多業種に関わる“生きた経営学”を連夜にわたって学び、いわば実践と座学でポータブルスキルを身につけたのである。
起業したのは2006年7月、28歳のときだった。ある企業に北海道発のホットヨガスタジオの事業企画を持ち込んで、札幌市に「BELBE」オープンさせた。利用まで2週間待ちが発生し、電車で1時間をかけて通う客も現われるほど大ヒットした。早くも半年後には市内の中心街に2号店を出店したが、躓いてしまう。
社員教育が不十分なまま前川氏が2号店にかかりきりになったため、1号店で退職者が相次ぎ、残った社員も「死んだ魚のような目になって、意欲が低下していました」(前川氏)。業績にも反映し、半年も経たないうちに2店とも赤字に陥ってしまった。
社員が生き生きと働いていなければ店舗運営は成り立たない。そう判断した前川氏は、賃貸契約期間の途中だったが、違約金を覚悟して1店舗を閉め、社員教育に重点を置く方針を固めた。慧眼である。この判断は奏功し、成長を導く原動力になった。
06年にはライフクリエイトを設立して、ホットヨガスタジオ「Loive」(ロイブ)を立ち上げ、スキル教育や階層別教育だけでなくマインド教育に力を入れはじめる。ミッションに定めた「女性のココロとカラダに向きあう事業を通して、ふつうに感じていた人生がスペシャルな人生だと感じられる機会を提供する」の浸透や、自分の人生を豊かにする思考法などを教えるのだが、基本的に社外研修は行なわない。独自に作成したプログラムによって、前川氏がメインに講師を務めつづけてきた。
経済ジャーナリスト
小野 貴史