安価なだけではない。上田氏は「業務のクオリティーを高く保っています」と自負するが、有資格者に限定した担当制でクオリティーを担保している。通常、決算書や税務申告書の作成は無資格者が担当するが、同社では公認会計士や税理士が直接作成しているのだ。人員は上田氏を含めて約20人で、大手監査法人出身者や上場企業の監査経験者など十数人の公認会計士・税理士を擁している。
だが、人件費のかかる有資格者を起用したうえで、相場をゆうに下回る報酬額を設定して相応の利益を確保できるのか。この疑問に対して、上田氏はクラウド活用による業務効率化を挙げる。それを可能にしたのが、特許出願中のクラウド会計ソフト「10book(テンブック)」である。
「EXCELの入出金記録をクラウド上にアップロードするだけで、決算書、試算表、総勘定元帳等が作成できます。また、この会計ソフトで肝となるEXCELの入出金記録は、日付、金額、取引の内容、摘要を入力するだけです。入力は通常の半分以下の項目数で済み、会計知識ゼロでも簡単に迅速に入力できます。しかも、このフォームは現金預金残高を随時確認できるので、事前にミスを発見しやすい構造になっています」
システム開発会社でなく会計事務所が開発したことも、「10book」の特徴だ。多くの会計ソフトは、会計ソフトを選ぶと同時に会計事務所も選ばなければならないが、このソフトは会計事務所が開発したので、すぐに会計事務所に直結できる。
経済ジャーナリスト
小野 貴史