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ユーザーがブロックチェーンを感じないほど社会に浸透させる:今後はさらなる高速化に取り組み、9月にSNSアプリ「Voice」をローンチ予定 / インタビューEOSLaoMao
CEO シニア・フルスタック・エンジニア Zhao Yu

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EOSは時価総額ランキングで常に10位以内にランクインしている非常に人気のあるプラットフォームだ。イーサリアムに類似した点が多く比較されることが多いが、処理速度の面でイーサリアムよりも圧倒的に速いスピードを有している。また、手数料が無料であることなどから、一部の人からは「Ethereum Killer」とも評される。

今回は500以上あるEOSノードの中で現在2位であるEOSLaoMaoのCEO Zhao Yu氏(写真右)と、CTOであるLemons Wang氏(写真左)にEOSの目指すビジョンや、ブロックチェーンの社会実装について伺った。

dAppsとは何か?:ポイントは透明性と、新たな価値の創出

一般の方にとってdAppsは、decentralized Application(分散型アプリケーション)と直訳されます。分散型アプリケーションはデータがオンチェーンであること、そしてスマートコントラクトが活用されオペレーションが自動であることなどが挙げられます。

dApps自体のロジックもブロックチェーン上に公開されているので、誰でもチェックすることができます。つまり、dAppsの特徴を一言で表すと「透明性」になると思います。透明性が高いということは、もちろんプロセスを見ることが出来ますし、結果を見ることもできます。

また、デジタルアセットという新しい概念が生まれるので、ブロックチェーンを使うことで、今まで価値の交換をできなかったものが交換できるようになります。そこがdAppsの魅力です。

日本の皆さんはdAppsと言えばマイクリプトヒーローズを思い出すでしょう。
このゲームでは、ゲームの中のキャラクターや道具に価値が生まれて、交換できる。そしてその前提にはやはり「透明性」があります。今までのゲームでは価値が生まれなかった部分にdAppsによって価値が生まれているのです。

Zhao Yu氏がブロックチェーンに関わるようになったのは2011年の大学生時代から

私がブロックチェーンに関わった背景を申し上げますと、2011年の時点からBitcoinを存じ上げておりました。当時は大学生で、プログラミングを学んでいるところでした。

皆さんご存知だと思いますが、Bitcoinの背景にはPoWという仕組みが存在します。この技術には、数学、暗号学、インターネット、という人類の英知が詰まっており、とても魅力を感じていました。

大学卒業後に英語の学習サポート会社に入社し、アプリケーション開発を担当していました。そこでエンジニアとして働きながらも、引き続きブロックチェーンの発展を注視していました。

大学時代にブロックチェーンに興味を持ってから、ずっと独自に研究をし続けて、EOSに関わるようになったので、もう8年以上もブロックチェーンに携わっていることになりますね。

EOSの概要:ブロックチェーンに人為的要素を組み込み既存の課題を解決する

EOSは、ブロックチェーン業界の課題であるスピード問題、合意形成の遅さを解決しようと試みているプロジェクトです。

イーサリアムを例にとると、既存の課題として、コミュニティがたくさんあるために、バージョンアップが決まらない、つまり合意形成がとれないケースが多いです。

それに対して、EOSは「DPoS」という新しい概念を開発しております。「DPoS」は人為的な要素を少し導入しているため、中央集権的であると批判されることもありますが、そもそも考え方に違いがあります。

我々は人為的な要素を導入することで、他のパブリックチェーンよりも早く技術的課題を解決し、お客さんが本当に使えるようなパブリックチェーンを作りたいと考えております。ブロックチェーンに中央集権的な要素が入ってはいけないという人もいますが、弊社は中央集権的要素を組み込むのは、ブロックチェーンの流れとしてありだと思っています。

つまり、今までBitcoinからイーサリアムと発展してきて、それでも解決できない問題を解決するために、人為的要素を入れて出来たのがEOSです。

EOSの特徴:①早い②手数料無料③応用力が高い

EOSの強みとしては主に3つ、「①早い②手数料無料③応用力が高い」が挙げられることが多いです。これについてご説明させていただきます。

①早い:独自の承認システム「DPos」と0.5秒のブロック生成

DPoSを使用しているのが速度に大きく影響しております。DPosの「D」は「Delegate」(権限を付与する)の意味です。選挙によって選ばれたノードが承認作業を行っています。この21のノードがブロックプロデューサーと呼ばれており、Bitcoinでいうところのマイナーに当たります。

ブロックプロデューサーはEOSを持っている人からの投票で選ばれます。現在、550ほどのノードが立候補しておりその中から選ぶ形になります。政治の選挙だったら日にちが決まっていますが、EOSは24時間変化しているため非常に流動的です。変動がいつでも発生するので、各ノードは常に競い合って発展していきます。

Bitcoinなどの多くの仮想通貨はマイナーの数が非常に多いです。しかしその分だけ合意形成に時間がかかってしまいます。一方で、EOSはマイナーに相当するブロックプロデューサーが21しかないために承認作業が早くなっています。

また、ブロックの生成時間が早いのも理由として挙げられます。Bitcoinは10分間でブロックを生成しますが、EOSは0.5秒でブロックを生成します。そのために必然的にBitcoinなどと比べてスピードは早いです。

②手数料無料:イーサリアムと違いスムーズな取引を行うために「抵当」の概念を導入

手数料に関しては、イーサリアムと比較して説明したいと思います。

イーサリムは各取引にガスと呼ばれる手数料が必要です。その理由として、パブリックチェーンのなかの資源(CPU,ネット)の総量が決まっていることが挙げられます。
この資源を誰でも使う権利があるのですが、無制限に使いすぎるとネットが止まってしまいます。だからトランザクションごとに「ガス」(手数料)が必要となってくるのです。

