私はモスクワ大学、コペンハーゲンビジネススクール、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの3つの大学の学位を持っています。
人生の大部分をロンドンBBCというマスメディアで社内プロデューサーとして務めました。ロシアの主要ニュースWebサイトの特別プロジェクトの責任者であり、ロシアで最も人気のある朝のテレビ番組のエグゼクティブプロデューサーでした。また、かなりの数の小さなメディアプロジェクトに携わり、ヨーロッパ北部のスカンディナヴィア半島周辺の様々なマスメディアでフリーランスとして務めました。
現在、私はさまざまな国でブロックチェーン関連のトレーニングコースも行っています(昨年、ロシア、デンマーク、モンゴル、およびタイにおいて実施)。ブロックチェーンを実装したい企業から相談を受け、さまざまな会議でブロックチェーンの実用例を紹介します。
具体的には、弁護士向けの会議でデジタル資産のグローバルエコシステムに関するレポートを発表し、人事向けのウェビナーでブロックチェーンとAIとの関係を紹介。9月にソーラー産業でのブロックチェーンの使用を主要なソーラーパネルの生産者に紹介します。
また、最近では石油とガスのトークン化に関するPhDの研究を開始しました。これは大規模なプロジェクトです。
現在運営しているメディアDigital Asset Liveはブロックチェーン、トークン化、デジタル資産に携わる人々に焦点を当てて発信を続けています。「IT」と「マスメディア」という個人的な2つの関心事を兼ね備えているため、私にとって最高の仕事です。
おかげさまで読者は日々増えており、LinkedIn、Facebook、Twitter、Instagramを経由して読者からのコメントも数多く頂戴しております。
Q2:ブロックチェーン分野に従事し始めた理由を教えてください。
A2:
私の両親はソフトウェア開発者であり、常にITに興味がありました。 そのため、コペンハーゲンITスクールでデータベースについて研究し、関連するさまざまなITコースを受講しました。
ブロックチェーンに興味を持ったとき、ブロックチェーン開発のコースも受講しました。 開発者になることはありませんが、ブロックチェーンの新しいアプリケーションに常に興味があります。
ブロックチェーンについて私に最初に話してくれたのは、イーサリアムの開発者たちでした。 投資としての仮想通貨についてだけでなく、非常に大きな世界でブロックチェーンがどのように利用されるかについても教えてくれたことは私にとって幸運な出来事でした。
後にトークン化の概念を学び、非常に興味を持ちました。なぜなら、それが新しい世界の扉を開くからです。
Q3:なぜメディアを運営することを決めたのですか?また、その目的は何ですか?
A3:
何かを始めるとき、あなたはまず「自分のため」に物事を始めるでしょう。 私にとって、Digital Asset Liveの最初の目的は、ブロックチェーン界隈で何が起こっているかを自分が詳細に知ることでした。
毎朝関連するキーワードを含む100以上のニュース記事を読みました。開発中の興味深い話を探し、インタビューを行い、分析するトピックを探します。
現在、私の興味関心が、Digital Asset Liveを読んでいる多くの人々に共有されていることを非常に嬉しく思います。
独自のコンテンツは、マスメディアにとって最も重要です。 かなりの数のブロックチェーンメディアが互いにコピーアンドペーストしており、これは残念なことです。しかし、業界の発展に従ってコピペは減少していくでしょう。
私にとって、ブロックチェーンの最も興味深いテーマは、技術そのものではなく、新しい革新的なアイデアを思いつく人々、そしてアイデア実装し、ビジネスに分散型台帳技術を導入する人々です。
これが、Digital Asset Liveの大部分をインタビューが占める理由です。
私は非常に幸運であり、私がインタビューを依頼したほとんどすべての人がインタビューを許可してくれました。過去半年間に、主要なトークン化プラットフォームのCEO(tZERO、Tokeny、Templum、Polymath)やIBM、Intel、Volvoのブロックチェーンを担当する企業幹部、そして素晴らしいブロックチェーンプロジェクトの創設者たち(医療から銀行業、海洋考古学から宇宙探査まで)にインタビューをしてきました。近々、これらのインタビューを一冊の本にまとめて出版する予定です。
Digital Asset Liveの重要な要素は「分析」です。 トレンド、比較、ブロックチェーンが太陽エネルギー、スマートフォン、農業、サプライチェーンでどのように使用されているかをレビューします。もう一つの重要な要素は、専門家によるコメントです。主要なコメンテーターの1人は東京に住んでおり、日本のスタートアップCosmologyとBitgritで働いています。
今後2年以内に、Digital Asset Liveをしっかりとしたマスメディア発展させ、小規模な制作チームを率いて、ストリーミング、分析など、あらゆる形式で機能するようにしたいと考えています。
数百万ユーロの市場価値を持つマスメディアに育て上げることを目指しており、そのために、ここ2年間で240万ユーロ相当のベンチャー投資を探しています。そのお金でチームを雇い、会社の運営をしていく予定です。
また新しいアイデアもあります。 ブロックチェーンに関わるすべての人は、ブロックチェーン開発者を見つけるのがどれほど難しいかご存知でしょう。一方、私は、企業の求人情報にどれほどの人が応募しているかを知っています。 従って、企業の求人情報とブロックチェーンの分野で仕事を探している人の求職情報を含む人事セクションを立ち上げようと考えています。
Q4:STOについてどのような点に注目されていますか?
