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テレビCMや広告をDX化する次世代型プラットフォームの可能性 / 広告の未来を語るレヴィアス株式会社 代表取締役 田中慶子
株式会社CARTA HOLDINGS 代表取締役会長 宇佐美進典

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DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を聞いたことがあるだろうか。全てのモノがインターネットに繋がり、お金はデジタルに変化し、人工知能が社会インフラを支える、そんなデジタル化された時代が到来することを予期する概念だ。

全てのものがデジタル化されるという潮流は、年々強くなっている。VentureTimesは、様々なベンチャー企業の代表者を取材している中で、このDXの波を強く感じてきた。どの企業もDXを念頭におき、近い未来に対してどのような事業の在り方があるのか、模索を続けている。
そこで弊社は、DXについて、各業界をリードする企業がどのような取り組みを行っているのかを取材し、未来へ向けての考察として読者にお届けする。

本企画では、DXの最前線に立つゲストとして、AI、FinTech、ブロックチェーンなどの先進技術の開発を行うレヴィアス株式会社代表取締役の田中慶子氏を招き、様々な領域でトップを走る企業の代表者様と今後のデジタル化社会について語り合う。

今回は「NEW JOURNEY , NEW STANDARD」を掲げ、株式会社VOYAGE GROUPと株式会社サイバー・コミュニケーションズ(以下「CCI」)が経営統合して誕生した株式会社CARTA HOLDINGSの代表取締役会長である宇佐美進典氏との対談を実現。

同社が2020年5月27日に発表した、テレビCMを簡単にネットで発注・制作・効果検証できる次世代型テレビマーケティングプラットフォーム「PORTO tv」の話を主軸に、テレビCMや広告のDX化への取り組みと、その難しさについてお話を伺った。

株式会社CARTA HOLDINGS:ネット広告の次世代プラットフォーム事業を展開

記者:
本日はよろしくお願いします。早速ですが、株式会社CARTA HOLDINGS様の事業内容を教えていただけますでしょうか。

CARTA HOLDINGS 宇佐美代表:
よろしくお願いします。CARTA HOLDINGSは昨年の1月に発足した新しい会社です。VOYAGE GROUPとCCIの二社が経営統合された持株会社になっています。
事業としては、主に3つに分類していまして、メディアレップとして広告の販売及びソリューションを提供する「パートナーセールス事業」と、自社商材を中心にしたアドプラットフォームの開発及び提供を行う「アドプラットフォーム事業」、そして「コンシューマー事業」として、自社メディアの企画・運営やゲーム事業、EC事業などを行っています。

レヴィアス株式会社:ブロックチェーンとAIでより便利な世界を作る

記者:
ありがとうございます。続いてレヴィアス株式会社様の事業内容を教えていただけますでしょうか。

レヴィアス 田中代表:
レヴィアス株式会社と申します。弊社は2018年に設立された3年目のスタートアップ企業で、IT企業としてブロックチェーンとAIの技術を、社会に今あるサービスと融合させることによって、ユーザー様がより便利になる世界を目指して技術開発を進めております。

互いの得意分野を活かし合うための経営統合

記者:
ありがとうございます。分野は違えど両社様はデジタル化に向けて様々な取り組みをされていると感じました。
CCI様とVOYAGE GROUP様からCARTA HOLDINGS様が成る中で、ホールディングカンパニーとしての貴社の事業目的はどのようなものでしょうか。

CARTA HOLDINGS 宇佐美代表:
もともとVOYAGE GROUPは1999年に設立されたネットベンチャーです。自分たちでメディア、広告配信プラットフォームを作り、それをメディア様や広告主様に提供してきました。一般的にはパフォーマンスを追求する広告主様が多い中で、ブランドを重視する広告主様もいらっしゃり、後者へのアプローチが課題となっていました。

CCIは96年に株式会社電通とソフトバンクグループ株式会社の合弁として設立された会社です。ヤフー株式会社の運営する「Yahoo! JAPAN」の広告枠をいかに扱うのかが設立当時の目的としてありました。
設立から20年以上、ネットメディアの広告をいかにブランド向けの広告主さんに販売していくのかを重点的に事業展開してきましが、広告へのテクノロジーの活用や、パフォーマンスの部分をカバーし切れていないところがありました。

