しかし、この手法は社員に踏襲していない。労働集約色を強めてしまううえに、実行できる社員と実行できない社員に分かれるからだ。営業力の強化に向けては、個々人のバラツキを抑制して組織力を強化するために、エン・ジャパンなど外部機関の研修を導入し、さらに四半期ごとに小方氏が全社員と個人面談をして、目標設定や課題解決に臨んでいる。
同社の特徴が3つの事業のシナジーにあることは先に述べたが、小方氏が研修や面談によって志向しているのは、人と組織が強みになる企業である。成長を持続できる体質づくりを重要視しているのだ。
「個々のサービスだけを比較すると、サイバーエージェントさんやリクルートさんのサービスは時間をかければ真似できます。しかし、この2社の企業文化や組織力は簡単に真似できません。そこに2社の強みがあると思います。サービスは世の中に出した途端、すぐに真似されてしまうので、人や組織が強みになる企業をめざしたいと考えています」
一方、19年度の年間売上高100億円、営業利益6億円達成に向かう過程で、IPOについては慎重に判断するという。小方氏には、過去に勤務先でIPOをめざした経験が2度あるが、いずれも叶わなかった。得た教訓は「IPOを目標に掲げると、現状とのギャップから社員に無理を強いて会社全体を疲弊させかねない」。だから、いつでもIPOができる水準に達した時点で、改めて検討する方針を固めている。
経済ジャーナリスト
小野 貴史