このキャリアから、上田氏は会計監査だけでなく、金融全般と株式上場にも精通している。
クライアントの成長段階に応じたサービス提供体制も整備し、クライアントが年商5億円を超えたら、より専門性の高いサン共同会計事務所に引き継いでクライアントの個別事情に対応していき、株式上場や上場企業への売却といった展開にも対応している。
「ベンチャー企業を支援している当社も、設立5年目のベンチャー企業です。試行錯誤しながらサービスを開発してきました。クライアントの成長過程に合わせて、役に立つサービスを提供していきたいと考えています」(上田氏)
提供サービスは会計・金融関連業務に絞り込み、HR業務やマーケティングなどにまで手を広げない方針だという。“総合化”による経営資源の拡散を熟知しているのだ。会計監査経験に経営経験を積み重ねた上田氏は、冷徹に社業の推移を見据えている。
その趣旨を上田氏はこう説明する。
「メンバー一同がつねに真にクライアントのためになることだけを考え、アドバイスをし、手を動かす。クラアントにとっては時には耳障りなことを言うかもしれませんが、それがクライアントの発展のために改善が必要なことであれば素直にお伝えする。そんなプロフェッショナル集団でありたいと考えています」
クライアントに対して耳障りな発言をすれば、契約を解除されるかもしれない。そのリスクを懸念して、指摘すべきことを控えてしまう会計事務所も、けっして少なくない。上田氏の本音はどうなのか。
「耳障りな指摘を嫌がって契約を切るところもあるかもしれませんが、それでも構わないとスタッフには話しています。まだまだ力不足の面もありますが、弊社ではこの基本的な理念を忘れず、つねに組織全体で自己研鑽し、つねにより高いレベルのクライアントサービスをめざしつづけています」
シンアカウンティングサービスは是々非々の姿勢でクライアントに向き合う覚悟を固めている。
経済ジャーナリスト
小野 貴史