「旅館ビジネスは決して費用対効果が高くはないが、それぞれの旅館が築いた文化を私たちが共有し、アッパーな飲食店を作っていかないと厳しくなる。付加価値のある店を作らなければならないと思いながら取り組んでいる。これまで普通にチェーンストアのようになろうかな、そのほうが大人のビジネスなのかな、と思った時代もあった。しかし、考えてみれば非上場のオーナー企業の良さは、尖がった仕事が平気でできること。私自身はもう丸くなっているが(笑)、もう一度、尖がらなければならないのかなという気持ちだ」。
ライフスタイルビジネスへの転換でグループ年間売上高は300億円を超えたが、転換の真意は事業の拡大よりも、むしろ深化に見て取れる。本業の外食ビジネスで重点的に深化させるのは食材である。
外食ビジネスの構成要素は、食材、不動産、金融、企画、店舗デザイン、調理、サービス、CRMなどで、同社は企画と調理に注力してきたが、バランスを取るために食材に重点を置いていく方針だ。「これまでは企画から食材を考えたが、これからは食材から企画を立てる」(中島氏)という。
たとえば、茨城県産のブランド豚「瑞穂のいも豚」を屠場で買い付け始めた。輸入牛の買い付けでは大手の購買力に対抗できなくとも、屠場では入札なので同じ土俵で対抗できる。現在の買い付け数は月約30頭。同社の場合、とんかつ店で使用しない部位でも中華料理店で使用できる利点があるため、買い付け数をさらに増やし、とんかつ店を展開する計画だ。
牛肉では、すでに京都と芝浦の屠場で松阪牛、宮崎牛、京都肉を買い付けているが、新たなルートも開拓した。有機畜産の第一人者で知られる本田廣一氏が運営する興農ファーム(北海道標津郡)と提携し、アンガス牛の一頭買いを始める。豚肉と同様に多業態の利点を活かして、臓物ならビストロのメニューに煮込み料理を加えて訴求力を高めるというように、企画に結びつけている。