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品質とサービスの原点回帰がもっとも売上増につながる / バッカスの横顔後編株式会社ホイッスル三好
代表取締役社長 三好比呂己

  • feedy

スーツから私服に変えたらアイデアとヒラメキが活発化

取材当日、三好氏はキルティングのジャケットを着用していた。写真掲載を想定すると、経営者の服装として重みに欠けると考えた編集者が「ブレザーはありませんか?」と着替えを求めたところ、三好氏は「いつも、こんな服装です」と笑顔を返してきた。それまではスーツしか着た事が無かったが、ある時、際コーポレーション会長の中島武氏が講演で「飲食店の経営者がスーツを着ているようではダメだ」と説いたのを聞いて、スーツから私服に切り替えたら、アイデアやヒラメキが豊富になったという。

2016年の冬メニューとしてリリースした「豚肉の超コラーゲン麺」は、肉汁の中に麺が浸っているような商品だが、こんな着想で開発された。三好氏が「都内で一番美味しいと思う」と自負する揚州商人の小籠包を餃子に応用して「汁汁(ジュージュー)餃子」としてメニューに加え、さらに肉汁をヒントにして、豚肉のみを使ってスープをつくり上げてラーメンに仕立てた。

「毎年訪問している中国のいろいろな飲食店からインスピレーションを得て、遊び心をもって自由な発想でメニューを開発しています」。

2014年からはサービスの強化を進めている。グローバルダイニング出身のコンサルタントを招き、「マニュアルではなく温かいサービス」(三好氏)の提供に取り組んだのである。三好氏は「QSCA(品質・サービス・清潔感・雰囲気)のなかで、QとSの原点回帰に取り組んだのです。下世話な言い方になってしまいますが、とことんQとSを原点回帰させることが一番儲けにつながります」と明言する。

実際、売上高は毎年1億円前後のペースで増え始め、2016年2月通期に直営・FCの揚州商人ブランド年間売上高は25億8000万円を計上した。同7月から8月にかけて、渋谷センター街店、昭島森タウン店を開店。揚州商人各店舗の月商売り上げの平均は700万を上げ、2017年2月通期には27億2200万円を見込んでいる。

60歳の人生までの勝ち組と80歳の人生までの勝ち組は違う

一方、会社設立時に打ち立てた「社員にとって良い会社」には、どう取り組んでいるのだろうか。

「おもに人間の生き方を教えています」。そう語る三好氏は、自己啓発プログラム「SMI」の創業者で知られるポール・J・マイヤーの影響を受け、SMIの販売代理店もやっている。SMIの販売においては世界1位を7回受賞した実績を持ち、SMI史上もっともSMIを多く販売した人物でもある。SMIの内容をラーメン店経営にも活かして、月に一回、社内でモティベーションのセミナーを開いている。また全店を回りはじめ社長セミナーも始めた。社長セミナーの内容は、やはり生き方に関するもので、60歳を過ぎた三好氏(1955年生まれ)の実体験も話している。たとえば、こんな話である。

「良い大学を出て一流企業に就職して出世することは、60歳までの成功です。私の同年代を見ると、60歳までの成功者で定年退職後も幸せな人はきわめて少なく、80歳まで幸せな人は何人いるでしょうか?うちは一流企業ではないので、社員も60歳までは勝ち組ではないかもしれないけど、80歳までの人生では勝ち組になろうじゃないか。そのためには準備が必要なのです。60歳までしか成功しない人のほとんどは、仕事の目標しか持っていないのです。80歳を超えても成功するためには、六つの分野(精神面・家庭生活面・社会生活面・教養面・健康面・経済面)に目標を持つことなのです。これをポール・J・マイヤーはトータルパースンとよび、若い時からこの六分野に目標を持つことを、最大のポイントとしています。これを実行すると本当に運が良くなって、幸せな人生を送れるようになります」。

いま三好氏は、29歳になる息子の三好一太朗専務に経営のほとんどを委譲している。一太朗氏は物件開発能力にすぐれ、新たな店舗展開を期待できると楽しみにしている。

「ショッピングセンターからの出店要請が増えています。売り上げを確保できる商業環境なので、できるだけ応えていこうと思います。やがて、これまでとは違ったかたちで、楊州商人がクローズアップされるのではないかと見ています」。

インタビュアー

株式会社KSG
眞藤 健一

経済ジャーナリスト
小野 貴史