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寿司・和食の新しいビジネスモデルに挑戦水産仲卸や冠婚葬祭関連への進出も視野に / 注目ベンチャーインタビュー後編株式会社音羽
代表取締役社長 田舞登志徳

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音羽が取り組んでいる経営戦略のもう一つの柱が、寿司・和食の新しいビジネスモデルへのチャレンジ。

これまでも寿司店や和食店の新業態を意欲的に出店してきた。出前専門業態による寿司や会席料理、幕の内弁当などのケータリング事業を手がけてきたほか、タッチパネルで注文すると、寿司がレーンで運ばれてくる回転寿司の進化形「流れ鮨」では、関西トップのポジションを獲得している。2006年には、大阪府箕面市の国定公園「明治の森」に和風旅館「音羽山荘」も開設。「宿泊もでき、ブライダルにも利用できるという、新型の日本料理店を作ってみたかったんです」と、同社の田舞登志徳社長は説明する。そうしたチャレンジには、ほかにも狙いがある。

「寿司・和食のイメージをアップさせたいんですね。例えば、寿司・和食の料理人は、昔は志望者が多かったんですが、今はイタリアンシェフやパティシエなどの勢いに押されて、人気が低迷しています。寿司・和食はどうしても地味ですからね。若い人たちにはなかなか振り向いてもらえない。そこで、寿司や和食には、トレンドを取り入れた、スタイリッシュな華やかさも必要だと考えたんです」
田舞社長は今後、外食産業が勝ち残るためには、「地域に密着し、その商圏の生活の中に根づくこと」がカギだと見ている。

「冠婚葬祭やハレの日を考えてみてください。席で供されるのはアッパーゾーンの食事でしょう。寿司や高級な和食は適しているわけですね。『ハレの日と言えば寿司。近畿で寿司店と言えば音羽』といった具合に、ブランディングによって、そうした需要を確実に捕らえるようにしたいですね」

田舞登志徳-音羽-otoha_toshinori_tamai

経営基盤を固めるため、コア事業の強化に専念

「新しいことをしたいと私が言っても、経営会議でほかの役員や幹部からブレーキをかけられ、なかなか思うようには行きません」と、田舞社長は笑う。しかし、経営戦略の次のフェーズとしては、新規事業に打って出ることも視野に入れている。「経営の意義を見出せたら、海外に進出する可能性もありますね」。その際、有力な武器となると、田舞社長がにらんでいるのがM&Aだ。

「水産仲卸をM&Aで垂直統合して、食材の調達力を高めるというのも一つの手だと考えています。寿司店や和食店が質で差別化するなら、ネタの勝負になりますからね。それから、冠婚葬祭関連といった寿司店や和食店の周辺領域も、M&Aの有力候補になるでしょう。ただし、飲食業を水平統合する可能性は限定的でしょう。フレンチレストランといったほかの領域は対象外だし、寿司店や和食店のチェーン店も当社の経営規模では体力的に難しい。例えば、個人で経営していた寿司店が廃業した場合、それを継承するケースは考えられますが」

田舞社長は、「経営には遊び心が必要」というのが持論だ。「ビジネスライクな損得勘定ばかりでは、働いていてもつまらないでしょう。クリエイティブな発想も生まれませんよ」と言い切る。そうした田舞社長の姿勢は、音羽の社風にも現れているようだ。ひと言で表すなら、「夢のある寿司店」と言えようか。次にどんな新しい試みにチャレンジするのか、期待を抱かせるのが音羽という企業なのだろう。

インタビュアー

株式会社KSG
眞藤 健一