減益の改善策として、同社は、エリアマネージャーやスーパーバイザーなどを店長に戻して本部経費を2~3億円圧縮する一方で、新業態「やきとりスタンダード」の展開に入った。
客単価を2000~2500円に設定し、塚田農場の利用頻度の低い20代の顧客層を開拓してゆく。年内に試験店舗の「若どり屋」「やきとりスタンド」を含む9店舗を出店し、FL比率の検証など業態の強化を経て、短期目標は首都圏100店舗、長期目標としては全国300店舗の展開をめざす。先行する焼鳥専門店チェーンに対しては、同社の強みである生販直結モデルで培った商品の供給力や、鶏に関する専門知識によって、優位性を発揮する考えだ。
同時に中国の天津市に2号店をオープンし、中国での店舗展開を本格化させる。
来期業績予想は売上高260億円、経常利益4億円とまだ改善がつづく見通しだ。
こうした足跡を貫いているのが、同社のミッション「食のあるべき姿を追求する」である。このメッセージが生産者と消費者に届いたことが生販直結モデルを確立させたのだろうが、メッセージ力は台頭する経営者の必須要件だ。
これは資質にも起因する。米山氏はこんな見方をしている。
「伸びている外食経営者は人たらしです。人たらしは従業員やお客様に対してコミュニケーション力を発揮しますし、外食経営者のコミュニティでも自然にリーダーシップを取るようになっています。一方で、まじめに一生懸命に経営していても、どこか人間的な魅力に乏しい経営者は伸び悩んでいるように思います」。
人を惹きつけて離さない磁力は、説得力の素である。これは台頭する経営者に不可欠な資質である。
経済ジャーナリスト
小野 貴史