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創造性のために必要な「官僚化」

  • feedy

「1→10」のために必要なこと

新規事業創出に必要な要素として、創造性を挙げる方は多いでしょう。世の中にまだない製品/サービスを考えたり、すでに類似製品/サービスがあっても、自社がよりよいものを提供できる領域を考えるためには当然、創造性は不可欠です。

一方、この記事のタイトルにある「官僚」という言葉を見てどうお感じになったでしょうか?違和感を持った方も多いでしょう。この言葉からは「決まり切ったことを決まりきった手順で実施する、型にはまった業務の進め方」、「事務的/杓子定規な対応」といったネガティブなイメージが浮かんだ方も多いのではないでしょうか。

しかし、創造的な活動をするためには、それに費やす時間を捻出する必要があり、その時間を捻出するためには定常的に発生する業務を体系化し、さらに改善を加えていくことが必要なのです。何もない状態から事業を生み出す「0→1」段階を終えた後、事業を「1→10」に成長させていく段階において特に重要となる「官僚化」、すなわち「業務の体系化」を行い、「暗黙知を形式知化」する方法をご紹介したいと思います。

この記事はBatteryからの引用です。

なぜ「業務の体系化」が必要なのか?

ある業務が発生したとき、担当者は処理方法を考え、必要な情報を収集し、処理をします。しかし実は他の人もかつて同じ業務を同じように一から考え、処理した経験を持っているかもしれません。それぞれが毎回処理方法を考え、情報を収集して処理をすると、業務時間も多く掛かってしまう上、品質も変動してしまいます。

特に繰り返し発生する業務は、手順や判断ルールを明確にし、スムーズにミスなく業務を遂行できるようにしておくことが重要です。手順や判断ルールを明確にすることで、それだけでは処理できない例外業務が明確になり、上司・同僚に相談できるようにもなるのです。

そして、手順や判断ルールを図・文章で表すことで問題点が明確になり、改善が進むのです。

Googleの20%ルール(※)のように勤務時間の一部を創造的な活動に充てる仕掛けがあっても、担当業務を80%の時間内で遂行できなければ成立しません。そのためには、業務の体系化およびそれをベースにした改善が必要と言えるでしょう。
※勤務時間の20%を、従業員が取り組みたいと考える、通常業務以外のプロジェクトに費やすことができるルールです。この取組みによってGoogle AdWordsやGmailのアイデアが生まれたと言われています。

「業務の体系化」とは具体的に何をすることなのか?

実は日本には「業務の体系化」が極めて進んでいる産業があります。それは製造業/ものづくりです。トヨタ生産方式に代表されるように工程の流れを整え、作業を標準化することで、日本の製造業は世界的に見ても高い生産性を達成しています。新規事業においても、この知恵を活かさない手はありません。

代表的な「体系化」の手法として、業務フローと業務手順書の2種類が挙げられます。どの会社でも身近な経費精算の処理を例に、これらの手法を見てみましょう。

業務フロー

複数の関係者で遂行する業務を体系化するには、「業務フロー」を用います。縦軸をその業務の関係者、横軸を時間として、業務の流れを書き出した書類です。

業務手順書

単独で遂行する業務を整理するには、「業務手順書」を用います。業務の手順を書き出し、関連資料やコツ/注意点を書き出した書類です。

どのように「体系化」を進めるのか?

まず、2つの観点から対象業務を選定します。

  • 繰り返し発生する業務
  • 対応できる人が少ない業務

1つ目の繰り返し発生する業務は、チームに新しく入ってきたメンバーにとって、取り組みやすい業務です。よって業務をスムーズに引き継げるように体系化しておくと効果的です。また、新規事業においては、既存のシステムが新規事業に適していないために、毎週手作業でデータ集計/分析業務を行う場合がよく見受けられます。他にも、経営層と事業の方向性を頻繁に討議するといった事情もあるかもしれません。それらの場合は、データの集計/分析業務の手順や、経営層または経営層秘書との連携の手順を体系化しておくとよいでしょう。

ただ、「0→1」のフェーズでは、繰り返し発生する業務は少ないかもしれません。事業が「1→10」の段階になったときに、改めてこの観点で体系化の対象を探してみましょう。

2つ目の対応できる人が少ない業務の体系化はより重要です。その人の業務負荷が高くなったときや、体調不良のときに他の人が応援できるようにしておく必要があります。

次に業務手順の洗い出し方です。

  • 打合せを行い、ヒアリングを通して業務を洗い出す
  • ある人が業務を遂行しているところを観察して業務を洗い出す

いずれにしても、その業務をよく知る人が一人で作り込むのではなく、他者の視点を入れて業務を洗い出すことがポイントです。こうすることで担当者内に埋もれている暗黙知が形式知化されていきます。

そして先述の業務フローや業務手順書に落とし込んでいきます。このときのポイントは、改訂を前提として作成することです。ここでも、新規事業の進め方でよく言われる「リーンな進め方」がお薦めです。「せっかくなら最初からキレイな業務手順書・業務フローを作成したい」という気持ちが湧いてきますが、まずは現状を可視化することが大切です。そして、現状認識を関係者で一致させた後に改善点を抽出し、改善を実行して改訂を進めましょう。

最近は創造性を高めるために、多様性のあるチームを構成することが大切だと言われています。創造的な活動に充てる時間を増やすためだけでなく、多様なメンバーをスムーズに受け入れ、活躍してもらうためにも、健全な「官僚化」を推進しておくことが有効なのです。