販売チャネルを統合すれば、ユーザーがどこでも同じように商品を買うことができるようになります。例えば、店頭で見た商品を、ECサイトから購入し、最寄りの店舗で受け取るといったことも1つとして考えられます。
ユーザーに利便性を提供することでユーザーの満足度を上げ、リピート率や売上の向上を狙う戦略が「オムニチャネル」です。
オムニチャネルとしばしば混同されるのが、「マルチチャネル」と「O2O(Online to Offline)」の2つです。
マルチチャネルは、複数のチャネルを使いユーザーに情報や商品を提供する戦略のことを指します。ECサイト、SNS、DMなどを用いてユーザーへのアプローチを図ります。オムニチャネルとの違いは、それぞれのチャネルが独自に動いており、統合がされていない点にあります。その意味では、マルチチャネルがさらに進歩した形がオムニチャネルと言えるでしょう。
O2Oは、オンラインから店舗(オフライン)に誘導する戦略です。ECサイトを使うユーザーにクーポンを付与して店舗に誘導したり、スマホアプリでポイントを管理して来店を促したりということがあります。一見似た戦略のように思われますが、あらゆる販売チャネルの統合を目的としているオムニチャネルとは、狙いが異なっていると言えます。
それでは、オムニチャネルを成功させるために必要なことを確認してみましょう。
オムニチャネルを実現するためには、全社的な取り組みが必要となります。会社の状況によっては、オムニチャネルを実現するために新たなチャネルを新設することになるかもしれません。
このような状況では、「誰が」「何を」「いつ」対応しなければならないのかが複雑化してしまいます。そのため、ロードマップを作成し状況を整理しながらプロジェクトを進めるとよいでしょう。
会社内で販売チャネルごとに部署が分かれていると、それぞれの部署で囲い込み意識が形成されることがあります。これでは販売チャネル同士で競争が起こってしまい、販売チャネル同士の連携が難しくなってしまいます。
このような場合には、全体を統括するマーケティング部門を新しく設立したり、組織や従業員の意識改革を促したりといった対策を講じることで、部門間の対立が起こらないようにする必要があります。
商品情報、在庫状況、顧客情報、購入履歴、ポイント履歴などあらゆる情報を統合し、店舗担当者もネット運営者も同じ情報を参照できるようにします。そうすることで、接客の質を上げることや、購入のしやすさへとつなげていきます。
しかし、今あるツールやシステムを統合しなければならず、時にはシステム自体を変えたり、新たな顧客管理システムを導入したりということが必要になります。あらゆる状況を考慮に入れ、統合を進める際は慎重に行いましょう。
オムニチャネルを実現するとどのようなサービスが提供できるのでしょうか?ここでは、企業がオムニチャネルを活用した事例をご紹介します。
資生堂のオムニチャネルは、「Beauty&Co.」、「watashi+」、そして百貨店のようなリアル店舗で構成されています。
「Beauty&Co.」は、美や健康に関する情報を提供するサイトであり、直接化粧品の販売を行っているわけではありません。美への意識を高め、市場を拡大させることが狙いのようです。また「watashi+」は、メイクのセルフチェックができるサービスであり、ここではおすすめの商品が購入できます。ビューティーコンサルタントへの相談も可能です。
このように資生堂のオムニチャネル戦略は、「Beauty&Co.」で美意識を高め、「watashi+」で商品のEC販売と店舗への集客を促しています。
アメリカの高級百貨店チェーン、バーニーズNYは、2016年2月にマンハッタンのチェルシーに旗艦店をオープンしましたが、それと同時に、屋内測位システム「iBeacon(アイビーコン)」を搭載した「The Window(ザ・ウィンドウ)」というアプリの提供を開始しました。このアプリの主な特徴は、プッシュ通知と位置情報の使用です。
ユーザーはアプリをダウンロードし、プッシュ通知を許可すると、季節ごとのカタログやデザイナーのインタビュー記事、動画などの情報がプッシュ通知により知らされます。これにより、ユーザーが店に訪れていなくても、バーニーズNYの情報を定期的にユーザーへ届けることが可能になります。
また、アプリで位置情報を設定すると、ユーザーが店舗に入った際にアプリが起動するようになります。来店したユーザーの元には、ウェルカム通知とともにプロモーションの情報などが届き、より詳細な商品情報を手に入れることができます。一方、お店側はユーザーの来店を把握し、iPadを利用しながらユーザーに合わせた接客を行います。
今回は、オムニチャネルについてご紹介しました。
オムニチャネルを実現するとなると多大なコストが必要になりますが、実現できればユーザーの満足度向上へとつなげることができます。
オムニチャネル化を進める際には、自社に与える影響を踏まえつつ、本記事を参考に慎重に進めてみてはいかがでしょうか。