そこでパフォーマンス広告に強く、しかしブランド広告領域に入り込めていないVOYAGE GROUPと、ブランド向けの広告主にアプローチできているが、テクノロジーを強化したいCCIが経営統合することで、ブランド向けの広告もパフォーマンス重視の広告もどちらにも対応できて、両者の広告主様をカバーできるようなプラットフォームを一緒に作っていきましょう、と一致したことが発端になります。

テレビCMを身近にする革新的なプラットフォーム:「PORTO tv」

記者:
CARTA HOLDINGS様はテレビCMをネット上で管理できるプラットフォームを開発されたとお聞きしました。こちらについて教えていただけますか。

CARTA HOLDINGS 宇佐美代表:
CARTA HOLDINGSは電通が50%以上の株を持つ電通グループの一社となっています。電通グループとネット広告をどのように伸ばしていくのかだけではなく、既存のマス広告のDX化も一緒に取り組むということで資本業務提携を進めてきました。その中でテレビCMのDX化をいかに進めていくのか1年半ほど協議を進めており、今回「PORTO tv」という形でお披露目することができました。

このサービスはネットから簡単にテレビCMをプランニング、シュミレーションして買付することができるサービスになります。インターネットの世界ではプラットフォームを通じて広告を配信したり購入したりできますが、これと同様にテレビCMでも実際の広告配信ができるようにしていこうという取り組みです。

記者:
このようなプラットフォームは今まで業界ではなかったのでしょうか。

CARTA HOLDINGS 宇佐美代表:
もちろんスタートアップの中でも似た取り組みをしている会社は出てきていますが、弊社の強みは広告業界大手の電通と共同でDX化を進めたところです。

レヴィアス 田中代表:
テレビCMをプラットフォーム化することによって、それを使う広告主様のメリットはどのようなものになるのでしょうか。

CARTA HOLDINGS 宇佐美代表:
そうですね、いくつかの課題があると思っていまして、まずテレビCMを配信するというのは気持ち的にハードルが高くないですか。

レヴィアス 田中代表:
すごく高いです!CMを出したいけど、果たして出して良いものなのかと思ってしまいます。

CARTA HOLDINGS 宇佐美代表:
そうなのです。どのようにすればテレビCMを出すことができるのか、という障壁があります。金額に関してもある程度の金額感がないとCMを出しにくいという現状が実際にあります。

もう一つの課題が、テレビCMを出してどれだけ効果があったのか判断が難しいことです。テレビCMを出しても、テレビ局からフィードバックが来るのに時間かかるので、PDCAを回そうとしてもタイムラグが発生してしまいます。

今回の新しいプラットフォームでは、気持ち的なハードルを下げるため、このエリアのこのターゲットに、これくらいの金額でテレビCMを出せますよということをシミュレーションできるようにしています。

レヴィアス社のDX化への取り組み

記者:
CARTA HOLDINGS様はテレビ広告という一大産業のDX化に取り組んでおられる一方で、レヴィアス様は金融という伝統的な産業を日本からDX化しようとされています。金融分野のDX化に向けたレヴィアス様の取り組みを教えていただけますか。

レヴィアス 田中代表:
弊社は今までアナログだったものを電子化して、今までよりも手続き等を簡素化して便利にしたいという世界観を持っています。
もう一つ重要視しているのは政府が未来社会に向けた提言で最重要課題として挙げている「信頼性のある自由なデータ流通」です。単にデータが移転するだけでなく、現実社会のルールに適応した形で安心安全なデータ管理を行い、そこに自由度が生まれると経済圏が活性化しますし、社会が豊かになると思っています。

その中で金融は従来から経済の基盤であると同時に、我が国の金融事情は海外と多少異なる領域があります。投資家保護の観点から、なかなか簡単に権利の移転ができません。そのようなアナログのアプローチに対して、データガバナンスという領域からしっかり社会に適応した仕組みを作り提供することで、未来社会の歯車の一部になりたいと考えています。