イーサリアムと同様にEOSの中の資源の総量は決まっておりますが、大きな違いとして、EOSは不動産などでよく使われる「抵当」という概念を導入しました。

dApps開発業者を例に取ると、まず自分の持っているEOSをロックして、その変わりにCPUとネットを借り、その範囲内で自由に使うことが出来ます。そして、dAppsの開発から撤退してEOSの利用をやめる時に、ロックしたEOSが返ってきます。100EOSを抵当に出して開発を行っていたとしたら、開発を終えて撤退する時に100EOS返ってくる。なので、実質無料となっています。

そうすると、みなさんは一つ疑問が浮かぶと思います。スーパーノードをなぜやるのか?ということです。

マイナーにとってはトランザクションのガスが収入源となっています。EOSは手数料が無料なので、スーパーノードを費用かけてやる意味がないのではないか、という話になってしまうのです。

しかし、この部分も利益が出るようにしっかりと設計されています。EOSの設計としては毎年1%のEOSが蒸発します。その蒸発した分がある計算式で各ノードに分配されるという仕組みをとっています。

いま500以上のノードが存在しますが、上位100個のノードだけが1%を分配してもらう権利を持っています。もちろんノードの中でもトップ21が優先的にもらえるのですが、他のノードもトップ100のなかに入っていればメリットがあり、そこがインセンティブになっています。

③応用力が高い:CTOのダニエル・ラリマー氏と、開発力の高いプロダクトチームの存在

応用力が高い理由として、開発力が高いことが挙げられます。

EOSを開発したBlock.oneのコアメンバーに、CTOであるダニエル・ラリマーという人が存在します。彼はブロックチェーン業界の最高峰ともうたわれる人です。Bitcoinの仕組みを提唱したサトシナカモトがメールで質問に回答していた時期がありますが、ダニエル・ラリマーは最後までサトシナカモトとメールで争った人です。

天才と呼ばれた彼は今まで、BitSharesSteemitというプロジェクトを立ち上げてきました。EOSは彼の三番目のプロジェクトになります。そのため、前回の二つのプロジェクトの反省点を修正したプロジェクトがEOSであり、非常に応用が効くものになっています。

去年6月にEOSがメインネットを開設したのですが、すでに50回もバージョナップしています。他のブロックチェーンと比べると、非常に高い頻度でバージョンアップしておりまして、これもBlock.oneの開発力を示していると思います。

EOSLaoMaoの開発した認証アプリ:EOS Authenticator APP

EOSLaoMaoは EOS Authenticator APP というアプリを開発しました。このアプリはユーザーがサインインしてトランザクションを承認できる機能を持っています。

一番の特徴は、このアプリを使えばプライベートキーを出さなくていいことです。

お客さんのプライベートキーが手元に残り、他のウオレット業者にアカウントの情報だけ提供されています。だからウォレット業者に万が一があっても、資産は安全というわけです。

将来的に、いろんなdAppsが発展する中で、アプリごとにログイン情報を作るのではなく、Facebook、Twitterすべてのログインが必要なものに、この一個のアプリでログインできるようにしていきたいです。

現在はGoogleアカウントを使って様々なサービスにログインすることも可能ですが、そもそもグーグルアカウントはグーグルのサーバーに保存されています。つまりGoogleがハッキングされたら大事な情報も全て流出してしまうことになります。

大事な情報がユーザーの手元にあり、お客様しかわからない。だからこそ私たちの開発したEOS Authenticator APP は情報を安全に保管することができるのです。

EOSの今後の展望とは?:さらに早く、使えるブロックチェーンを目指していく

繰り返しですが、EOSの最大の特徴はスピードが早いということです。

ここでご紹介したいのですが、EOSのメインチェーンはスピードが12倍になる実験が最終テスト段階にあります。また、EOSはブロックの確認に現在3分間かかっているのですが、この確認時間も、中国のあるチームの提案で実験的に3秒まで短縮することができました。

この2つの発展によって他のパブリックチェーンと比較して、スピードはさらに早くなっていきます。

加えて、現在流行りのクロスチェーンについても進捗があります。

EOSと他のチェーンをつなぐことも大切ですが、現在EOSをベースにしたチェーンもたくさん作られています。EOSのメインチェーンがあって、その上に姉妹チェーンがあり、それらの間にクロスチェーンができる。EOSがクロスチェーンを上手く作れば、非常に広大なネットワークになっていくだろうと思います。

また、本社であるブロックワンがワシントンDCで「Voice」というSNSを発表しました。これは非中央集権的なFacebook、Twitterであり、9月にローンチされます。

実はこのVoiceのためにEOSを早くする必要があったのです。仮にですが、世界でVoiceがヒットして、何億人ものユーザーがこのSNSを利用したら、EOSにとって大きな発展になるでしょう。

最後に、EOSの考えるブロックチェーンの社会実装というのは「ユーザーはブロックチェーンを感じない」というものです。

業界の人の中にはブロックチェーンを重要視する人もいました。しかし、ユーザーからすればブロックチェーンがどうかはあまり重要ではなく、体験だけが大切です。

ゲームをプレイした人が「このゲームは本当にブロックチェーンだったの?」と驚くようになればいいなと思っておりますし、そのような社会を目指してより一層努力して参ります。

インタビュー・記事執筆・写真撮影
塚田愼一