どちらもアルファベット3文字の単語で似てる表記であるため、それぞれの持つ言葉の意味を理解しきれていない人が多いのではないかと思います。
では、そんなSAPとERPの違いとは一体何なのでしょうか。早速見ていきましょう。
この記事はBatteryからの転載です。
SAPは、ドイツ中西部ヴァルドルフに本社を置くヨーロッパ最大級のソフトウェア会社・SAP社が出しているパッケージの名称です。システム分析とプログラム開発の意味を持つドイツ語(Systemanalyse und Programmentwicklung)から付けられており、1992年に日本法人であるSAPジャパンが設立され、2010年頃から急成長しています。
SAPはドイツのSAP社が出している企業業務を効率化させるための”ERP”パッケージの名称です。
ERP(英: Enterprise Resource Planning)とは、「企業資源計画」の意味であり、企業全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念のことを指します。このERPを実現するための統合型ソフトウェアを「ERPパッケージ」と呼んでいます。
ERPは従来の基幹業務システムと比較して、受注・販売・生産等の流れがリアルタイムで把握できるという点が特徴となっています。
つまり、ERPパッケージのうちの1つにSAPがあるというわけであり、両者は決して並列な関係性ではありません。野球とスポーツの関係性のような”包含関係”であると言えます。
SAPが行うサポート範囲は、受注・販売管理、在庫管理、生産管理、財務管理といった基幹業務システムから、人事給与、経費精算、固定資産、プロジェクト管理、管理会計、顧客管理、予算管理など、幅広い業務が含まれています。リアルタイムでデータを集められ、常に「現在のヒト・モノ・カネ」を最新の情報で管理することができます。
SAPには、サポートする範囲によって複数のシステムが存在します。それぞれの範囲によって専任のエンジニアがつき、サポート範囲を指定することによって、複数あるシステムの中からどれを導入するかを選ぶことも可能です。
国内には、Oracle EBS(オラクル社)、People Soft Enterprise(オラクル社)、Company(ワークスアプリケーション社)など、SAP以外にもあらゆるERPパッケージがあります。
いずれも企業の業務を効率化させるために必要なパッケージではありますが、その多くは各モジュールにおいて一定の機能を果たすことが重視されているようです。しかし、業務の変動が激しいビジネス社会において、一定の機能だけではいずれ矛盾が生じることでしょう。
ところがSAPは、SAPそのものが業務プロセスとなるように開発されている”製品”であるため、システム内で起こった矛盾や不整合が発生しない仕組みとなっています。この点が、他社が出しているERPパッケージとの大きな違いです。
では、そんなERPパッケージの1つであるSAPのメリットについて見てみましょう。
SAPを導入する上で最も大きなメリットといえば、やはり大幅なコスト削減です。
これまでは各部門ごとにそれぞれの担当を起き、人件費等の費用が発生していましたが、SAPはすでに完成されているパッケージであるため、導入してからはプログラム変更などの大きな開発を行うことなく利用できます。
また、各分野ごとに集計したデータを統合し、リアルタイムで管理できるといった業務効率化によって、人件費削減のみならず時間コストも大幅にカットすることが可能です。
SAPは30種類以上の言語でサポートされており、全世界で親しまれているERPパッケージです。
海外に拠点を構える企業でも業務統一を行うことができ、国際会計基準の対応も各国特有の税制度に対応した機能が付属しているため、海外との連携が非常に取りやすくなっています。
また、全世界で25,000社以上(57%)の高いシェア率を誇っていて、国内でも1,300社以上(49%)のシェアがあり、他のERPパッケージよりも高いシェア率、認知度、信頼度があります。
一方、SAPのデメリットにはどのようなものが挙げられるのでしょうか。
SAPは導入費用がとても高額です。初期費用は1,000万円以上、月額1ユーザーにつき1万9,800円の値がつきます。メリットに挙げた「コスト削減」と相反するものですが、導入のためのライセンス費用や導入作業を行うエンジニアの人件費も発生するため、初期費用はかなり高額です。
SAPを導入するからには、企業としての目的やゴールを定めなければなりません。目的以外にSAPの使用を試みると、プロジェクト統括リーダーのスキル不足や上流工程である要件定義の設計不足などが相まって、システム構築のアプローチのやり方を誤る事態となり得ます。そのため、目的から逸れた使用を行っては、機能が複雑で逆に分かりにくいものと感じてしまうでしょう。
SAPは複数機能を担当する4つのモジュールによって構成されています。
会計モジュールでは、「財務会計」と「管理会計」を担います。
前者では外部会計や制度会計を担当し、他のモジュールで発生した財務データを集約して管理してくれます。表計算ソフトへのデータ入力などの人件費および時間的コストの削減が可能です。
後者では内部会計を担当し、企業全体の調整や最適化などを実施してくれます。
ロジスティックモジュールでは、「販売管理」と「在庫管理」を司ります。
前者はその名の通り販売管理を担当してくれるため、販売データの入力を行うことなく、各部門への引き継ぎも自動で行われるため、業務が圧倒的に効率化されるメリットがあります。
後者は購買管理を行うモジュールです。品目マスタや商品マスタ部門表といった項目は変動があるため、手動で行うと誤入力が発生しやすいですが、在庫管理によってデータ入力をする必要もなくなるため、作業中の誤りは発生しにくくなります。
人事モジュールでは、「人事管理」のみを行います。
採用から退職までを管理し、部署の移動や勤務時間なども一貫して管理してくれます。これらのデータは表計算ソフトで作成されることが多いですが、SAPを用いて自動的にロードし、管理できるため人件費削減が可能です。
その他のモジュールでは、「生産管理」と「プロジェクト管理」と「プラント保全」の3つです。
生産モジュールでは詳細計画とセットにされていることが多く、生産するにあたっての経営資源計画やオーダー日時の最適化などを行い計画します。リソース計画やオーダー日時の計画といった作業を最低限にすることができるため、リードタイムの圧倒的な短縮につながります。
プロジェクト管理では作業項目からプロジェクトを定義し、他のSAPモジュールから統合されたデータをリアルタイムで集計して、実績洗い出します。
プラント保全では機能場所の登録、変更、整備マスタなどを実行します。現行の指図についての計画業務を迅速化させるといったメリットが含まれています。
いかがでしたでしょうか。
改めておさらいすると、SAPはERPパッケージのうちの1つであり、両者は包含関係にあります。
SAPは業務効率化および生産性向上に適したソフトウェアであり、世界シェア率が高いことから信頼性も抜群です。初期費用が高額といったマイナス面も少なからずありますが、さまざまな機能を持ち構え、ありとあらゆるものを管理してくれる優れものであることは間違いありません。
企業の生存率がますます低くなっている昨今において、企業成長を目指し、SAPの導入を視野に入れるのも悪くはないでしょう。