周囲の大反対を押し切って投資したことはありませんでした。
担当者の意見は尊重されますが、従業員は投資決裁権限を持っていません。
ただ一時期、ある一定の条件に基づき、1社当たり30百万円の投資決裁権限を
持たされた事はありました。
その時の投資先からは、損失を出して回収した会社が大半でしたが、
IPOを果たした会社もあります。
長年、ベンチャーキャピタル業に携わった結果、
投資は多数決で決めるものではないとの持論があります。
ただ周囲の意見に晒される事で、自分の見落としに気付くことも多々あります。
周囲に対して十分な理解を得ようと膨大な説明資料を作ったこともありました。
自分の投資判断が他人に対して責任を負うとなると慎重になります。
ベンチャー企業が急成長する原則は
「Simple Focused Story(集中投資)」であると言われます。
しかし、それはベンチャー企業にとっては、倒産リスクを高める事にもなります。
そのリスクを負担するのが、本来のエクイティの役割です。
投資家も、起業家と同じように、事業リスクを負う覚悟がいります。
ファンドスキームによって、起業家も投資家も金融リスクの軽減はできます。
ベンチャーファンドにおけるポートフォリオ戦略は、分散投資によるリスクヘッジが基本でした。
一方で、投資先を分散せずに、1社だけにターゲットを決めて集中投資するファンドも最近は増えています。
デフレの時代においては、得点は難しいので、最小限の失点に抑える戦略になりがちです。
これからのベンチャー投資のポートフォリオ戦略は、
守りの分散投資と、攻めの集中投資とどちらを選択するかがポイントになります。