぜひ失敗を恐れずにテストマーケティングにトライしてみてください。Battery(バッテリー)「テストマーケティングの目的とは?メリットとデメリットを紹介」より転載