「見世物小屋のように設計・デザインした店なら、メンテナンスもしづらくて化け物小屋のようになってしまう。いまさら気がつくもの変だが、つねに変化を研究して、その時代の価値観をともなって利益を出せる店を作るか。マメに取り組むしかない」。
この定理は、次世代の飲食店経営にも実践してほしいのではないか。若手経営者は中島氏を「大御所」と呼ぶが、若手をどう見ているのだろう。
「いまの若い経営者たちは賢明だから、自分の世界観で上質感のある店をきちんと作っていこうとしている。金儲けに走ってハッタリをかまして集客しようとする“飲食企業”と違って、若い経営者たちは堅実だから心配ない」。
そのうえで、勧めるのはオタクになることだという。
「オタク文化はすばらしいと思う。上っ面な業態ではなく、豚でも鳥でも魚でもオタクとして極めればよい。鯖料理の専門店なら、日本中の鯖を取り扱って、季節ごとに一番美味しい鯖を出すとか。そして、鯖に寄生するアニサキスは冷凍で殺虫できるが、うちの店は冷凍せずにこのように手作業で除去していると説明すれば、それだけで集客できると思う」。
外食業界ではベンチマークと称して繁盛店を模倣する方法がつづいているが、模倣である限り、極めることはありえない。だが極めれば、個人店でも局地戦なら大手飲食企業に対抗できる。これは、大手や有名店に対する有力な勝ちパターンである。