とはいえ、このプロジェクトが順調にいったわけではない。出所者をこれまで26人以上採用したが、なかには店を辞めてしまう者もいる。
「何度も心が折れそうになりましたが、出所者の受け入れは続けていくつもりです。私の母は、私が事業で成功するなど夢にも思わなかったそうです。子どものことをよくわかっているはずの母親ですら、そうなんです。逆に言えば、人間はそれだけの未知の可能性を持っている。生まれ変わることができると、私は信じているんです」
「いま店長の下に主任が60人くらいいるんですが、彼らを店長にしてあげるには、さらに60店舗くらい増やさないといけないので」と、中井社長は力強く語る。ただし、地方店は運営効率が低いので、「暖簾分け」の形で店長に譲渡したり、フランチャイズ契約にしたりして切り離し、出店エリアは大阪、東京、名古屋、京都、神戸の大都市圏に絞り込む考えだ。
同社の業態は現在、ターゲットに対応して、リーズナブルな①ベーシック、女性客がメーンの②エレガンス、高級路線の③ぷれじでんと、商業集積向けの④フードコートの四つに分かれている。②は、服ににおいがつかないように、店舗に鉄板で焼かない設備や強力な空調を導入するなど、きめ細かい工夫を凝らしている。③は、アワビや伊勢海老のステーキなどのメニューも揃える。客単価は約8000円だが、「同じようなメニューなら、ほかの鉄板焼き店より断然安い」と、中井社長は胸を張る。さらに、お好み焼や鉄板焼きをベースにした「古民家風居酒屋」の新業態開発も検討している。
「100年企業」を目標として、チャレンジと進化を続けていく千房ホールディングス。これからどんな変革を遂げていくのか、要注目だ。