既存の業界をDX化することの課題

記者:
ありがとうございます。宇佐美様はテレビ業界のDX化を促進する中で感じる課題はございますか。

CARTA HOLDINGS 宇佐美代表:
もともとDX化の構想自体は経営統合する際から電通と協議していたのですが、これだけ時間がかかりました。というのもDX化を進める際に「既存のモデルを壊してしまうのではないか」という懸念や、心理的なハードルが存在するからです。
既存の業界を壊すのではなく、同じ目標に向かっていく仲間だということを伝え、コミュニケーションを重ねて信頼を積み上げることが大事だと思っています。

記者:
既存の業界とのコミュニケーションの難しさは、両者様が一番感じているところだと思います。レヴィアス様もコミュニケーションの難しさを感じているところはありますか。

レヴィアス 田中代表:
そうですね。一年半ほど前に弊社の取り組みを説明しても、ご理解をいただけないことはたくさんありました。ただ時間が流れることで、少しずつ皆様の反応が変化しています。なので、信念を持って継続していくしかないと思います。
直近ですとコロナウイルスの影響で、我々の取り組んでいる部分と近いところで大きな変化がありました。例えばオンライン株主総会や取締役会の議事録をクラウドに保存することなどを法務省が容認し、政府からはハンコ文化を見直していくという発表がありました。
アナログからデジタルに変わるときに、人も企業も大きく変化を求められ、それがハードルになります。今のやり方である程度うまくいっているので、それで十分だという考え方です。
しかし、今回のコロナウイルスを経験することで、Uberやキャッシュレス決済など世間的にDXが進んでいます。そこに企業として一歩踏み出すことでしか現状を打破することはできないと思っています。

今後の広告業界のDXの方向とは

記者:
ありがとうございます。CARTA HOLDINGS様はテレビ広告だけでなく、グループ企業様を通じて様々な広告業界のデジタル化に携わっておられると思います。これからの広告業界のDXはどのように進んでいくのでしょうか。

CARTA HOLDINGS 宇佐美代表:
最近はOOH(Out of home)広告と言われている街の看板のDXも進めています。ネット広告はもともとデジタル化が進んでいますが、それ以外のアナログな広告も変化が必要です。
弊社としてはあらゆる媒体に合わせたDXを推進することで、使いやすく、効果の検証がしやすいプラットフォームを提供することが重要だと思います。テレビだったらこれ、ネットだったらこれと分けて考えるのではなく、もっと統合的にマーケティングや広告のプロモーションのPDCAを回せるようにしていきたいです。

最後に一言:DXによって市場をさらに大きくしていく

記者:
ありがとうございます。最後に一言ずつこれからの抱負をお願いします。

CARTA HOLDINGS 宇佐美代表:
今後はテレビ広告という新しい市場に取り組む中で、市場を大きくすることが大事だと思っています。限られたパイをいかに切り分けていくのかという形になると、既存の領域と関係性がうまく作れないと思うので、テレビ広告のDXによってパイ自体を大きくしたいと思います。

レヴィアス 田中代表:
日本は少子高齢化も問題になっています。これから日本をどのように豊かにしていくのかを考えたときに一つ重要なのは、今まで投資に興味がなかった方が、自立して生活していくために投資を勉強することです。デジタル化を進めることで、これまでよりも便利になり、若い方が投資に関心を持つことで日本経済が発展する、そのような部分でお役に立てる企業になりたいと考えています。

記者:ありがとうございました。

記者まとめ

いかがだっただろうか。広告業界大手である電通と協力しながらテレビ広告のDXを進める株式会社CARTA HOLDINGSの新しい取り組みは、業界の形を大きく変化させていくだろう。レヴィアス株式会社も既存の金融業界をDX化し、より人々が便利になる社会を目指している。その先には、日本経済全体をより活性化したいという思いがあると感じた。DXを促進するには様々なハードルが存在するにも関わらず、力強く一歩を踏み出す両社の取り組みに今後とも注目したい。