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ベンチャー投資を考える第1回種類株の発行事例

  • feedy

VCファンドには期間があります。
通常10年満期で、それまでに株式を流動化(現金化)する必要があります。
投資先が株式公開できない場合は、発行会社は買い手を探す必要があります。
しかし現実には買い手を見つける事は難しく、
発行会社もVCも満期時の流動化対策は悩ましい問題です。

2010年にVC向けFS(ファイナンス)を実行したs社のケースでは種類株を活用しました。
VC側より発行会社に対する取得請求権の内容として、
取得可能時期と取得価格を明確にしました。
同社の登記簿謄本からポイントを抜粋してご紹介します。

(1)取得可能時期を平成27年12月27日以降
4年後に公開の見通しが立たないと判断すれば、
種類株主は会社に対し種類株の取得を請求できます。
ただし、その時点で配当可能利益がある場合です。
つまり利益剰余金等の利益蓄積があればという事です。

(2)取得価格は種類株1株につき24,000円または純資産価格
VC(種類株主)には、取得請求する場合の価格が
取得時と同じ株価(24,000円)という事は損失リスクを避ける狙いがあります。
また業績の向上による利益が蓄積された場合には、
純資産価格も上昇するのでVC側も利益(利回り)が確保できます。

種類株は、VC側(引受手)にとって権利が登記され権利関係が明確化されます。
また発行内容について柔軟に決められる点も魅力的です。
結果的には発行会社にとっても資金調達の促進に繋がります。
これからはベンチャー投資においても種類株の活用事例が増えていくと思います。