また、日本農業は現地に駐在員を派遣しており、小売店への営業を直接行っていると言う。今までは輸出をして、現地の会社が販売するという形式をとっていた。しかし既存の方法では、他の国の果物と差別化されない形で販売されていたため、販売の仕方を日本から指導することにしたと言う。
ブランディングの面では「ESSENCE(エッセンス)」というブランドを立ち上げている。今までの日本には「Dole社」のようなブランドが存在していなかった。日本の農産物の中に目立ったブランドがないなかで、「エッセンス」というブランドを育て上げ、世界に輸出したいと考えているそうだ。
すでに東南アジアの各国にりんごの輸出事業を行っている。日本産のりんごがシェアナンバーワンであるタイでは、500店舗以上で「エッセンス」ブランドを展開。インドネシアでは日本産のりんごのシェアの92%を獲得するなど、着実にマーケットを拡大している。
もう1つの課題は「知財の流出」である。
現在、世界で一番生産されているりんごは「ふじりんご」だそうだ。しかし、もとを辿れば青森で開発されたりんごである。「ふじりんご」のライセンスを保護していなかったため、世界中で無許可で栽培されているのが現状だ。他にも、日本には世界でも有数の品種が多く存在しており、仮に知財として登録していれば、年間数千億円に及ぶ損失は防げたと言う。
そこで同社は日本の品種を守るためのソリューションを展開。具体的には農家向けの知財保護支援を行うと同時に、海外の信頼できる農家にライセンシングを行うというものだ。
国内の品種を海外に運び、海外の農家の方に生産して頂き、それを同社の「エッセンス」のブランドのもとで販売。その利益を海外農家に届けて、ロイヤリティを日本の農家に運ぶ仕組みだ。
調達資金の用途としては主に以下の2点を考えているという。
マーケティングの一環として、まずは「りんご」で日本一を目指すという。具体的には、効率的な栽培方法の周知や、選果場の買収、東南アジアでのブランディングの強化などだ。加えてりんごだけでなく、さつまいもなど他の品種の輸出も着手していく。
最後に代表取締役社長の内藤氏は今後の展望について以下のように述べた。
「現在のターゲット市場は東南アジアがメインですが、今後は中国やインドといった巨大市場に入り込んでいきたいと考えています。また、今の主力はリンゴですが、最終的には果物に限らず複数品目を、輸出できるものは輸出で取扱い、できないものは品種の輸出を通して海外へ広めていく予定です。4年後には売上100億円を達成し、『日本の農業で、世界を驚かす』というミッションを日本の農業の未来のために取り組んで参ります。」