後払い決済サービスはEC(電子商取引)サイトの支払い手段のひとつで、顧客は商品到着後にネットプロテクションズから届く請求書により、コンビニエンスストアか銀行、郵便局で現金で支払うことができるため、初めて使うECサイトでも安心して利用できる。
ネットプロテクションズは、2002年より日本で初めて未回収リスク保証型の後払い決済サービス「NP後払い」の提供を開始し、前年比約130%超のスピードで成長を続け、現在では累計利用者数が1億人を突破するまで成長するに至った。商品購入代金を立て替えるリスクを軽減するため与信システムの改善を進めており、2011年より機械学習による与信判定を開始し、判定の精度向上を図ってきた。
今回、従来の機械学習で利用してきた過去の取引実績情報をベースに、キヤノンITS・R&Dセンター先進技術開発部にて独自に開発した「AI開発基盤(*)」環境を用い、ディープラーニング(深層学習)技術を活用した与信審査AI(人工知能)の実証実験を両社共同で展開した。その結果、判定精度が約5倍と大きく改善した。今後、さらなる実証実験を繰り返しながら継続的に検証し、与信システム運用環境への実装を計画している。このほか、過去の膨大な取引実績情報を重視しつつも、審査対象取引の情報自体から得られる傾向などを用いて、貸し倒れリスクを算出するという、新たなアプローチの実証実験を共同で展開している。
言語処理技術を用いた取引明細データ活用分野の共同実証実験
ネットプロテクションズの過去の取引実績情報(取り扱い商品名、加盟店名)をベースに、キヤノンITS・R&Dセンター言語処理技術部の言語処理技術を活用した実証実験を共同で展開している。データクレンジングにより取引明細のテキストデータから分析可能なデータに加工し、顧客が商品を購入する傾向を把握して購入パターンの類似する顧客間の類似度を分析した。その結果、購入パターンの類似する顧客に対し、顧客が興味を持つと推定される商品を推薦できる可能性を見いだした。今後、適切な知識(辞書・教師データ)を構築し、顧客と加盟店に対するマーケティング施策の最適化や、データを活用した新たな価値創出を目指す実証実験を共同で行う。
今回の二つの実証実験で得られた知見を活用し、ネットプロテクションズが注力する「データ分析」実証実験をさらに加速・拡大し、コア事業である「後払い決済事業」の深化、また、あらたな事業への展開を含め、継続検討をしていく。今後、より具体的な実証実験を継続しながら、フィンテック領域の最適なシステム開発、システム構築を検討していく。
※ 「AI開発基盤」は、学習データの作成管理から、モデル管理、学習、精度評価、チューニング等に至るまで、人工知能システムを迅速かつ効率的に開発するための基盤システムである。