マインドの育成方法は多岐にわたっている。一例を挙げると、武長氏が講師となり、全社員を対象に経営理念についてワークを交えながら深く学ぶ「理念研修」、各店舗の成功事例や、営業での感動ストーリー、スタッフ同士への感謝の共有、社会人になり退職するアルバイトメンバーに向けての卒業式を行う「一家祭り」などがある。成果は、5つの評価基準(売上達成率、会員達成率、店舗MTG参加率、5S点、覆面調査得点)から各店の評価を行なって表彰する「感動店舗賞」などでフィードバックされている。
コストコントロールの指標はFLR(原画+人件費+家賃)比率である。こだわりもん一家(平均席数92席)は客単価3800円・平均月商817万円、屋台屋 博多劇場(同79席)は同2500円・738万円。この数年来、食材原価と人件費が上昇傾向にあるが、コストコントロールの基準としてFLR比率を70%以下と設定している。
おもてなしは訪日外国人観光客を吸収する有力なコンテンツになるが、同社はおもてなしを「コト消費」(武長氏)ととらえ、海外展開にも踏み出した。
15年3月にとんこつラーメンBar「GOLDEN PORK「(黄金の豚)」をホノルル市に出店。立地は「現地の方に支持される店」を志向して、ワイキキではなくローカル地区(サウスキングストリート)を選んだ。この店は、現地雑誌「ホノルルマガジン」主催のハレアイナアワード賞受賞や、現地新聞「ホノルル・アドバイザー」主催のイリマアワード賞受賞などの実績を築いている。
武長氏は、折に触れてDDホールディングス社長の松村氏から「強みを築いて、自分らしい経営をするように」と教えられてきた。上場すれば相談を受ける側にも立つが、創業期の外食経営者には、自身が松村氏に教えられたように歩んでほしいと望んでいる。
経済ジャーナリスト
小野 貴史