撤退基準は新規事業の目的とセットで考える新規事業のローンチ前に撤退基準を設けるか、事業を推進しながら考えるかは企業により異なると思いますが、撤退基準を全く考えずにとにかく推進し続けるのは得策ではないと、多くの新規事業を支援してきた我々は考えています。新しい挑戦をするのに何故ネガティブなことを考えなければならないのかと思う人もいるかもしれませんが、誰もやった事がない挑戦をするのが新規事業なので、当然失敗のリスクも既存事業と比較し大きくなります。しかしながら、成功させる事や推進させる事はよく考え抜かれていても、何をもって撤退するかは十分検討されずに推進されているケースは意外と多くあります。この記事はBatteryからの引用です。新規事業の成功率本ブログの別の記事でもご紹介しているかもしれませんが、新規事業は想定通りに進まないのが常であり、成功率も低いものです。あくまでRelicとしての経験ですが、10の事業が立ち上がったとして、成功事業として残るのは半分またはそれ以下でしょう。誰もやっていないからこそ新規事業であり、リスクがあるから勝機があるとも言えるのでこれは必然だと思います。つまり成功イメージだけではなく、失敗することも十分視野に入れ総合的に検討、推進する事が必要だと考えています。撤退基準を決めないリスク挑戦的取組みであればある程、過去の経験や指標といったものが活用できないため、引くべき状態にあるのか、リスクを取って進めるべきなのか誰も判断が行えない。例えば、リスクを取っても事業を進めるべき状態にあったとします。そのためには事業推進のための資金が必要になりますが、銀行や株主などの支援者や上層部に対し融資を引き出せるだけの説得力のある説明が行えるでしょうか?投資家や上層部は一般的に可視化されていないリスクを嫌うため、なぜリスクを取ってまで実施する必要があるのかを納得させられなければ追加資金を得る事は難しいでしょう。撤退基準が明確でないと、客観的にその投資をリスクを取ってまで行うべきかの妥当性が判断できず、仮に利益ではなく人材育成やナレッジ蓄積のために行っていた事業だとしても、売上・利益やKPIなどの最も客観視ができる数字だけを見て、難しいと判断されてしまうかもしれません。冷静に客観的な判断ができない可能性が高く、引き際を見失ってしまう。恋は盲目と言いますが、夢中になって取り組んでいる時には自分の置かれている状況を客観的に判断できなくなりがちです。これは新規事業でも同様で、佳境になるタイミングや、その事業に思い入れがあればある程、自分では冷静な判断ができなくなってしまいます。マーケットなどの状況が変化しているにも関わらず、この事業は絶対成功するはずだ、何としても自分が成功させなければと考えるようになると、ネガティブな情報を自然とシャットダウンして都合良く解釈してしまう事があります。これは真面目で熱心な人ほど陥りやすいかもしれません。つまり新規事業に限りませんが、冷静な内に、走り出す前に状況を客観視できる基準を設けておく事が大切です。何を基準に撤退を判断すればいいのかでは具体的に撤退基準をどう決めればよいのでしょうか?それにはまず、やろうとしている新規事業が何を目的としているかを考える事が重要です。通常、新規事業の目的は大きく以下のように分類されます。収益を目的としたもの収益を上げることを目的として立ち上げた新規事業。この場合の基準にはPLやKPIといったものを用い、明確な数値で撤退基準を設ける事で適切な検討が行えるでしょう。定量的に判断しやすく企業や業態での差分が少ないので、他の事業での数値的指標の経験を活かすこともできるでしょう。収益以外を目的としたもの収益ではない経験や育成といったことを目的として立ち上げた新規事業。新規事業の目的が利益でない、例えばナレッジ蓄積といった定量的なPLやKPIで測れない、つまり定性的な場合の評価は、例えばいくつ事業を立ち上げたか?何個ナレッジを蓄積できたか?既存事業へのシナジーはどうか?といった事が評価指標になってくるでしょう。収益以外を目的とした新規事業の場合、収益状況に関係なく継続や増資をする事も多くあります。以前の記事「新規事業の評価、どうすればいいか悩んでいませんか?」でも触れていますが、新規事業の「目的」「規模」「期間」により評価軸が異なってくるため、撤退基準の考え方も変わってきます。「スタートする前から撤退の話?」と多くの方はネガティブに捉えがちですが、事業の目的を明確化することで、将来性が無かったり、本来の目的から逸脱しそうになったりしている状況を早期に検知することが可能です。そのため、撤退基準に該当したらいかなる場合でも撤退というような杓子定規な考えをする必要は無く、新規事業の目的通りに進行しているかを確認するための物差しとして使うべきものです。基準があることで、当初の想定と違う場面に想定しても、その事実を冷静に受け止め判断する事ができるでしょう。ここまでが新規事業のローンチ前に検討すべき撤退基準です。しかし実際に事業を始めると、必ずしも事前に検討した通りにいかないのが新規事業であり、撤退基準についても本記事で紹介した「目的」「規模」「期間」の判断軸だけでは不足してきます。では新規事業のローンチ後の事業推進途中ではどういった撤退判断をすればよいかについては、次回の記事でご説明します。Relicではこれまで、新規事業開発やイノベーション創出に関する領域に特化して、大企業〜中堅・中小企業やベンチャー/スタートアップ企業まで幅広く、300社以上のご支援をさせていただいてまいりました。新規事業開発のコンサルティングやオープンイノベーション、アクセラレーションプログラムやベンチャー/スタートアップ企業への投資・M&A、新規事業創出プログラムや社内ベンチャー制度などに関する無料相談/ディスカッションのご希望や、弊社の各種事業・サービスに関するお問い合わせについては、お気軽にお問い合わせください。