リンクルージョンは2016年から金融市場が急拡大するミャンマーにおいて小口金融(マイクロファイナンス)機関向けのクラウドサービス「JBRAIN」を提供、金融機関12社と契約しミャンマー市場でトップシェアを誇る。勘定系に加え、顧客管理、業務管理、会計管理、経営管理など金融サービスに必要な機能をクラウドで提供、金融機関は融資規模に応じた月額利用料で利用できる。2016年以来サービスを通じた小口事業融資は累計で約25万件50億円にのぼる。
ミャンマーの小口金融市場は2011年の開放から年率50%前後で急成長を続けている。アクティブ口座数は400万を超えミャンマー最大の利用者を抱える金融セクターとなっている。一方で大半の小口金融機関が紙帳簿での非効率な業務を続けている。当社は今後更なる体制強化によるシェア拡大とともに返済履歴や与信データを蓄積して金融サービスを強化していくと言う。
2)コマース事業:零細商店向けB2Bコマース
昨年から試験的に行っていたミャンマー地方部の零細商店向けB2Bコマース事業を本年5月から本格化した。小口金融融資先の2~3割が零細商店であることから、金融機関と提携し商品調達に課題を抱える商店を支援。食料品や日用品など約300品目を扱い、モバイルアプリや電話で受注、店頭まで毎週定期配送している。
人口5,400万人のミャンマーでは、個人消費の9割が、200万店ともいわれる零細商店を通じて供給されており市場規模は2兆円と推定されるが、1店1店の規模が小さすぎるうえ物流網が未発達でメーカーや卸業者の配送がほとんど存在しない。
当社は地域に密着した金融機関の融資先に対し営業エリアをドミナント展開し、インフラ整備の遅れた農村部において効率的な倉庫運営と配送網を独自で構築している。
事業本格化6ヵ月で契約小売店は150店に急増し、月間流通額の月次成長率(MoM)は平均49%です。2020年3月には400店までサービスを拡大する。
【音声認識技術の活用】
バングラデシュのスタートアップHishabが既に実用化に成功している自動音声認識技術をミャンマー語に対応させたモバイルアプリの実証を行っており、年内に個人商店からの発注を音声自動入力に切替えていく。
ミャンマーではスマホ普及率が9割近いものの、農村部の人々はネットサービスに慣れておらず、文字入力ができない人も多く、音声入力はスマホ利用者をインターネットに繋げる重要な鍵となる。将来的には、この技術を小売店の帳簿管理やフィンテック事業にも活用していく計画である。
【社会的インパクト創出】
金融包摂(すべての人が金融サービスにアクセス可能になること)はSDGs達成の重要な課題の1つとされている。フィンテック事業を通じて地方部への金融サービス拡大に貢献、また与信精度向上と金融サービスの多様化を通じて顧客ニーズにフィットする金融サービスの拡大に貢献していく。
さらにコマース事業を通じて、零細商店の経営を支援することで農村経済の活性化を実現し、農村部の生活習慣や課題に対応する商品やサービスを供給することで、人々の生活の質向上に貢献していく。
【今後の展開】
フィンテック事業ではサービス導入金融機関数を拡大することで、ミャンマー国内で圧倒的トップシェアを確保し、与信履歴や融資先データの集積や電子通貨のゲートウェイ機能開発に取り組んでいく。
コマース事業では、2020年度内に契約店を2,000店舗まで拡大し、販売データや店舗網を活用した消費財メーカーとの協業、取引データを活かした融資サービスの提供、金融サービスと組合わせた家電販売などを展開していく。
【出資元との取り組み】
ミャンマーで人材・教育・コンサルティング事業を展開している株式会社ウィルグループと、地方の顧客ネットワークを活かした職業訓練校への入学者募集、介護分野などで来日を希望する若者への金融支援など、地方の人々の就業機会の拡大を目指していく。株式会社ファイズは日本全国で物流業務受託を展開しており、今後、物流産業黎明期のミャンマーにおいて事業シナジーを模索していくと言う。