A4:
STO(セキュリティトークンオファリング)は、新しい「機会」と「形式」を提供します。
より詳しくは、以下の3点に絞ってお話させていただきます
STOを「貧困層のためのIPO」と呼ぶ人もいます。 もちろんキャッチフレーズですが、実際にIPOは資本のある企業にしか当てはまりません。一方で、STOははるかに安価に資金調達を実施できます。 参入障壁はずっと低いのです。
STOを使用すると、会社全体ではなく、株式の一部のみ、または一部のプロジェクトだけをトークン化することができます。従って、STOはビジネスオーナーにとって新しい柔軟性を意味します。本質的には、価値を持つほとんど全てのものをトークン化することが可能です。
多くの人は、トークン化の結果としての流動性について言及します。 彼らは不動産を例に取る傾向があり、数百人が建物の一部を購入してから、合計額に相当する建物を見つける方が簡単だと言います(フラクショナル・オーナーシップ)。
STOの欠点は、それが若い市場であり、まったく新しい分野であるということです。
セキュリティトークンは関連する規制に準拠する必要があるため、ICOほどではないにせよ、詐欺の可能性が存在することを個人的に恐れています。実際、コンプライアンスをセキュリティトークンにコーディングすることはできるかもしれませんが、STOのコンプライアンスは複雑です。
もう1つの欠点は、トークンの発行と管理にプラットフォームが必要なことです。独自のプラットフォームを作ることは難しく、トークン発行者とトークン所有者の間に新しい仲介者が現れます。
加えて、現在は相互運用性の問題があり、ほとんどのブロックチェーンは「互いにコミュニケーション」を行いません。従って、トークンのプラットフォームを一度選択すると、後で別のプラットフォームに変更することは困難です。
私見ですが、別の欠点としてフィンテック領域のセキュリティトークンが、企業金融とB2C金融の両方で非人間化とロボット化の傾向を見せていることが懸念されます。 人々がロボットではなく人間を好むこと、そしてロボットがどれだけ進歩したかは問題でないことはすでに明らかでしょう。
トークン化されたアセットは迅速に決済されます。 また、ブロックチェーンベースの構造は、はるかに柔軟性が高い傾向があります。 トークンのウォレットへの資金移動は数分以内に完了します。 トークン化された株式は、特に海外の取引所で取引する場合、現在ほど多くの制限や仲介者なしで購入できます。
ただし、最も重要なのは、新しいクラスの金融資産、トークン化された先物、負債、定期預金などの分野です。これらは、全く新しい可能性を秘めています。
セキュリティトークンの発行者は、新しい投資家を金融市場に参入することを望んでいます。例えば、ベンチャーファンドのトークン化は、一般人向けに投資の門戸を開きます。
Blockstateによる最近の調査では、世界のSTO市場で最も活発なのはフィンテック領域です。次に不動産が続きます。 これらの2つの領域はグローバルに広がり、他の領域はローカルに広がるでしょう。多くの企業は将来的に、STOを利用して資金を調達し、事業の開発および拡大を行うでしょう。 また、沈没船などの水中遺物のトークン化というエキゾチックなプロジェクトは、許可されていれば、ローカルに発展するでしょう。
今後、STO市場は量だけでなく品質もこれから成長すると考えています。 これは、相互運用性と1つのプラットフォームへの依存の問題が解決されることを意味します。
Q5:トークン化に関して興味を持っている分野はありますか?
A5:
私はエネルギー部門でのトークン化に興味があり、現在、博士号を取得しています。
エネルギー部門はSTOがまだ開始されていない巨大な領域です。 電力のトークン化、石油およびガスのトークン化は、これらの市場が導入する新たなビジネス様式として将来的に普及するでしょう
エネルギーのトークン化は今では想像し難いような可能性を開きます。 現在、石油とガスのサプライチェーンは仲買人であふれており、サプライチェーンの合理化は供給コストを大幅に削減します。 また、セキュリティトークンは、マージナル油田、つまり大企業が採掘を行っていない、採算がとれるか難しい小規模な場所で石油を抽出する権利の資金調達に使用される場合があります。
電力の生産においては、ブロックチェーンをスマートシティのプロジェクトと連携する可能性があり、その結果、消費者にとって損失が減り、効率と柔軟性も上がり、価格が下がることが期待されます。
再生可能エネルギーでは、ブロックチェーンの導入とトークン化により、消費者が互いに余剰電力を売買できるようになることが見込まれます。
Q6:ブロックチェーンは従来の金融にどのような影響を与えると思われますか?
A6:
以下の変化が予想されています:
Q7:今後、アジア市場、特に日本市場が注目されると思われますか?
A7:
トークン化に関わるすべての人が 日本市場に参入することを夢見ています。 日本には非常に強力なベンチャーキャピタルコミュニティがあり、多くの国際会議の場で紹介されています。 また、日本は非常に洗練された管理システムを開発しており、この国はAIとブロックチェーン技術の両方に優れています。
おそらく最も価値のある日本の資産は、先見の明のある人、アイデアを実行する人です。従って、日本の会社が発行するセキュリティトークンは、日本の法律に準拠している場合、間違いなく注目を集めます。なぜならセキュリティトークンの投資家はトークンではなく原資産に注目するからです。
現在、Digital Asset Liveの資金調達を検討していますが、私もまた日本のベンチャーファンド、市場には非常に大きな期待をしております。
インタビュー
翻訳・記事執筆
塚田愼一